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書評

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#人間

【読書記録】『彼女は頭が悪いから』

【読書記録】『彼女は頭が悪いから』

『彼女は頭が悪いから』
姫野カオルコ著

東大の男子5人組が、ひとりの女子大生を全裸にして、平手で叩いたり、蹴ったり、肛門に割箸を刺してドライヤーで性器に熱風を浴びせたりした。でも、レイプはしていない。

判決後も、加害者は形式だけ反省したことにして、自分たちが(彼らの親も含めて)やったことに対して全く悪いと思っていないことが酷く現実的な話だと思わされた。

物語の主題は何か?

論点が沢山あって

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【読書記録】『世界から猫が消えたなら』

【読書記録】『世界から猫が消えたなら』

『世界から猫が消えたなら』
川村元気著

30歳の郵便配達員である主人公(僕)が、末期癌の告知を受けた後に現れる悪魔との取引を通じて、生命や愛の本質を探求する物語。この作品は、死というテーマを扱いながらも、独自の視点で生きる意味や人間関係の大切さを考えさせられる。

キーワードを挙げてみる。

①電話
1. 人間同士の物理的距離を超えてつながる手段。電話を通じて、ひとは他者の存在を確認し、その声を

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【読書記録】『寿』(『ブラック・ティー』より)

【読書記録】『寿』(『ブラック・ティー』より)

『寿』(『ブラック・ティー』より)
山本文緒著

主人公(私)は、最低な尻軽女なのだけど、今日、結婚する。
相手は東大卒で製薬会社のエリート研究員。

幸せの絶頂の披露宴会場に元カレが来ている。しかも、呼んだ覚えはない。私は、元カレと婚約していた。元カレが、結婚資金を貯めている間に、お見合いをして、東大卒との結婚にこぎつけたのだった。

「寿」
1. 寿は、単に生きることだけでなく、幸福感や充実し

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【読書ノート】『パアテル・セルギウス』

【読書ノート】『パアテル・セルギウス』

『パアテル・セルギウス』
トルストイ著

トルストイの短編小説で、森鴎外が訳したもの。

ステパン侯爵は、将来を嘱望されるイケメンの仕官で、努力家として常にトップを目指していた。しかし、ある事件をきっかけに世捨て人となり、パアテル・ゼルギウス(ゼルギウス神父)として出家する。出家後も賞賛を受けるが、その度に欲望に悩まされ、山に篭って修行を始める。

ある日、美しい女性が彼を誘惑し、ゼルギウスは誘惑

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【読書ノート】『ボボーク』(『可笑しな人間の夢』より)

【読書ノート】『ボボーク』(『可笑しな人間の夢』より)

『ボボーク』(『可笑しな人間の夢』より)
ドストエフスキー著

ドストエフスキーの短編小説。
狂人扱いされている作家が、ある日、親戚の葬式に出席する。
併設されているお墓で横になっていると、埋葬されている人々の会話が聞こえてくる。

キーワードを挙げてみる。

ボボーク(豆)
1. 生命の循環や成長の象徴とされる。この観点から、豆は潜在能力や可能性を表し、個人の自己成長や変化の過程を象徴する。

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【読書ノート】「純真なエレンディラと非情な祖母の信じ難くも悲惨な物語』

【読書ノート】「純真なエレンディラと非情な祖母の信じ難くも悲惨な物語』

「純真なエレンディラと非情な祖母の信じ難くも悲惨な物語』
ガルシア・マルケス著

大きな屋敷に、14歳のエレンディラと、老婆(おばあちゃん)が、住んでいた。おばあちゃんは、とにかく、エレンディラをこき使う。そんなある日、お屋敷で火事が起きて、屋敷は、なくなってしまう。すると、おばあちゃんは、火事の損害を賠償させるために、エレンデイラに売春させる。純真なエレンデイラは、ひたすら、非情なおばあちゃんに

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【読書ノート】『星の隨に』(『夜に星を放つ』より)

【読書ノート】『星の隨に』(『夜に星を放つ』より)

『星の隨に』(『夜に星を放つ』より)
窪美澄著

主人公(僕)は、小学4年生。中学受験のために塾に通う。
弟・海が、生まれて、僕は楽しい気持ちでいた。実は2年前から僕には、新しい母親・渚がいる。本当の母親は離婚してしまったため、離れて暮らしている。

