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#エッセイ

わからないけど、そばにいる

わからないけど、そばにいる

「どうせわからないんだから」

「私のことなんてわからないでしよ」

「私のつらさなんて誰にもわからない」

目の前の少女は憤りをあらわにして

持っていた水筒を強く床に投げつける。

「あいつムカつくんだよ」

「みんなムカつく!」

私はただただ

「うん、わかったから」

「聞いてるよ、ちゃんと聞いてる」

と言って彼女を強引に抱きしめた。振り下ろした手が私の肩や背中にどんと小さな衝撃を与え

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先生になりたい人が減っている世の中へ。

先生になりたい人が減っている世の中へ。

先生になりたい人って
こんな時代にいるのだろうか?

と、現職の教師である私が言うのもアレだが、
結構本気でそう思う。

先生だってバレると
150%「うわー、大変!」って言われる。

「先生やってる人ってほんと凄いと思う!」
「モンペってほんとにいるの?」
ってコメント、多分50回は聞いてる。

いや、私なんぞが出来てるから
先生って何も凄くないんだけど。
いや、勿論凄い先生も山ほどいるんだけど

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うっかりスマホを忘れた1日が、私に教えてくれた大切なこと。

うっかりスマホを忘れた1日が、私に教えてくれた大切なこと。

息子の小学校の体験入学、2日目のこと。

その小学校は、家から自転車で30分のところにある。9時から3時の体験入学なので、その日は仕事をお休みしていた。

息子を小学校まで送る。
その小学校の最寄り駅から電車に乗る。
1ヶ月に1回通っている整体に行く。
カフェでのんびり。
息子を迎えに行く。

そんな予定を立てていた。

息子を無事時間通り小学校まで送ると、肩の力がスーッと抜けていくのを感じた。慣

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六花亭について語りたいのです ⑧ひとまず終了します

六花亭について語りたいのです ⑧ひとまず終了します

六花亭のお菓子が大好きです。

全国いや全世界に数ある美味しいお菓子。その中でも、六花亭は私の中では特別です。坂本直行さんが描く逞しくも素朴で美しい素敵なお花の花柄包装紙、文学的だったり面白いお菓子の名前、豊富な種類、良心的なお値段、そして、とにかく美味しい。全てが私の愛するところです。

北海道民ではないので、頻繁に買うことはできなし、実際の店舗に行ったことも数えるほどしかないし、喫茶室なんて夢

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人の役に立ちたい。その為に必要なことは、何もしないことだった…。

人の役に立ちたい。その為に必要なことは、何もしないことだった…。

私たちの意識できる世界
顕在意識の世界は
ほんの数パーセントに過ぎず、
ほとんどが無意識の世界。
そして
その無意識の世界こそが
その人の真実や可能性に
つながっていると
言われています。

さて、
このような心や
魂の世界
宇宙の法則について
何も知らなかった頃。

私はいつも
周りに振り回されるような
人生ばかり送ってきました。

人の役に立ちたい
そう思って行動すればするほど
どんどん
苦し

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きみが家族じゃなかったらよかった(姉のはなむけ日記/第8話)

きみが家族じゃなかったらよかった(姉のはなむけ日記/第8話)

送迎車のためならエンヤコラと大分県別府市の車屋さんまで行ったら、なんと、ほぼ新車のセレナと出会えたのだった!

車屋の馬〆さんから、くわしい仕様や納期の説明を受けていると。

電話が鳴った。

グループホームの責任者、中谷のとっつぁんからだ。ちょうどよかった。セレナを入手できたって言おう。喜ぶぞォ。

「もしもし、お姉さんですか」

「はーい!ちょっと聞いてくださいよ、中谷さん。ありましたよ!車!

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ボケ続ける世界で生きてゆく(姉のはなむけ日記/第10話)

ボケ続ける世界で生きてゆく(姉のはなむけ日記/第10話)

課題がポンポコと出てくる新しいグループホームに、弟を送り出してよいものか。

どんだけ悩んだって、朝はやってくるのである。

別府の朝だ。

ところで、別府の夜に巻き戻すと、こんな感じだった。

日本中のキッズたちを別府へと駆り立てる!夢の楽園!

杉乃井ホテルだ!

