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ナースのよもやまばなし

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ナースだからといって、みな天使のようで、元気ハツラツなわけではない。よこしまなことを考える私のようなナースもいる。そんなはなし。
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記事一覧

優しさの湿布

優しさの湿布

体調不良や不眠、神経をすり減らす業務に、気がつけばただただその日をやり過ごす毎日で、そしてまた眠れず疲弊して…の負のスパイラルが続いている。

昨日も予約枠の倍近い患者で全ての時間がギッチギチ、目の前の仕事を片付けることに精一杯になっていたところに、受付職員から「受診患者さんご自身のことじゃないみたいんですけど…看護師さんに聞きたいことがあるみたいで。ちょっとお願いしてもいいですか?」と声がかかっ

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心に余裕を、そして平常心を。

心に余裕を、そして平常心を。

ポツン。
可哀想だなぁと思った。

ポロリと落としてしまった人も、ポツンと取り残されてしまったこの物体も。

今朝、地下鉄の座席にポツンといたのはワイヤレスイヤホン、のケース。
中が入っているかどうかはわからない。
いっそのこと、中身のイヤホンが入っていたほうがいいのにな、と思った。

でもきっと、イヤホンは主人の左右の耳に嵌まり込んだまま、ケースだけがカバンかポケットの隙間からポロリとこぼれ落ち

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涙と刺しコブは優しさの証

涙と刺しコブは優しさの証

ここの血管はかてぇよ。オレ昔自分でしょっちゅう針刺してたからよぉ、わかんだよ。なんの注射かは言えねぇけど。へへ。こっちの方が刺しやすいかもな。ま、どこでもいいから何回でも刺せ刺せ、気にすんな。
看護師一ヶ月目の私に腕を差し出してくれた長袖長ズボン系総入墨のおじさん。

入院期間中そりゃもう何回も刺させてもらった。
何回も失敗したし、1回はおじさんに刺した後の針を片付ける前に自分に刺してしまい数カ月

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記憶

記憶

私には、ここに来るまでの記憶がない。
ここに来てからの記憶、と言っても呼気弁と吸気弁を閉じたり開いたりしながら人間の体の中に空気や酸素を送ったり吐き出させたりする、ただそれだけの記憶の反復なのだけれど。
気がついたらこのだだっ広い部屋にいて、私とホースで繋がれた身じろぎもせずに横たわる人を見た…と言っても私に目はないはずだから「認識した」と言ったほうがよさそうだけど…そんなことはこの際どうでもよく

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咳で腹筋を鍛え、カロリーを消費する

咳で腹筋を鍛え、カロリーを消費する

ついに、今流行のアレになりまして。

元々風邪やらインフル後には必ず咳喘息を併発し、咳でワンシーズンに肋骨を2本折ったこともあるワタクシ。
咳をした瞬間に、ゴリッとね。
外出先で、ゴリッと体内に響いたんですよ。

あのときは「あ、今折れた」ってわかりましたからね。

なので、お守りに持っていた吸入薬と咳止めを駆使し、今回は我が肋骨を死守したいです🦴

筋トレを怠っていたのがたたり、ここ二日間の咳

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暑い日が続いていますね。ここいらで一話、怪談話なんていかがですか?

暑い日が続いていますね。ここいらで一話、怪談話なんていかがですか?

【ナースの怪談話】
新卒で高度救命救急センターに配属され約4ヶ月が経過した8月末のことだったと記憶している。

看護師1年目として夜勤をするようになって間もない、暗く静かな病院の雰囲気に飲み込まれてしまいそうな夜だった。

当時は3交代勤務。
準夜勤の私は、夜中0時から深夜勤の看護師へ申し送りをすることになっていた。

新人の私が夜勤で担当していたのは重症の患者のいるICUや、救急車が出入りする初

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人様の、お父様の、顔の、毛穴の、角栓の、はなし

人様の、お父様の、顔の、毛穴の、角栓の、はなし

【ナースのはなし】

入浴できない場合に行われることの多い清拭は、年齢も性別も意識のあるなしにも関係なく、誰にでも爽快感を感じてもらえる看護技術の一つだと思っている。

ベースン(洗面器)に張ったお湯が、体を拭いたタオルをすすぐ度に濁り、垢が浮いていくのと反比例するかのように、患者の皮膚は明るく、柔らかくなり、温感を取り戻していく。
人が気持ちよさそうにしてくれるのは、看護師としてとても気持ちがい