キーワードを挙げてみる。
①ベガ
希望、純粋さを象徴する。また、人間の探究心や知識欲を喚起する象徴としても捉えられる。

②デネブ
高貴さや輝き、力

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【読書ノート】『大きな星の時間』

【読書ノート】『大きな星の時間』

『大きな星の時間』(『生命式』より)
村田沙耶香著

パパに連れられて女の子は遠い国にやって来た。そこでは、誰も眠れない。そこでは、昼の時間は眩しいから部屋で過ごして、星が見える時間に人々は外に出て活動するのだという。女の子は急に寝たくなったのだけど、眠ることが出来なくて嘆く。

よくわからない世界観。

何を言いたいのか考えてみた。

眠らないことにはどんな意味があるのか?
時間の制約を超えるこ

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【読書ノート】『護られなかった者たちへ』

【読書ノート】『護られなかった者たちへ』

『護られなかった者たちへ』

中山七里著

東日本大震災の後、家族と離れ離れになったカンちゃんは、遠島けいのもとで、生活していた。そこに、同じく身寄りのない利根 勝久が一時、合流した。その後、利根は出稼ぎに出ていき、数年後、遠島けいを訪ねる。

遠島けいは、生活保護を受給できず、餓死してしまった。そして、利根 勝久は、福祉保健事務所の課長・三雲忠勝と城之内猛留を恨んでいた。

その三雲忠勝と城之内

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【読書ノート】『ある男』

【読書ノート】『ある男』

『ある男』
平野啓一郎著

故郷に戻ったシングルマザーの里枝が、林業をやっている谷口大祐と再婚する。新たに娘も生まれて平和な日々を送っていたある日大祐が事故で亡くなった。大祐の兄がお焼香に現れて、遺影の男は、谷口大祐ではなく、謎の男“X”として、物語が始まる。

「X」という正体不明の男は、複数の名前を持ち、戸籍交換を繰り返し他人に成り代わって生きてきた。彼は父の犯罪により「小林」姓を捨て、母側の

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【読書ノート】『人間とは何か』

【読書ノート】『人間とは何か』

『人間とは何か』
マーク・トウェイン著

1835年にハレー彗星が、地球に接近した直後に生まれ、1910年のハレー彗星接近の翌日に死ぬ。
「自分はハレー彗星と一緒に地球にやってきたので、ハレー彗星と一緒に去っていく」と言いふらしたのだけど、本当に、そうなったようだ。

亡くなる直前に書かれた書物で、自己啓発的な内容。

人間は何か?という問いに対して、「人間は機械だ」という。一見何を言っているのか

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【読書ノート】『ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界』(「パン屋再襲撃」より)

【読書ノート】『ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界』(「パン屋再襲撃」より)

『ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界』(「パン屋再襲撃」より)
村上春樹著

「僕」のある日に起こった3つの出来事を簡単なメモにまとめた。という物語。

①ローマ帝国の崩壊
②一八八一年のインディアン蜂起 ③ヒットラーのポーランド侵入

キーワードをいくつか探ってみた。

①ローマ帝国の崩壊
1. ローマ帝国の崩壊は、政治的な秩序や社会的な

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【読書ノート】『ほむら』(『あとかた』より)

【読書ノート】『ほむら』(『あとかた』より)

『ほむら』(『あとかた』より)
千早茜著

主人公の私は、5年も同棲している恋人がいる。ある日彼から、「かたちだけのことだから」と言われながら、プロポーズされる。そんな時、別の既婚者と肉体関係を持ってしまう。

タイトル「ほむら(≒炎)」
変化と再生を象徴すると考えられている。炎は物を焼き尽くし、旧いものを破壊することで新しい生命を生み出す。これは物理的な現象だけでなく、精神的、霊的な成長や変化を

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【読書ノート】『分身』

【読書ノート】『分身』

『分身』
東野圭吾著

自身の顔が両親に似ていないことに疑問を持つ医学部教授の娘氏家まりこと、彼女と瓜二つの少女小林双葉が、自分たちの出生の秘密を探求する物語。二人はそれぞれの母親の死後、互いの存在を知り、自分たちは、クローン人間であることを知る。

まりこの父親(氏家教授)は、自分のかつて愛した女性(高城晶子)の人工受精治療の為、卵子の提供を受けたのだけど、母体に問題があって、受精ができなかった

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