新鮮なレタスを重ねてかじった時の、歯ざわりと水気、うっすらとした苦味、赤い口の中で冷えたままの、白っぽい緑色のぎざぎざ。ハン・ガン『ギリシャ語の時間』は、わたしにレタスを食べさせる。物語に物語が重なって、しゃきしゃきと音を立てて読まれるのを待っている。そんな味がした。