その設備のワンダーランド具合からそこそこお値段が張るのであるが、キナリ★マガジンの購読料をブッ込ませてもらった。やっててよかったキ

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【岸辺で温かい珈琲を淹れて、静かに待っているから】

【岸辺で温かい珈琲を淹れて、静かに待っているから】

江國香織の短編小説に、こんな一節がある。

It's not safe or suitable to swim.

ふいに、いつかアメリカの田舎町を旅行していて見た、川べりの看板を思いだした。遊泳禁止の看板だろうが、正確には、それは禁止ではない。
泳ぐのに、安全でも適切でもありません。
私たちみんなの人生に、立てておいてほしい看板ではないか。

『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』
江國香織、

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サザエさんの息子

サザエさんの息子

「サイフを忘れて愉快な…」ことなんて、しょっちゅうだった。

ボクの母ちゃんは、

ちらし寿司を作って桶ごと冷ましていたら、
玄関でピンポンと鳴って「はーい」と足をつっこんだ。

テレビの視聴者プレゼントに応募しようと、
スーパーのチラシの裏に大事に応募先をメモっても、
必ずどこかへ失くした。

家に来客があったとき、
うっかり犬のご飯を作る鍋でお茶を沸かした。

あわてんぼで、おっちょこちょいだ

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戦いすんで、豆散らばる

戦いすんで、豆散らばる

大学時代を過ごした京都では、下宿近くの吉田神社の追儺式が盛大で、節分の屋台に年越しそばが出ていた。
立春が年始に、節分が大晦日にあたるからだ。

年の始めはこの他、毎年大きく日取りが前後する旧正月(今年は2/1)、新暦の元日(1/1)といくつもあってややこしい。
1/1にも2/1にも新年の計を立て忘れた人は今日が最後のチャンス。

節分に、巻き寿司と豆まきは外せない。

節分に巻き寿司を食べる風習

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波は止められないけれど、小さく穏やかにすることはできる。

波は止められないけれど、小さく穏やかにすることはできる。

 昨日まで心配していたことは、おおよそ光が見えてきた。いつだって何かしらのトラブルは付き物だけれど、どうにかなる。という気持ちでいる。これまでだって、どうにかなってきたから、いまがある。

 最近、「ヘルプシーキング」という言葉を知った。かんたんに言うと「周囲に助けを求めるスキル」のことらしい。私もそうだが、困っているときに、素直に助けを求めるのは意外と難しい。普段から意識していないと、本当に困っ

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あのおじいちゃんだからめちゃくちゃでも許されたのだ

あのおじいちゃんだからめちゃくちゃでも許されたのだ

――変わった玉子サンドがあるらしいから、行かない?

変わったゆうて所詮、ゆで玉子とマヨネーズとパンやろ?
そんなん行かへん行かへん!

――ゆで玉子ではないらしいよ、厚焼きのオムレツだって。

ん? 行く行く! さっきから行くゆうてたやん! 早よ行こ!

レストラン〈コロナ〉かつて京都・西木屋町四条下ルに〈コロナ〉というレストランがあった。
知る人ぞ知るの人気店だった。

西木屋町は路地といって

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道草って人生を豊かにする魔法だと思う

道草が好きだった。
学校からの帰り道、まっすぐに家に帰れたことがない。
それだけ我が田舎の通学路は魅力的なもので溢れていた。

道草は今の私の妄想癖を作り出した代わりに、自然の営みの美しさや摂理を教えてくれた。

そして
道草は人生には必要不可欠なものだと思っている。
決まっている慣れた道を行く安心感より、よくわからない道を行くわくわくは人生を豊かにしてくれるのだ。

春は土筆を見つけては夢中にな

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子育てで大切なこと、それは至ってシンプル~静かな環境がもたらすもの

子育てで大切なこと、それは至ってシンプル~静かな環境がもたらすもの

先日

『忘れられない思い出
 ~不安だった私を励め支えてくれたもの』

と言う記事を投稿しました。

この記事の中で、
新しい先生が見つかるまで
園のお手伝いを
することになった
というお話をしましたが、
結局、その後
新しい先生は見つからず、
私は、卒園まで 
その子たちのクラスを
サポートすることに
なりました。

そのクラスは
とにかく元気で明るくて、
毎日がまるで
お祭り

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