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読書・映画・ドラマ・YouTube~作品ガイドと感想

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#文学

【名著100選】その4 堀辰雄の「風立ちぬ」あのアイドル歌手の表題曲にも・・・・

【名著100選】その4 堀辰雄の「風立ちぬ」あのアイドル歌手の表題曲にも・・・・

堀辰雄の「風立ちぬ」

堀辰雄の「風立ちぬ」は、日本文学における不朽の名作として広く知られています。この中編小説は、堀自身の実体験に基づいており、愛と死、そして生の意味を深く掘り下げた作品です。物語は、「序曲」「春」「風立ちぬ」「冬」「死のかげの谷」という五章から成り立っており、美しい自然に囲まれた高原の風景の中で、重い病に冒された婚約者に付き添う主人公の姿を通じて、限られた時間の中での生の強さと

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『斜陽』 太宰治 読書レヴュー

『斜陽』 太宰治 読書レヴュー

『斜陽』は、太宰治の代表作の一つで、戦後の日本社会を背景に、没落する貴族一家の姿を描いた作品です。このレビューでは、プロット、キャラクター開発、執筆スタイル、テーマ、メッセージ、文筆技術、ペース、構造、読みやすさ、そして全体的な評価について詳しく見ていきます。

### プロット

『斜陽』は、戦後の混乱期における貴族一家の没落を描いています。物語は、母親とその娘かず子、息子直治の三人を中心に展開

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【読書】ヘルマン・ヘッセの「車輪の下」

【読書】ヘルマン・ヘッセの「車輪の下」

ヘルマン・ヘッセの「車輪の下」

ヘルマン・ヘッセの「車輪の下」は、1906年に発表された感受性豊かな少年ハンス・ギーベンラートの物語です。

この作品は、教育システムの厳しさと個人の精神性との間の葛藤を描いており、ヘッセ自身の経験に基づいています。ハンスは、周囲の期待に応えようとするが、神学校の詰込み主義の教育に疲弊し、最終的には悲劇的な結末を迎えます。

この物語は、教育が個人の精神に与える影

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【読書】800年以上前の無常の随筆(エッセイ)〜鴨長明の「方丈記」

【読書】800年以上前の無常の随筆(エッセイ)〜鴨長明の「方丈記」

鴨長明の「方丈記」について

皆さん、こんにちは!今日は、鴨長明の「方丈記」について、ちょっとユニークな視点でお話ししましょう。鴨長明が1212年に書いたこの古典は、日本の三大随筆の一つとされています。しかし、800年以上前の作品を今読むと、なんとも言えないユーモアが感じられるんですよ。

まず、鴨長明は「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」と始まるこの作品で、無常観を表現しています

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【読書】10代で読んだ世界の名作 カミュの「異邦人」

【読書】10代で読んだ世界の名作 カミュの「異邦人」

アルベール・カミュの『異邦人』は、20世紀を代表する文学作品の一つです。この小説は、1942年にフランスで初版が出版され、その後、世界中で読まれてきました。主人公ムルソーは、母の死に無関心な態度を示し、後に無意味な殺人を犯します。しかし、物語の核心は、ムルソーの行動や感情ではなく、人間存在の不条理と孤独に焦点を当てています。

『異邦人』は、カミュの「不条理」という哲学的概念を反映しています。不条

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ダンテとラファエル前派展:アートと文学の交差点

ダンテとラファエル前派展:アートと文学の交差点

私が大学生のころ、美術史概論の教授は東京大学文学部仏文科で、ノーベル文学賞の大江健三郎と同期だったという女性教授でした。当時の東大の話をよく聞かされて、新宿の美術展や高級なお店に何度も飲みに連れて行って下さった。特に思い出深いのが、新宿伊勢丹でのラファエル前派展。ダンテ・ガブリエル・ロセッティだった。彼の絵画には本当に魅了された。今回はその彼の絵についての話を懐述していきたいと思う。