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思い出だけを胸に DIE WITH ZERO〈ゼロで死ね 〉

思い出だけを胸に DIE WITH ZERO〈ゼロで死ね 〉

【読書記録】
昨年の今頃、Instagramなどでこの本を見かけた方も多いのではないかと思う。

自己啓発系統の本はほとんど読まないし、DIE WITH ZERO JP様から贈呈のお話を頂いたときは半信半疑…というか完全に怪しんで断る気満々であった。(ごめんなさい①)

夫に「なんかこの本くれるみたいなんだけど」と話すと「あぁ、これね。俺も読んでかなり影響を受けた本。面白いから一回読んでみたら?」

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黒い塊と赤いバンダナ

黒い塊と赤いバンダナ

【ナースのはなし】
その日、意識を失った状態で搬送されてきた60代の男性。

何日も前から倒れていたのか、糞尿にまみれ、救命センターの初療室は一気にむせ返るような臭気で充満した。

救急隊からの申し送りを医師と一緒に聞く。

一人暮らしの男性。

既往歴不明。

出勤せず、連絡が取れないことを不審に思い訪問した同僚により発見。

ふむふむ。

様々な可能性を考え、その後の検査や治療計画を考える。

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王家の鈴木

王家の鈴木

【ナースのはなし】
あるあるなのかもしれないが、病院というところはまぁ、その筋の方によく出会う。

しかも、腕やら裸体やらをよく目にするせいで、いつの間にやら刺青というものにも慣れっこになってしまった。

これは、救急で勤務していたときの話。

心筋梗塞で搬送された田中さん(仮名)、60代男性。

私のおぼろげな記憶では、搬入時に意識はなく、すぐに挿管(人工呼吸のため喉の管をいれること)され、カテ

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※ お食事中には決して読まないでください ※

※ お食事中には決して読まないでください ※

【ナースのはなし】

「信じられない、どんな指使いをしたら一度にそんなに沢山取れるの。」

20歳以上年上の先輩が、私の中指を見ながら驚愕の表情を浮かべて言った。

私は子供の頃から手先が器用だった。

米粒…まではいかなくても、小豆くらいの折り鶴を折ったり、編み物をしたり。

それがこんなところでも役立つなんて。

摘便が必要だと聞けば──いや、むしろ聞かなくても、そのニオイ──雰囲気のことだ─

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救命救急センターで働く小さな生き物がいる事、ご存知ですか?

救命救急センターで働く小さな生き物がいる事、ご存知ですか?

【ナースのはなし】

新卒で初めて配属されたのが高度救命救急センターだった。

面接時に私自身が希望した故の配属だったが、まさか一年目から行くことになるとは。

見るものすべてが不思議で、残酷で、絶望的で、でも同じくらい希望を感じる場所だった。

そこで経験した様々な出来事は、私の胸にこの先もずっと残るだろう。

その中から一つ、小さな命の話をしたい。

救命センターには、外科系、内科系疾患問わず

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薬物乱用ナースの末路は

薬物乱用ナースの末路は

【ナースのはなし】
来週40になるんです、私。

ありがとうございます。
お祝いはまた改めてお聞かせ願いまして…とりあえず話を先に進めます。

このお年頃になると、健康の話題、というか悩みが絶えませんよね。ほんとに。

先日は左膝を窓サッシの出っ張った部分に強打して未だに痛いですし、先週は自転車に衝突され、右大腿に青あざを作ったせいで、両足が痛くって、しゃがむ度の『アイタタタタタ…』が口癖になって

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