戦いすんで、豆散らばる
大学時代を過ごした京都では、下宿近くの吉田神社の追儺式が盛大で、節分の屋台に年越しそばが出ていた。
立春が年始に、節分が大晦日にあたるからだ。
年の始めはこの他、毎年大きく日取りが前後する旧正月(今年は2/1)、新暦の元日(1/1)といくつもあってややこしい。
1/1にも2/1にも新年の計を立て忘れた人は今日が最後のチャンス。
節分に、巻き寿司と豆まきは外せない。
節分に巻き寿司を食べる風習は、戦後、大阪の海苔問屋と鮨組合がPR目的で作り上げたという説がよく囁かれる。
しかし戦前の「巻寿司と福の神 節分の日に丸かぶり」と書いたチラシが現存するし、江戸時代にはもうあったという説さえあって真相は闇。
就職で東京に住み始めた30年前、周囲でこの風習を知る人はいなかった。
そもそも関西弁の「かぶる」が「かじる」の意味であることが伝わらないから、丸かぶり寿司といっても頭にかぶるのかと笑われたり。
まぁ由来が何であれ、幸運を呼べるならやりたいし、そもそもこの日を逃したら巻き寿司を食べる機会ってそうそうないし、で毎年やっている。
いざ――
七福神になぞらえて具は七つらしいが、今晩は九つの豪華版。
巻き簀が百均のプラ製なのがいただけないが。
毎年米を載せすぎて失敗するので、今年は気持ち少なめ。
えいやっと巻いたら海苔がギリギリ、具が七つならうまくいった?
それでもなんとか形にはなった。
もうこれで今年の無病息災は間違いないと言える。
続いて豆まき大会。
いつもは買ってきた豆に鬼の面がついてくるが、今年はなぜか豆だけ。
ならば、とかみさんがおもむろに段ボールを解体し、マッキーを握る。
さらさらっと鬼を描いていく。
おっぱい、要る?
ものの3分ほどで完成。
ワキ毛は生やすし、膝には小僧がいるし、足の爪は伸びすぎてる。
目の下の赤線はいったい何だ? 部族の酋長か? 単なる酔っ払いか?
ちなみに頭と腹はくり抜かれ、袋が装着されていた。
椅子に立てかけて使うらしい。
頭に入れたら10点、腹に入れたら1点なのだそうだ。
2mほど離れたところに座り、家族3人の対抗戦。
それぞれ弾50発、もとい、豆50粒ほどが配られ、せぇの…はじめっ!
鬼はぁ外っ、の声は最初の1回だけ、あとは黙々と頭のポケットを狙う。
お父さん、鬼は外って言ってない! と息子からクレームが入る。
それを言わないのがハイスコアの秘訣! と手を止めず答える。
弾が尽き、いや、豆が尽き、ゲームセット。
かみさん12点、息子1点、僕は61点で圧倒的な勝利を収めた!
バスケ部で過ごした息子の中学3年間は何だったのか。
戦いすんで、豆散らばる。
(2022/2/4記)