中沢忠之 「文学+WEB版」の責任者です。 谷口一平さんから掲載記事に対し抗議がありました。そこでご指摘いただいた問題の経緯を媒体から説明し、あわせて謝罪をさせていただきます。 最初に小峰さんから「『情況』編集部は、いかなる意味で「卑劣」か?」をご寄稿いただきました。ヘイトの問題を扱っていますが、特定の人物を差別等しているわけではないと判断し、公開としました。その後、「トランスヘイターと目されている」に関して谷口さんから「根拠がない」(ゆえに「風説の流布」となってい
小峰ひずみ ・拙稿の「トランスヘイターと目されている」というレッテルに対して、私が当のレッテルを貼り付けた谷口一平氏から抗議があった。 まず、この抗議を全面的に受け入れる。 たしかに「トランスヘイターと目されている」という形容は言い過ぎであった。おそらく、谷口氏自身が述べているように(2024年4月4日 X上のポスト)、査読者とそれを読んだ私に限っては氏を「トランスヘイター」だとみなしているが、だからといって、主語を不明瞭にした状態で「トランスヘイターと目されている」
【評論】小峰ひずみ 【11月21日に一部削除したものを再投稿】 Ⅰ 攻撃と防衛 小峰ひずみという筆名の「ひずみ」の由来は何かとよく聞かれる。これは雑誌『噂の真相』の匿名エッセイ「撃」からとられたものだ。このエッセイの筆者は「鵠(くぐい)」と「歪(ひずみ)」である。私の筆名は後者を継承したものだ。「小峰くぐい」でもよかったのだが、読みにくい。だから、「ひずみ」で行こうと決めた……というのは嘘で、私は勘違いをしていて、エッセイの筆者は「歪」と「撃」だと思っていた。本来はエ
【評論】小峰ひずみ 【11月21日に一部削除・訂正したものを再投稿】 0 本稿の前提 本稿は『情況』編集部主催の討論会と『情況』の編集方針を批判した文章である。『情況』編集部は2024年夏号で「トランスヘイトの自由こそ基本的人権である」(佐藤悟志)などの寄稿文を掲載し物議を醸した。私は同号の編集方針(塩野谷恭輔編集長による序文)を批判した記事(「『情況』は国家か?」)を文学+に掲載した。その記事がキッカケとなり、塩野谷氏から討論会の参加を依頼され、登壇者を知らないまま
【書評】須藤輝彦『たまたま、この世界に生まれて』 評者:勝田悠紀 0. はじめに 須藤輝彦の『たまたま、この世界に生まれて』(注1)は、副題にある通り、「ミラン・クンデラと運命」を主題とした研究書である。クンデラは20世紀を代表するチェコの小説家、運命は、ダダダダーンのあの運命。 まずは本書の内容を簡単に紹介する。序章では、「運命」という言葉が持つ意味の広がり、この概念のクンデラ研究における位置付けなどが語られる。本論は、各章一作クンデラの作品を取り上げながら、運命に
文芸時評・11月 荒木優太 ゲームとは最適解があると信じる世界観のことである、と仮定義してみることから出発しよう。 たとえば「所詮は〇と一だけの単純な世界。ゲームである以上、最適解はきっとあるんだよ」とは李琴峰『東京奇俠伝』(すばる)の言葉。東京で派遣切りの憂き目にあった清猗(チンイー)は、大学時代の友人で現在はクーデター事件で揺れるミャンマーに住む采荔(ツァイリー)のFacebookアカウントが消失したと知り、七年ぶりに芷離(ジーリー)と再会することにする。三人は学生時代
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四年目となる文学+WEB版の方針 中沢忠之 『文学+』とは、六名の中高年が仕事との掛け持ちで運営する、文学研究や文芸批評を扱う同人誌である。読み方は「ブンガクプラス」。同人名は凡庸の会。2018年からはじめてなんとか3号まで出した。4号は現在営為編集中。ここは『文学+』のWEB版である。同人誌だと刊行までに時間がかかり、機動性に欠けるので、文学周辺の時事的な話題を取り上げるために立ち上げた。 逆襲というくらいなら、かつてイケてる時期があったかというと、もちろんそんなことはな