ツジ 

'96(28) 震えながら立つ中央線のホームで、あなたの足を止める言葉が、私の中にあるように。                              (コメント返信遅くなってしまうことが多いのですが、必ず返しますのでご容赦ください)

ツジ 

'96(28) 震えながら立つ中央線のホームで、あなたの足を止める言葉が、私の中にあるように。                              (コメント返信遅くなってしまうことが多いのですが、必ず返しますのでご容赦ください)

マガジン

  • スキが100を超えたもの

    スキが100を超えたものだけ集めました。皆さんが読んでくれたこと、ほんとうに嬉しいです。(ほぼ100もいれちゃう)

  • お気に入り

    自己紹介代わりの記事5つ。お気に入りのものです。

最近の記事

  • 固定された記事

生きてるうちに、好きと言え

夜中のコンビニ、スウェットですっぴん眼鏡も慣れたものだ。 びゅーびゅーと吹く風が、火照りを冷ますから、子犬のように身を寄せ合って歩く。 冬は君の手をポケットにお招きできるからいい、とバンプが歌っていたな、と思い出しながら、彼のポケットに手を突っ込む。 あたたかいおでんと一年ぶりに再会して、彼は「柚子胡椒をつけるとうまいんだよ、しってる?」と笑う。 安い缶チューハイに、暖かい部屋で食べると最高なアイスも買っちゃって、急ぎ足で部屋にもどる。 そんな、ありふれた、どこにでも転がっ

    • ここは風街、台湾の街角で

      ここは風街。びゅうっと吹けば、スカートが揺れる。街角からは八角が香り、漂うスパイスの香りで鼻の奥がつんとする。ガヤガヤと聞こえる異国のことば、所狭しと並ぶ商店。果物に野菜、鶏の頭に魚の頭。いくら目を見開いても足りないほどに、この街は鮮やかで美しい。 今わたしは台湾に滞在している。ひと月過ごすねぐらは、"風城"との異名を持つ、新竹という街だ。風の強い、美しいこの街。わたしにとっての風街を、ようやく見つけたような気がしている。 * 台湾を好きだと思ったのは、すでに行きの飛行

      • たった、一週間の恋だった

        金木犀の香りが、わたしの胸を締め付ける。街角ですれ違う、昔好きだったあの人に似ているような、そんな感じ。金木犀を香るたびに、わたしの記憶のどこかが甘く動く。初恋なんて呼べない、苦い記憶が。 * あれはたった、一週間の恋だった。 もう350ミリのビールを片手に夜じゅう散歩するなんてことはなくなってしまった。それでも、わたしは今もあの青い秋を忘れられずにいる。残り香に小さく火をつけて、煙が消えるのをゆっくり待っている。 枯れ葉が重なる音に、わたしたちは恋の心音を重ね合わせ

        • スクリーンの向こう側

          ブザーが鳴れば、真っ赤なビロードの幕が開く。徐々に暗くなる照明、ぱっとついた光が物語を語りだす。赤く染まる夕陽に恋人たちの影、ジャングルを駆け抜ける冒険者、真っ青な海に飛び込む犯人と刑事。フィルムがめぐれば物語も巡る。瞳にまぶしいほどの光を反射させながらみんな釘付けになる、そんな場所。 これは街のちいさなミニシアターで働き出したわたしの、なんてことのない日々の話。 * その映画館と出会ったのは、小さな頃だった。おじいちゃんやおばあちゃん、お父さんも昔はよく通ったという小

        • 固定された記事

        生きてるうちに、好きと言え

        マガジン

        • スキが100を超えたもの
          24本
        • お気に入り
          5本

        記事

          手首に包帯、愛は呪い

          また、ここに帰ってきてしまった。そんな感覚が全身を襲う。うつが手招きしてわたしを抱きしめる。今日もわたしは深海に沈んでゆく。 季節が秋の香りを漂わせはじめる変わり目。風の匂いが変われば、わたしのこころは冷えてゆく。どうして?ばかりが頭に浮かぶ人生で、ただ食いしばることしかできない毎日。苦しいと叫びたいのに叫ばせてくれないこの世界は、どこまでも狂っている。 満月が光る夜、わたしも月に吠えれば楽になるのだろうか。わたしも獣になれれば、ヒトを捨てられれば。そんなことを想う時点で

