入院中に読んだ一冊。 生きた人間は、「冷たく、そして熱い存在」。そういう人間の不完全さや多面性をこそ肯定するのが優れた文学と思う。 「命が与えられたからにはそれに応えて行きていかなくてはならない。」 この一文の意味がわかるようになった私自身、一生懸命生きて悩んで失敗した糧と思う。
責任という英単語は、レスポンシビリティという言葉で、レスポンスつまり応答することと責任が深く関わる世界観となっている。つまり、自然や神からの呼びかけに応答するのが人間の責任である、という一神教系の世界観を反映した言葉となっている。呼びかけを無視すると、報いがある。それが、罪と罰。
村上春樹が鋭く自覚した、中東情勢をスルーすることによって戦後日本の平和主義が「自分たちが巻き込まれたくないための偽善」に堕落してしまったという問題。それはその後、亀山郁夫『ドストエフスキー「悪霊」の衝撃』(光文社新書、2012.)によって深められたと、私は考えている。
村上春樹が鋭く自覚した、中東情勢をスルーすることによって戦後日本の平和主義が「自分たちが巻き込まれたくないための偽善」に堕落したという問題。これは、日本国内問題に関しても、本音と建前の乖離がひどくなる展開を生み、「世間における言葉の納得感を蝕んでしまう」(≒バベル化)と思われる。