宮澤大和

作家、演出家。ぺぺぺの会メンバー。『信仰、未知と差異のデマゴーグ』(呆然戯曲賞自由部門)、『信号』(朝日新聞・あるきだす言葉たち掲載)、『No. 1 Pure Pedigree』(こりっち舞台芸術まつり!最終審査ノミネート)、『夢の旧作』(SAF vol.14優秀賞)など。

宮澤大和

作家、演出家。ぺぺぺの会メンバー。『信仰、未知と差異のデマゴーグ』(呆然戯曲賞自由部門)、『信号』(朝日新聞・あるきだす言葉たち掲載)、『No. 1 Pure Pedigree』(こりっち舞台芸術まつり!最終審査ノミネート)、『夢の旧作』(SAF vol.14優秀賞)など。

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  • 創作生活

    「創作」と「生活」をつなげることをコンセプトにしたマガジンです。週1回以上の記事更新。エッセー・小説・感想文・戯曲……多種多様なジャンルの文章が収録されています。マガジンを購読すると、2018年から現在までに、宮澤大和がnoteに投稿したほとんどすべての記事をお読みいただけます。

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  • 【ぺぺぺの会】『怒る人の気概』公演映像(期間限定…
  • 『No.1 Pure Pedigree』イメージ…
  • 【演劇】 ぺぺぺの会「夢の旧作」ダイジェスト…
  • ぺぺぺの会「 楽 園 迫 る 」イメージサウンド
  • 映像作品「断片をつむぐ」宮澤大和

最近の記事

response 02 - ハノーファーより

ハノーファーでは毎日ピアノを弾いて 過ごしていたんだとその人は言った ハノーファーがどんな場所で どんな歴史を持っていて どんな言葉で どんな人々が 喋っているのか わからないばかりかその街がどこの国に位置しているのかさえも わからなかった 「ピアノを弾いているときだけは  楽譜にすべてを委ねることができるんだよ  ピアノを弾いているときだけは  言葉もいらない 五線譜・楽譜——  それは純粋な記号  言葉もまた記号の一種だったが今日では  意味を持ちすぎてしまっている  

    • response - 死, イメージ : 夢想/空想の境界で

      物事を遠くから見ると、すべてがルーティンであり、この世界は循環している。季節は巡り、花は落ちて、実は朽ち果てて、種は鳥によって運ばれて彼の地でまた芽吹く。 この身がつかいものにならなくなったらどこへ往くのだろうと考えることがある。 夜、眠ろうとするときに、夢想と空想の迫間で、虚像と現像を往き来しながらその境界はやがて曖昧なものとなっていく。 眠りに落ちることは言わば「一瞬死ぬこと」であると思う。 朝になれば意識が戻ると思えるから眠ることはこわくない。でも、朝になっても

      • 原初風景

        慣れない場所だとよく眠れない。しようがないことだった。病室の窓から、間もなく朝陽が顔を出そうとしているのが見えた。空が紫色に染まるそのわずかなひと時は原初の風景を想起させる。 さらに、正確に言えば、原初の頃を生きていた私の遠い祖先もこの風景を見て安堵を覚えていたはずだと、なぜだか確信をもって言うことができた。 窓際のベッドに案内されてよかった。他の病人や病室を観察していると、足がわるかったり、自力での移動に不安がある入院患者は窓から遠くて、入り口に近いベッドに案内されてい

        • そんなあなたには『自省録』(マルクス・アウレーリウス)をおすすめしよう

          ついに頭上に土くれが投げかけられ、それで永遠に一巻の終わりだ。 そう言ってパスカルは人間の死を物語った。 自分の人生を想ってみる。たいした人生ではないのかもしれない。 かもしれない?……いや、間違いなく、たいした人生ではないだろう。 もっとも自分はたいした人生を送ることになるだろうという、根拠もクソもない自信のようなものがあった。今でもなおそれを捨てきれないでいる。他人様の役に立つことが、たいした人生を送るための一助になるのだというなら、いくらでも他人様の役に立つよう

