見出し画像

機能性ディスペプシア。逆流性食道炎とは異なる、胃が不調となる10人に1人が発症の病気。

こんにちは、翼祈(たすき)です。

機能性ディスペプシアとは、早期満腹感、胃もたれ、胃の痛みという胃の症状が一時的でなく慢性的に引き起こり、胃の画像検査で異常が発見できない状態を総称した病名のことです。

2013年に健康保険での治療の対象に加わった比較的新しい病気となります。余り病名が浸透していませんが、およそ10人に1人が機能性ディスペプシアを罹患していると想定されています。

機能性ディスペプシアという病名の、「ディスペプシア」の語源はギリシャ語から来てます。「ディス」が「悪い状態」。「ペプシア」は「消化」の意味がある「ペプシ」が語源にある言葉、「消化不良」という意味もあります。それが現代では「胃の不快感のある症状」を医学用語で「ディスペプシア症状」と言われています。

そして、「ディスペプシア」の前にある接続詞の「機能性」は、胃の働きや機能そのものを表します。この動きの異常になることを「機能的な異常」と呼びます。

従って機能性ディスペプシアの病名には、『胃の形には異常はないが、上手く機能せずに働かなくなる』という意味を持ちます。

今回は主な症状、原因、診断方法、治療薬などについて発信します。

▽症状


食べたらすぐお腹が張った感じがする「胃のもたれ」、すぐに満腹感が出る「早期満腹感」、胃が熱く感じる「灼熱感」、「胃の痛み」が代表的な症状です。

早期満腹感や胃もたれは食事を取った後に発生する症状ですが、灼熱感胃の痛みという症状も食事を取った後に発生することが多い傾向だということが近年明らかとなりました。

機能性ディスペプシアは、胃の不快感のある症状が現れていると、肉体的にも精神的にも重い負担がのしかかり生活の質を著しく低下させます。

▽原因

正常な状態である胃では、口から入った食べ物が食道を通って胃に通る時に、胃の上の部分を拡張して胃の中の食べ物を溜め込みます。そして、波打つ様に働く蠕動(ぜんどう)運動で食べ物と胃液を混合し、食べ物を消化してペースト状にします。

さらに、最後に食べ物を十二指腸へ届けるのが、胃の主な動きです。従って、胃には食べ物を「溜め込む」「混合する」「届ける」という、3つの機能を持ちます。

機能性ディスペプシアを発症すると、食べ物を「溜め込む」動きが上手く機能しなくなると、食べ物が食道から胃へと通って行っても胃の上部が上手く拡張せず、胃の上の部分に食べ物を溜め込むことがきちんとできなくなってしまいます。このため、早期満腹感などの症状が起きます。その上、「届ける」動きが上手く機能しないケースもあります。すると胃の中にある食べ物を十二指腸へ上手に届けることができなくなり、胃の中に食べ物が長く定着してしまいます。このため、胃もたれなどの症状が起きます。

また、ほとんどの機能性ディスペプシアの当事者には、「胃の知覚過敏」があることが明らかとなっています。「恐怖」「危険」「不安」に凄く過剰で、強いストレスが起きると乱れ、それに伴い胃の機能は鈍くなり知覚過敏を発生させます。

知覚過敏」のある状態では胃の動きや胃酸の分泌が過剰になって、灼熱感や胃の痛み、胃もたれなどの症状がより強く出てしまいます。

機能性ディスペプシアは、ストレスが起きた時の自律神経の乱れにより、自律神経に抑えられている胃の機能に不具合が起きることが原因の1つと想定されています。

ストレスを感じやすい人が機能性ディスペプシを罹患しやすく、疲労を感じやすい人も罹患しやすいと言われています。それ以外にも、睡眠不足や喫煙、食生活の乱れなどは自律神経の動きを乱しやすくさせ、機能性ディスペプシアを悪化させる素因となります。また、ピロリ菌への感染や胃酸の出過ぎも、胃の機能に直接影響を与えます。

▽診断方法

機能性ディスペプシアの診断は、胃もたれ、胃の痛み、灼熱感などの胃の不快感のある症状が持続しているかが大きなポイントです。不快感のある症状が週に1-2回以上引き起こし、1か月以上慢性的に持続しているかどうかが1つの機能性ディスペプシアの診断基準となります。

