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『「人の器」を測るとはどういうことか』をレゴシリアスプレイメソッドの文脈で読む(5)2.他者の話に耳を傾ける際に立てる仮説
この一連のNoteでは、オットー・ラスキー氏の『「人の器」を測るとはどういうことか』を読んで、レゴシリアスプレイメソッドの文脈に照らし合わせていく。
第2章は、発達段階の診断に関する内容となっている。
その診断の中核にあるのは「傾聴」である。
傾聴は、どの発達段階にあるのかをクライアントとの会話の中から見抜くために必要なスキルである。耳を傾けて理解しようとする先の焦点は発話内容ではなく、発話構造である。
発話構造を捉えようとする際には、各発達段階の特徴を理解しておくことと「反仮説」を使った検証をインタビューをしながら行わねばならない。ここでいう「反仮説」は、会話から最初に感じた発達段階の仮説から離れて、あえて別の発達段階にクライアントがいるのではないかと考え検証してみると言う行動である。統計学でいう背理法に重なる論証方法である。
また、検証のインタビューの際にはクライアントの思考の流れを止めないように質問を継いでいくことが求められる。思考の流れを中断することにつながる「なぜ」をできるだけ使わないようにするのがポイントであるとしている。
レゴシリアスプレイメソッドとの関連について
レゴシリアスプレイメソッドでは、モデルを作るとともにその人のモデルに流れるストーリーを聞く。そこでは発話内容に焦点が当てられる。基本的には、どの発達段階にあるかについて、発話構造には焦点を当てていない。
しかし、その人が何らかの気づきや心の成長をワークの中で成し遂げたいのであれば、発話構造へと焦点を当て、発達段階をあぶり出し、それを上げることにつながるような問いをモデルに絡めて投げることができる必要がある。
発達段階をあぶりだすときの手がかりになるのは主に「他者の捉え方」「価値観」「欲求」に関する表現であろう。それらがモデルの中にどう現れているかを見出すことになる。
例えば、発達段階2(手段・道具的段階)にいる参加者であれば、他者は自己の欲求を満たすための手段・道具であるというような意味で表現されることになるだろう。このとき「反仮説」も大事にするならば、そのモデルの中で、他者を自己イメージを形成するために欠かせない存在である(発達段階3の他者観)とか、自分の価値観を守る協力者や仲間である(発達段階4の他者観)と表現されていないかどうかも同時に判断するということになる。
それらがモデルに現れていない場合には、モデルに仮想の変化を与える「プレイ」をうまく促すことでそれを捉えることができるかもしれない。例えば、「その組織に新しい方針がリーダーから示されたらどうモデルは変化するか」ということや「モデルの中で同じ組織の中の他者はどこに存在するか」といった問いを投げることで、その人の「他者の捉え方」を引き出すということである。
発達段階を確認する問いやモデル表現における着目点について、ファシリテーターは使えるようになっておくと発話構造を掴んだ上で参加者の発話内容を理解できるようになる。それは、ワークショップの円滑なファシリテーションや気づきが生じる可能性、ロナルド・ハイフェッツのいう「適応が求められる難しい問題」の解決にも寄与するであろう。