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        • 創作生活
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        記事

          私小説とエッセイと、日記の違い

          『日本演劇思想史講義』を読んでいると、読まなくてはならない本がどんどん増えていく。 読みたい本がこんなにたくさんあって、一生を懸けても、読みきれるかどうかわからない。この状況を幸福と呼ぶべきだろうから、どんなに日常が多忙を極めたとて、本を読めるくらいの余暇は保持しておきたい。 優先度は低いけれども、三島由紀夫『仮面の告白』は読まないといけない。避けて通れない。同様の理由から『金閣寺』を読んだが、自分はあまり三島を好まない。前々からそう想っていた。それはくつがえらない。

          私小説とエッセイと、日記の違い

          醒める

          奇妙な夢をみて、目覚めると寝床から見える日常の風景(生活空間)がいつもとは異なるように感じられる。私の生活に必要で、部屋に揃えられた物品の数々が息を潜めて、次の瞬間を待っているみたいだった。いったい彼らがどんな瞬間を待ち望んでいるのかまでは、私には知れなかった。ただ息を呑んで、一つの瞬間が終わり、次の瞬間へと移行していくのを、待つことしかできなかった。意識は臆して、肉体は緊張していた。

          災害時の鉄則

          地面が傾いた。揺れはなかった。 驚いて家から飛び出そうとする。私は実家に居た。 おそらく年末年始だった。便所で用を足し終えたところだった、私はもっとも玄関に近いところに位置していたので、家族に避難を呼び掛けて一目散に靴を履いて外へ出た。 家族がちゃんと避難できるかどうか、心配ではあったが、とりあえず家からは出ないといけない。平坦だった地面がどんどん斜面になっていく、それにつれて家がみしみしと音を立てていたから。 ひとりで一目散に家を飛び出してしまったことに罪悪感がない

          災害時の鉄則

          演劇のラグジュアリー

          10月6日(日)7:00 演劇のチケットを買った。7000円。 演劇のチケットは確かに高いのだが、それだけのラグジュアリーがあるから高くても当然なのだ(と、いち観客として思う)、むしろ安いくらいだ。 『「またまた」やって生まれる「たまたま」』という演目を東京芸術劇場で発表させていただいたときに、アフタートークで詩人・伊藤比呂美さんと対談させてもらったが、そのときに、「眼の前にほんものの人間がいて、それが肉声で喋りだし、聞く人の鼓膜を直接響かせるようなコンテンツ(つま

          演劇のラグジュアリー

          【感想文とその特徴】チェルフィッチュ/岡田利規 × 藤倉大 with アンサンブル・ノマド 『リビングルームのメタモルフォーシス』(東京芸術劇場・2024年)【前編】

          ——まずは、なによりも先に、メタモルフォーシスという言葉の意味を、確認しておくべきでしょう。  ラテン語由来の「メタモルフォーシス」は、ギリシャ語由来の「メタモルフォーゼ」と同じ概念を表します。 「メタモルフォーゼ」(Metamorphosis)は、ギリシャ語の「meta-」(変わる)と「morphē」(形)から来ており、直訳すると「形の変化」を意味します。  一般的には、変態や変容を指し、特に生物学の文脈では、昆虫や動物が成長過程で劇的に形態を変えること(例:幼虫が蝶

          【感想文とその特徴】チェルフィッチュ/岡田利規 × 藤倉大 with アンサンブル・ノマド 『リビングルームのメタモルフォーシス』(東京芸術劇場・2024年)【前編】

          リモートやデジタル化が進むなかで, 失われつつある「リアルな体験(リスクを伴う)」の価値を再認識し, どのようにそれを取り戻していくか.

