【読書ノート】『ボボーク』(『可笑しな人間の夢』より)
『ボボーク』(『可笑しな人間の夢』より)
ドストエフスキー著
ドストエフスキーの短編小説。
狂人扱いされている作家が、ある日、親戚の葬式に出席する。
併設されているお墓で横になっていると、埋葬されている人々の会話が聞こえてくる。
キーワードを挙げてみる。
ボボーク(豆)
1. 生命の循環や成長の象徴とされる。この観点から、豆は潜在能力や可能性を表し、個人の自己成長や変化の過程を象徴する。
2.収穫や豊穣の象徴とされ、生命を支える重要な食料源である。人間の生存や繁栄に対する感謝の象徴としても捉えられ、自然との調和や共存の重要性を示唆する。
3. 物質的な豊かさよりも、シンプルな生活や謙虚さの価値を象徴する。これは、物質主義に対する批判としても解釈される。
4. 豆はしばしば集団で栽培され、共同で収穫される。この観点から、豆は人間関係やコミュニティの重要性を象徴し、相互依存や協力の価値を強調する。人間が他者との関係を通じて成長する様子を示す。
5. 目の前の小さなものに込められた意味や価値を見出すことで、日常生活の中に深い洞察を得ることができる。
物語の主題は何か?
生きていると、様々な欲望に踊らされている。身分、収入、能力の高さなど、自分の力で勝ち得たものが、全てだと思っているものだけれど、死んでしまった途端に、それまで、大事に思っていた身分や収入は何の意味もないことに気付かされる。
それでも、死後の世界に受け継がれる存在することの意味を考えさせられる。
生きた先には死が待っているという不条理な世界の中で、「生きる」意味を求めることが人間の本質(カミュ)なのか?
主人公が、死者たちの会話を聞いている最中に大きなくしゃみをした途端に、死者たちは、会話をやめて、死後の世界はベールに包まれて、物語は終わる。
最初何を言っているのかよくわからなかったのだけど、再読してみて、実に不思議な物語だなあと思った。
ドストエフスキーは、死者の声を聞いていたのかもしれないとか思ったりした。