小説 「うん、知ってる」
「若いっていいねぇ」
リンゴジュースと混ざる氷は、カラコロと音を立てている。
「私たちも言うて二十代よ」
彼女は私と同じ方向を向き、窓の外を眺めながらつぶやいた。
視線の先には、中学生あたりと思われる女の子が二人、
戯れるようにして話し込んでいた。
「私は残りの時間に焦ってるんじゃないの、戻らない時を惜しんでるの」
真剣な気持ちで言って、ハッと口を閉じる。
しまった、今のは失言だ。
シリアスな展開は日常生活に要らない。
今のはノリで受け流せばよかったものだ。
彼女はきょとんと