また、機能性ディスペプシアとの診断を受け薬を処方するためには、従来は、胃の内視鏡検査を実施することが必要でした。2021年に改訂された新しい機能性ディスペプシアの治療ガイドラインにおいては、ピロリ菌に感染しているかの状態観察や患者の年齢、今までの検査歴などを総合的に精査して、明らかに胃がんや胃潰瘍などの病気でないと医師が診断可能なケースでは、新規に画像診断をしなくても良いのではないか?と、提唱させています。

この提唱が基準となれば、診断や治療の遅れを予防できるだけでなく、患者の内視鏡検査の負担を軽減させることにも繋がります。

▽治療薬

発症する原因は、知覚過敏と運動機能の異常から来るのだと言われています。治療法は、この2つを改善できるように治療しています。胃の中で発生している異常を改善する手段では、「アコチアミド」という治療薬が、運動機能への改善で高い効果に期待が持てるとして病院で処方されます。

また、新しい機能性ディスペプシアの治療ガイドラインでは漢方薬・六君子湯(りっくんしとう)の処方も推奨されています。もう1つ治療薬として使用されるのは酸分泌抑制薬です。胃酸が起因で症状を発症しているケースもあるからです。

これらの薬を飲み続けても症状が改善しないケースで、不安感を強く抱き、それが症状に悪影響を与えていると考えられるケースでは、抗不安薬を処方する場合もあります。さらに、初期治療とは違う種類の運動機能改善の治療薬や漢方薬を処方する場合もあります。

治療を2~3週間継続しても症状が改善しないケースは、消化器専門医を受診して、内視鏡検査を受け、胃がんや胃潰瘍などの病気がないか詳細に検査したり、ピロリ菌検査を受けたりすることが推奨されます。

参考記事

機能性ディスペプシアを改善する治療法・食事法・運動・薬 NHK 健康ch(2021年)

原因不明の胃痛や不快な症状「機能性ディスペプシア」とは NHK 健康ch(2022年)

機能性ディスペプシア 原因はストレス、自律神経の乱れ、胃の働きの異常 NHK 健康ch(2023年)

機能性ディスペプシアを改善するには、

機能性ディスペプシアを罹患する患者は、健康な人に比較して睡眠不足、ストレスを強く感じている、朝食を食べない人が多いケースなどが明らかとなっています。自律神経の機能を安定させるためにも生活改善は欠かせないポイントです。最初に、夜更かしを止めて十分な睡眠時間を確保し、適度なウォーキングなどの運動をして、朝は決まった時間に起床するという日々の暮らしのリズムを整えることが重要です。

1番重要な生活改善は、胃に負担をかけずに食べることです。食事はゆっくりよく噛んで食べる様に意識し、満腹になるまで食べずに腹八分目にしましょう。食べ終わってからすぐ活発に行動するのは消化に悪い行動なので、休憩を30分間取ってから行動するなど、すぐ行動しない様にします。食べたい食事の内容を細かく制限して決めてしまうと、逆にさらにストレスを抱えるので、余り細部にまで気にしない方が良いかと思われます。

夏は冷房などで身体が冷えてしまう時がありますが、温度差は自律神経には良くない影響を与えるので、冷え過ぎない様に注意して設定することが必要です。また、喫煙は自律神経、特に交感神経には悪影響です。喫煙している人は禁煙を推奨します。

この様な対策を1週間継続しても機能性ディスペプシアの症状に改善が見受けられなければ、早期に消化器内科などの病院を受診して下さい。

私も過食嘔吐が酷かった時に吐き続けて、胃が荒れて、大変な時期がありました。幸い逆流性食道炎とも、機能性ディスペプシアとも診断を受けませんでしたが、機能性ディスペプシアは逆流性食道炎と違い認知度が低い病気です。私もたまたま知った病名でしたので。

診断を受けていなくても症状に悩まされている方は多いと思います。そんな方達も適切な治療や改善法を取り入れることができたらと思いました。もし「胃がおかしいな」と思ったら、早期に病院を受診して下さいね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?