🖼「ダン

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【短編小説】白きアイドルの影

【短編小説】白きアイドルの影

タイトル: 「白きアイドルの影」

 東京大学の本郷キャンパスは、春の訪れと共に新しい息吹で満ちていた。桜の花びらが舞い落ちる中、文学部の一角にある小さな教室では、田中カスミ教授がフランス文学の授業を終えたばかりだった。彼女の授業は、その明晰な解説で学生たちを魅了し、教室はいつも熱気に満ちていた。

「今日は特別なゲストをお招きしています」と田中教授が言うと、教室の扉が静かに開いた。入ってきたのは

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【読書】ジョルジュ・バタイユ:死とエロティシズムを探る哲学者

【読書】ジョルジュ・バタイユ:死とエロティシズムを探る哲学者

 ジョルジュ・バタイユは、20世紀フランスの哲学者、思想家、作家であり、彼の影響は現代思想において非常に大きなものです。彼の作品は、死、エロティシズム、経済学など、多岐にわたるテーマを探求しています。バタイユは、フリードリヒ・ニーチェやシグムント・フロイトの影響を受け、後にミシェル・フーコーやジャック・デリダなどの思想家に影響を与えました。

 バタイユの思想は、彼の著作「内的体験」や「眼球譚」な

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資本主義の本質を探る200冊の書籍ガイド~堀内勉氏の「読書大全」

資本主義の本質を探る200冊の書籍ガイド~堀内勉氏の「読書大全」

「読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊」は、2021年に、堀内勉氏が著した読書ガイドです。人類の知の進化を「宗教と神話」「哲学と思想」「経済と資本主義」という3つの軸に沿って見ていき、人類の歴史に残る200冊の名著を紹介しています。本書は、ビジネスリーダーにとって必読の書籍であり、読書から知識よりも洞察力を得る方法を教えてくれます。

私の感想文は以下の通りで

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「繊細にして大胆」松本隆・文学路線の結晶~松田聖子/風立ちぬ 1981年

「繊細にして大胆」松本隆・文学路線の結晶~松田聖子/風立ちぬ 1981年

貴重なブレザー姿での歌唱。

40年来のファンが熱く語る!!
1981年の秋に修学旅行があって、奈良と京都に行きました。

当時はザ・ベストテンという歌番組があり、その順位を当てるカケをしていました。総勢20人くらいでしょうか。
そして、旅行の日の夜、京都の旅館でそれをクラスメイトと観ていました。

第1位にこの曲が選ばれて、ごっそりかけ金をもらった思い出があります。

とにかく、彼女の人気は驚異

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【読書】池田満寿夫/エーゲ海に捧ぐ~地中海に彩られるエロス。残酷で儚いラストシーン

【読書】池田満寿夫/エーゲ海に捧ぐ~地中海に彩られるエロス。残酷で儚いラストシーン

『エーゲ海に捧ぐ』(エーゲかいにささぐ)は、池田満寿夫の小説。およびそれを原作とした映画作品。

概要
『野性時代』1977年1月号に発表。同年に第77回芥川賞を受賞。芥川賞は三田誠広の『僕って何』との同時受賞である。遠藤周作、中村光夫、吉行淳之介が高く評価する一方で、官能的な内容が物議を醸し、永井龍男は本作への授賞に抗議し、芥川賞選考委員を辞任することとなる。また、本作と前述の『僕って何』が掲載

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【読書】高野悦子『二十歳の原点』~孤独であること。未熟であること。これがわたしの二十歳の原点である~

【読書】高野悦子『二十歳の原点』~孤独であること。未熟であること。これがわたしの二十歳の原点である~

皆さん、わたしのnoteに興味をいただき、ありがとうございます💁

『二十歳の原点』(読みは、にじゅっさいのげんてん)

私が大学生。二十歳の時に読み、衝撃を受けた作品になります。

深い感銘を受け、友人と彼女の詩作を朗読して曲を乗せて、
カセット録音して発表したくらいなのです。

読書を好み、恋人のことで頭を悩ませ、自分の若さと未熟さに嘆き悲しむ。

今の女子大生とどこが違うのでしょうか。

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