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本 『ギリシャ語の時間』


『ギリシャ語の時間』
ハン・ガン
訳 斉藤真理子

この本の素晴らしさを私はどれだけ認識できているか、ほんの少しこの本という湖に手を浸した程度なのだと思う。

それでも、とても良い読書体験だった。しんしんと降る雪のような読書体験だった。

私のあまりの未熟さゆえ、感想を言葉にすることが難しい、というか、言葉にする以前の「感想」が明確に捉えられないのだけれど、私なりに感じた文学の美しさが胸を突き刺し続けた。

読み終えた今でも、主人公たちの眼差しが口元が私の胸の中を真空のようにして締めつける。

読んでいる間、この本の深い深い闇と静寂の水圧が、私の心の奥底のそれと釣り合うようで、心地が良かった。

ハン・ガンさんの作品を読むのはこれが初めてだから、この作品にどれだけの光が与えられているのか他と比べられないけれど、後半は滑り込むように本の中に入り、私の中にぷくぷくと小さな気泡がいくつも浮き上がり水面へ上がって行くような心地になった。

また他の作品も読んでみようと思う。



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