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大人になんかなるなよ、死ぬなよ、
「大人にならなくていいのに」そう悲しそうに、何気なく先生は言った。少し暑くなった病室に、静かな風が吹く。春の終わりの匂いがした。
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昨日、初めてのメンタルクリニックへ行った。東京から引っ越したせいで、新しい病院を探していたからだ。「3ヶ月後になっちゃうんですけど…」予約時にそう言われた時は絶望したけれど、なんとか騙し騙しこの日を迎えた。精神科は、ほんとうに空いていない。今日死にたいのに!今日
火曜日、ほうれん草と愛を買った
澄んだ冬の青、まばゆい光が瞳を照らす。このお店に来ると、いつも緊張してしまう。「こ、こんにちは!」裏返りそうな声で声をかけると、いらっしゃいとおばあちゃんが微笑んでくれる。穏やかな冬の日、春の匂いがした。
近所の野菜直売所は、農家さんがやっているちいさなお店だ。普段はスーパーで買い物するけれど、時々このお店に寄る。大体野菜が100円〜200円。品数は少ないけれど、お目当ての野菜がある時はラッキー
結婚したわたし、恋をはじめます
【わたしはゆるいポリアモリーになりたい】
「病める時も、健やかなる時も、愛し、慈しむと誓いますか?」
結婚して一年過ぎたわたしが、これを呪いの言葉だと思うようになったのは、最近のことだ。愛する、ということについて考えるたびに、わたしはこの社会が定義する"愛し方"に違和感を覚えるようになった。その象徴がこの誓いの言葉だ。病める時も、健やかなる時も。そんな愛なんて存在しない。だって、ひとは完璧じゃ
生きてるうちに、好きと言え
夜中のコンビニ、スウェットですっぴん眼鏡も慣れたものだ。
びゅーびゅーと吹く風が、火照りを冷ますから、子犬のように身を寄せ合って歩く。
冬は君の手をポケットにお招きできるからいい、とバンプが歌っていたな、と思い出しながら、彼のポケットに手を突っ込む。
あたたかいおでんと一年ぶりに再会して、彼は「柚子胡椒をつけるとうまいんだよ、しってる?」と笑う。
安い缶チューハイに、暖かい部屋で食べると最高なアイ
泣きながらご飯を食べた事があるひとは生きていけます
生きることは食べること。
食べることは生きること。
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こないだの未遂騒動からしばらく、わたしは何も口にできなかった。何を食べても戻してしまうし、食べることに全然前向きになれなかった。だって、食べたら生きてしまうもの。
3日ぶりに口にしたのは、あたたかいうどんだった。わたしは讃岐のにんげんで、うどん県と呼ばれる地で生まれた生粋のうどん好きだ。そんなわたしがうどんですら食べられなかった3日、ま