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SF、読書のよろこびマガジン

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大人になってからSFの楽しみを知った人の記録。本が好き、ゲーム興味ないかたはここで。
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#本好き

アメリカの価値観 VS アジアの神秘「世界しあわせ紀行」

アメリカの価値観 VS アジアの神秘「世界しあわせ紀行」

久しぶりのテレビで「外国人の日本褒め」を浴びて気持ち悪かったけど、これを読んだら治った。
世界の人の大半は、外国人の評価がなくても、なにが誇りでなにが欠点か自分で決めるし、そもそも他人を気にしない。

これは、日本にも住んでいた鉄火巻き好きのアメリカ人記者が、「しあわせ」とされている国をめぐり、しあわせ迷路に迷い込む一冊だ。

読むだけでふつうに驚けるし、実際に旅行する100分の1かもしれないけど

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ファンタジー小説への苦手意識が減った

ファンタジー小説への苦手意識が減った

ほぼ初めての筒井作品だったけど、あまりに文章が落ち着いてて心地よくて、過酷な場面でもずっと幸せだった。
「超能力を持つ人々が出てくるSFファンタジー」を読んでいる感覚はなくて、旅行記を読んでいるみたいだった。

主人公はラゴスという青年。
「スカシウマ」に乗って南を目指している。この世界の人々は心を読んだり超能力を使ったりできるようだが、科学技術は発達していない。

最初の話に出てくる能力は「転移

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【読書】人生は痛いものだとしつこくしつこくしつこくしつこくしつこくしつこく

【読書】人生は痛いものだとしつこくしつこくしつこくしつこくしつこくしつこく

しつこくしつこくしつこくしつこく語りかける、花村萬月の「ハイドロサルファイト・コンク」を読んだぞ!
「なんでこの作品への賛否で世間は荒れ狂っていないんだ!」と思いながら読んだ。

血液のがんになった作者の体験をもとにした、フィクションと一応銘打った、ノンフィクションに見える小説。
もともとの血液に放射線をあびせて殺し、ほかの人の血液を輸血して入れ替える治療で、血液型が変わり、顔かたちが変わり、爪が

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龍が如く外伝とワンピースの前に、原点の「宝島」の宝は何だったのか読んでみた

龍が如く外伝とワンピースの前に、原点の「宝島」の宝は何だったのか読んでみた

ワンピースが終盤だったり、龍が如く外伝のテーマが海賊だったりするじゃないですか。
この手の話は「伝説の宝とはいったい何なんだ!?」ってナゾが重要だけど、そもそも最初の「海賊の宝の地図もの」の宝箱には何が入っていたのか。

原点を知りたくてスティーブンスン「宝島」を読んだ。同作者の「ジキルとハイド」は読めなかったけど、訳も新しくて少年の心で読めた。

原点じゃなかった。
この本以前にも海賊伝説は山ほ

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【読書記録】ヴァージニア・ウルフ「灯台へ」

【読書記録】ヴァージニア・ウルフ「灯台へ」

文学を学んでいないから、ちゃんとした文章の書き方も、おさえておくべき古典も知らない。

ブックオフでそれっぽいオーラを出してたら「さては古典やな」というのが僕の文学に対する姿勢です。
だから英文学で重要な、ヴァージニア・ウルフという方も全く存じ上げず…。
すごく良かった。
今思えば、ドストエフスキーを読んでたときは無理してた。通好みとされてる音楽や味付けを、わかったフリじゃなくて、
「あ!これ好き

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【読書記録】パンとタバコをひたすら切り詰める25年

【読書記録】パンとタバコをひたすら切り詰める25年

「イワン・デニーソヴィチの一日」を読んた。表紙が好きという理由だけで選んだけど、予備知識なく期待もせず読めて幸運だった。

収容所の男がひたすら労働して、パンを節約している。
一口ごとに小さく味わって、隠して後でお粥の器をぬぐって食べる用に服に隠してとっておく。

仲間にタバコを分けて欲しくてずっと隣でタイミングをうかがってたり、極寒の中でまともな防寒対策もなく延々とレンガをつんだり、わずかな暖房

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北海道の刺身

北海道の刺身

河﨑秋子はちゃんと北海道では誰もが知る超有名作家になってるんですか?短編集「土に贖う」のうちの一遍でもいいから、学校でちゃんと読ませてるんですか?
 