          自己表現と他者からの視線の狭間で揺れ動く心情 下北沢にはよく遊びに行っていました。古着を買ったり、演劇を観たり。 けれども代田のほうへ足をのばしてみたことはありませんでした。しばらく歩くと大きなやなぎの木が植えてあった。風にそよぐその姿が印象的で、写真を1枚撮った。 写真を撮ることは好き。だけれども「写真を撮っている自分の姿」はなぜだか気恥ずかしい。そのため、人前で写真を撮れないでいる。ほんとうは撮りたいのに。 自分は忘れっぽい。だから覚えておくためには記録にのこしてお

          リモートやデジタル化が進むなかで, 失われつつある「リアルな体験(リスクを伴う)」の価値を再認識し, どのようにそれを取り戻していくか.

          ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展 《社会彫刻》 行動を通して社会を変革する

           エントランスをくぐると、ハットをかぶった人間がこちらに向かって歩いてくる。  セピア調の写真が飾られてある。写真は等身大よりも大きいように見受けられるが、どうだろう。もしかすると、等身大であるかもしれない。写真のなかの人物はずんずんとこちらに向かって歩いてくる。ブーツを履いている。それがズムズムと音を立てる。  しかし、ふしぎと威圧感はない。  写真に映る人間の眼差しに、深い憂いのようなものがあるからだろう。  これまで歩んできた道程にも、これから歩もうとする道程に

          ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展 《社会彫刻》 行動を通して社会を変革する

          Forbesを読むことに意味と信頼性はあるだろうか

          自分の好きなことで商売を始めると、その商売はうまくいきづらいので、きらいなものを売りましょう と提唱しているのは藤田田氏です。氏は『ユダヤの商法』でそう著しています。 その理由は、自分の好きなものとなるとついついその魅力に溺れてしまい、これでは商売にはなりません。が、きらいなものとなるとどうすれば売れるのかを真剣に考えることができるからだといいます。 確かに、藤田氏が言っていることは、自分の経験に照らし合わせてみると正しいように思えてきます。

          Forbesを読むことに意味と信頼性はあるだろうか

          デューク・エリントンの音楽を聴きながら何をしていたんだろう?

          この街に住むことを決めたのは2ヶ月前のことだった。 ぼくはある用事で呼び立てられて、机を挟んで2人の人間と向かいあった。 あれこれ質問攻めにされ、その質問のひとつひとつに対して真摯に回答していった。 どれだけ真摯に答えてみても、僕から見て左に座る方の人の表情は変わらない。変わらないというかずっと目表情のままだった。 右に座る人は対照的でずっとにこやかにしているのだけど、その笑顔が心からのものでないことにはちゃんと気づけていた。 ぼくが話し終わるたびに相槌を打ってくれるの

          デューク・エリントンの音楽を聴きながら何をしていたんだろう?

          あらゆる芸術の鑑賞方法(それを踏まえたうえでの創作の方法)

          能動的/受動的な鑑賞 音楽を聴くというのはひじょうに集中力を要する行為です。 私たちはつい音楽を「ながら」で聴いてしまいがちですが、そのような聴きかたでは音楽における表面的なものしか感受することができません。 ちなみに、私は楽譜がよめるわけでもないし、楽器をひいたり、唄だって別段じょうずというわけではありません。 カラオケはあんまり得意じゃなくて、できることなら避けて通りたい道だと思っていますが、たまに飲み会のあとで行くカラオケは楽しかったりすることもあります。

          ¥200

          あらゆる芸術の鑑賞方法(それを踏まえたうえでの創作の方法)

          ¥200

          情報自体の価値はますます薄弱なものになっていく, 今, 大切にしないといけないことは情報化できない経験

           まだ具体的なプロジェクト名を明かしていいのかどうか、わかりかねるために、それら情報をうまく匿したうえで、自分の活動についてを記していく。ある人にとってはそれは難しい所為であるのかもしれないが、ぼくにとってはわくわくする。  なぜなら、ある物事を匿しながら書くことは文学の根源であるからだ。

          情報自体の価値はますます薄弱なものになっていく, 今, 大切にしないといけないことは情報化できない経験

          近頃の映画鑑賞

          映画『ダンケルク』を観終えたあと、『生きる』を観始めました。

          近頃の映画鑑賞