今年のノーベル文学賞の「韓江(ハン・ガン)」を徹底解説します!
2024年10月10日、韓国の作家、韓江(ハン・ガン)さんがノーベル文学賞を受賞しました。韓国人作家として初の快挙となる今回の受賞。ハン・ガンさんとは一体どんな人物なのでしょうか?
本記事では、ハン・ガンさんの人物像、代表作、受賞理由などを詳しく解説していきます。
韓江(ハン・ガン)さんとは?
1970年、韓国の光州広域市に生まれたハン・ガンさんは、小説家である父ハン・スンウォンさんの影響を受け、幼い頃から文学に親しんで育ちました。延世大学国語国文学科を卒業後、1994年にソウル新聞の新春文芸に短編小説「赤いアンカー」が当選し、作家デビューを果たしました。
その後も精力的に作品を発表し続け、「菜食主義者」「すべての、白いものたちの」「少年が来る」など、数々の話題作を世に送り出してきました。
日本語訳を全て紹介
ここからは、日本語に翻訳されている彼女の作品を全て紹介します。日本語訳が出版された順ではなく、彼女が原書を出版した年月日順に紹介していきたいと思います。そのほうが、皆さんも読みやすいと思うので!
・そっと静かに
2007年に書かれましたが、日本語訳が出たのは2018年です。ハン・ガンが「書きたいのに、書けなかった」と回想する時期に生まれた本。
音楽との出会い、さまざまな思い出にまつわる歌、著者自身がつくった歌について綴られています。著者の繊細な感性に触れるエッセイ集の初邦訳。
巻末にはオリジナルアルバムの音源情報も収録されている、面白い本。
菜食主義者:
2007年に発表された長編小説。突然菜食主義者になった女性ヨンヘとその家族の姿を通して、人間の暴力性や抑圧された欲望を描いた作品。2016年には英訳版がブッカー国際賞を受賞し、国際的な評価を獲得しました。
・ギリシャ語の時間
「この本は、生きていくということに対する、私の最も明るい答え」と彼女は言っています。ある日突然言葉を話せなくなった女と、すこしずつ視力を失っていく男と物語。女は失われた言葉を取り戻すため古典ギリシャ語を習い始める。ギリシャ語講師の男は彼女の ”沈黙” に関心をよせていく。ふたりの出会いと対話を通じて、人間が失った本質とは何かを問いかける作品。
・回復する人間
短編集。
「明るくなる前に」
かつて職場の先輩だったウニ姉さんは弟の死をきっかけに放浪の人になる。そんな彼女を案じていた私に3年前、思わぬ病が見つかる。1年ぶりに再会した彼女が、インドで見たというある光景を話してくれたとき、小説家の私の心は揺さぶられる――ウニ姉さんみたいな女性を書きたい、と。
「回復する人間」
あなたの左右の踝の骨の下には穴があいている。お灸で負った火傷が細菌感染を起こしたのだ。そもそもの発端は姉の葬儀で足をくじいたことだった。ずっと疎遠だった姉は1週間前に死んだ。あなたは自分に問いかける。どこで何を間違えたんだろう。2人のうちどちらが冷たい人間だったのか。
大切な人の死や自らの病気、家族との不和など、痛みを抱え絶望の淵でうずくまる人間が一筋の光を見出し、再び静かに歩み出す姿を描く。現代韓国屈指の作家による、魂を震わす7つの物語。
・引き出しに夕方をしまっておいた
ハン・ガンによる詩60篇を、著者の小説を手掛けてきた翻訳家きむ ふなと斎藤真理子の共訳により刊行された本。巻末に収録した翻訳家対談では、韓国における詩の受容や詩人としてのハン・ガンなど、広く深みのある話が繰り広げられており読者を韓国の詩の世界へ誘う格好のガイドとなっています。
少年が来る
2014年に発表された長編小説。1980 年5月18 日、韓国全羅南道の光州を中心として起きた民主化抗争、光州事件。戒厳軍の武力鎮圧によって5月27日に終息するまでに、夥しい数の活動家や学生や市民が犠牲になった。抗争で命を落とした者がその時何を想い、生存者や家族は事件後どんな生を余儀なくされたのか。その一人一人の生を深く見つめ描き出すことで、「韓国の地方で起きた過去の話」ではなく、時間や地域を越えた鎮魂の物語となっています。
すべての、白いものたちの:
おくるみ、産着、雪、骨、灰、白く笑う、米と飯……。朝鮮半島とワルシャワの街をつなぐ65の物語が捧げる、はかなくも偉大な命への祈り。
生後すぐに亡くなった姉をめぐり、ホロコースト後に再建されたワルシャワの街と、朝鮮半島の記憶が交差する。
文庫化にあたり、訳者の斎藤真理子による「『すべての、白いものたちの』への補足」、平野啓一郎による解説「恢復と自己貸与」を収録。
・別れを告げない
いま生きる力を取り戻そうとする女性同士が、歴史に埋もれた人々の激烈な記憶と痛みを受け止め、未来へつなぐ再生の物語。
済州島出身のインソンは10代の頃、毎晩悪夢にうなされる母の姿に憎しみを募らせたが、済州島4・3事件を生き延びた事実を母から聞き、憎しみは消えていった。後にインソンは島を出て働くが、認知症が進む母の介護のため島に戻り、看病の末に看取った。キョンハと映画制作の約束をしたのは葬儀の時だ。それから4年が過ぎても制作は進まず、私生活では家族や職を失い、遺書も書いていたキョンハのもとへ、インソンから「すぐ来て」とメールが届く…
以上が、現在日本語訳がある全ての作品です!
受賞理由
スウェーデン・アカデミーは、ハン・ガンさんのノーベル文学賞受賞理由を「歴史的なトラウマと対峙し、人間の生命の儚さを露呈した、迫力のある詩的な散文に対して」と発表しました。
ハン・ガンさんの作品は、人間の暴力性や脆さ、そして希望といった普遍的なテーマを、独自の視点と美しい文章で描き出しています。その文学的功績が高く評価され、今回の受賞に至ったと言えるでしょう。
まとめ
韓国人作家として初のノーベル文学賞を受賞したハン・ガンさん。彼女の作品は、世界中の読者に深い感動と共感を呼び起こしています。これを機に、ハン・ガンさんの作品に触れてみてはいかがでしょうか。