トロの刺身を食べただけでマグロ全体が生きていたことを想像できるように、数ページの短編ひとつで北海道の大地と寒さが頭に注入される。
この本は北海道の刺身。北海道の切り身。北海道のえんがわ。

地方小説としてすごくかっこいい。このテキストは四国で書いて

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【読書日記】「三四郎・それから・門」

【読書日記】「三四郎・それから・門」

「それから」を読んだ。学校で「坊ちゃん」を勧められても読まなかった記憶があるのに、大人になって、自分で読みたいから自分で稼いだ金で文庫本を買って、1日2行しか進まない日もあるけど、少しづつ、自分で読みたいから読むことができた。

読書感想文でもない、作者の考えを読み取るでもない、ただ100年前の人の言葉使いとか、文章が好きだから読んだだけ。

この時代とは人生の長さも、きいてる音楽の速さも違うのに

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山本晋也カントクが何のカントクだったのかを知る。

山本晋也カントクが何のカントクだったのかを知る。

子供のころ、テレビで知的なポジションにいるけど何の人なのか分からない大人が大勢いた。

最近になって、YouTubeで山田五郎さんがこんな面白い人なのか!と知ったけど、みうらじゅんさんやソラミミストの安斎さん、ビートたけしの番組に出ていた芸術家のクマさんとか、一生何者か知らないまま終わってた可能性もある。

「トゥナイト2」という深夜番組で風俗レポーターとかをやっていた山本晋也カントクも謎だった。

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すばる7月号を学校の図書室に置こう

すばる7月号を学校の図書室に置こう

すばる7月号を読んだ。
李琴峰さんのアイオワ滞在記が良すぎて共有したいので、ここだけでもカッターで切り取って小冊子にして全国の高校の図書館に吊るそう。

アイオワ大学で、反LGBTQの活動家が講演をすることに、大学生たちが一斉に抗議する。
コールで、アートで。それぞれのスタイルで反差別を態度で示し、近所の車はクラクションを鳴らし、武装警察まで巻き込む騒ぎ。
その一部始終をその場にいるような迫力で記

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「台北プライベートアイ」紙で台湾を歩こう

「台北プライベートアイ」紙で台湾を歩こう

連続殺人犯のターゲットにされた主人公が、厄落としの豚足入り素麺を1日に2回食わされるアジアン・ハードボイルド。
「ソウ」を観て震え上がるとか、かあちゃんは気も強いが麻雀も強いみたいな、ミステリーと全然関係ないことにページを割いてて最高だった。
ページ折り癖も付箋もあるし風呂でも読んだ。1週間ぐらい心は十年以上前の台湾に住んでた。

主人公は口を開けば不平不満が止まらない反面、演劇に関わって読書家の

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【読書日記】映画より先に「2001年宇宙の旅」を読むぜいたく

【読書日記】映画より先に「2001年宇宙の旅」を読むぜいたく

5月は体調崩した方の報告が多かった。俺もお前もアイツも俺もみんな、ノド枯らしたり入院したりしていた。
みんな大丈夫か!生きているのか!じゃあ良かった!

SF小説を読める元気がもどったので、ついにこれを読む。

映画は猿の集団の前にモノリスが出現する場面しか知らない。ネタバレなしで読めるぜいたくを噛みしめる。

猿人たちの前に突然現れたモノリス。
猿たちはまず、植物のように生えてきたものかと考える

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【読書】内田裕也✕モブ・ノリオ JOHNNY TOO BAD

【読書】内田裕也✕モブ・ノリオ JOHNNY TOO BAD

硬派でいく。ウジャジャけた人間は登場しない。

変なかたちの本を読んだ。
内田裕也の対談集「ロックントーク」と、モブ・ノリオの小説「ゲットー・ミュージック」
二冊をくっつけてグラフィティや顔写真で飾って、上からでかいカバーでくっつけた「JOHNNY TOO BAD」。

内田裕也がそもそもよく分からない。政見放送がネタにされていたのと晩年の樹木希林さんとの謎の夫婦関係でしか知らない。

その人を語

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海外のさんざんな体験談、なんぼあってもいいですからね

海外のさんざんな体験談、なんぼあってもいいですからね

本を買っても最後まで読みきれない状態だったけど「地図と拳」「バッタを倒すぜアフリカへ」の分厚い2冊が一気に面白く読めた。
ちゃんと面白いものを集中できる場所に持ってけば読めるんだ。嬉しい。ゲームへの興味は以前より薄いままだけど。

ところで、最近面白かった動画は、元芸人のレンタルぶさいくという方が、フィリピンに就職してめちゃくちゃな目に遭う話。

「バッタを倒すぜアフリカへ」の中にも、作者がモーリ

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