「さえずりで目が醒めた。 朝日の白い熱。 青、青、青ばかりの家具と部屋。 カーテンを開けようと窓を目指してよろめく。明け方の彼の姿は朧げな幽霊のようだった。 ぴんっ、しゃらり。 朝日差す青の部屋。 朝日を抱える青空。 彼は貴女を思い出す。 貴女は彼を──。」
新鮮なレタスを重ねてかじった時の、歯ざわりと水気、うっすらとした苦味、赤い口の中で冷えたままの、白っぽい緑色のぎざぎざ。ハン・ガン『ギリシャ語の時間』は、わたしにレタスを食べさせる。物語に物語が重なって、しゃきしゃきと音を立てて読まれるのを待っている。そんな味がした。
『ギリシャ語の時間』ハン・ガン(訳:斎藤真理子)読中読後感。 休日の昼過ぎ、夕前。 霧雨。たまに陽射し、たまに雲陰、ずっと雨。 寒いと言えないけど凍えた身体を意識で和らげながら、一秒を刻み続ける矮躯の心地。 形はどうあれ開ける開けてしまうと分かっている暗闇への投げ入れ/入り。