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ハン・ガン著『ギリシャ語の時間』と私のギリシャ語の時間

2024年にノーベル文学賞を受賞したハン・ガンの『ギリシャ語の時間』を読んだ。目の不自由な古典ギリシャ語講師と言葉が話せなくなった教え子の物語。繊細で美しく、悲しいけれど希望が感じられる小説であった。

実は私も学生の頃、古典ギリシャ語の授業を受講していた。先生は岩倉具忠(ともただ)先生。岩倉具視の子孫という、華麗なる一族出身の上品な雰囲気の方だった。学生数は5人程度で、最終的には3人くらいになったと思う。毎週静かに90分、ギリシャ語で聖書を読んだ。

語学が好きだった私は全然苦にならず、数年前に友人とギリシャに旅行し、同じ年くらいのギリシャ人の友達がいたため、たまに手紙にギリシャ語を書いたりして楽しんでいた。今でもギリシャ語アルファベットの読み方を少し覚えている。

色々思い出すと懐かしく、岩倉先生にも会ってみたくなった。しかしネットで検索してみると2016年にお亡くなりになったようだ。残念。私が学生の頃というと20年以上前なので無理もない。昔一緒の時間を共有した人がどんどんいなくなるのは寂しいものだ。改めて「今」という時間の貴重さを想う。


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