          手首に包帯、愛は呪い

          致死量の愛と悲しみを捧ぐ

          「僕は君を救えない、救う気もない」 秋の風が吹き始めた夜、恋人に告げられた台詞は、ほんとうの愛だった。 * つい先日、両親が離婚することを決めた。長らく争い合ってきた、崩壊しきった我が家。終焉を迎えるには十分すぎるほどの理由が積み重なっている。両親は家庭内別居を始め、わたしは日々伝書鳩。憎しみと疲労が滲み出る二人を見ながら、ただ悲しみにわたしも疲弊する。 「この子がこうなったのはお前のせいだ」と罵り合う二人を見てから、わたしの心は壊れてしまった気がする。精神疾患を患い

          致死量の愛と悲しみを捧ぐ

          エンドレスサマー

          溶けかけのソフトクリームの甘さも確かめないうちに、夏が去ってしまった。いつだって振り返った時にはもういなくて、夏の残像だけがわたしの瞳に映ったまんま。鮮やかすぎた線香花火は、わたしの心にきらめきだけを残して消えていった。ぽたんと落ちた、真夏の夢。 美しい恋をした。美しい夏だった。 * 7月、恋人と夏休みをしようと決めていた。滞在先はゲストハウス。プライバシーという言葉をどこかに置いてきたような古民家の、階段下の小さな部屋だ。魔法使いが住んでいるような光の差さないその部屋

          エンドレスサマー

          "愛する"というスキル

          「ひとにはね、見えないスキルがあるんだよ」 まるでそれは魔法のことば、妖精がささやくように彼女は言う。 「履歴書に書けるようなスキルがないとしても、あなたは魅力的でひとを惹きつける。あなたの愛は、見えないスキルだよ」 なんだかその言葉をポッケに入れれば、どこまでも歩いていける気がする。そんな宝物を今日もひとつ、もらった。 * わたしにはほとんど職歴がない。正確に言えば、正社員の経験はゼロ。あとは短期バイトがいくつかで、3ヶ月以上続いたことがない。いわゆるフリーターを

          "愛する"というスキル

          冷房の効かない部屋の午後2時に

          夏の暑さがわたしの憂鬱に拍車をかける。冷房の効きが悪いこの部屋で、わたしはただ希死念慮と寝転がる。「逃げてちゃダメだよ」ひとは簡単にわたしの逃げ道を塞ぐ。それはきっとやさしさで。何度言い聞かせても、染みついた被害妄想はわたしを救わない。それでも隣にいてくれるのはこいつしかいないから、わたしは簡単に絶望する。 こないだ、部屋の中でシャボン玉をした。ふわふわ浮く透明なガラス玉は光を閉じ込めて、夢のように光る。いくつ作っても弾けて消えてしまうその儚さに囚われて、何度も何度もストロ

          冷房の効かない部屋の午後2時に

          死ぬな、生きろ、ただ愛せ

          「幸せになるのには、覚悟が必要だよ」酔った勢いで誇らしげに言うわたしが、二日酔いの頭にリフレイン。安いウイスキーを煽ったせいで、鼻の奥からまだ酒の匂いがする。頭を抱えながら水を飲み干し、自分に改めて問う。 「自分には、幸せになる覚悟あんのかよ」 小さくつぶやいたその声は、反響もせず孤独に吸い込まれてゆく。まだ若い、と言われる年をもうすぐ終える。28歳夏、わたしはまだ迷っている。 * わたしが今暮らすのは、古い大きなゲストハウス。恋人もひと月滞在することになり、なんだか

          死ぬな、生きろ、ただ愛せ

          たくさんのスキをいただけたこと、 フォローを外さずにいてくださったフォロワーさんがいること。その事実にほんとうに、こころから救われました。ハグして愛してるって生きててくれてありがとうって、叫びたい気持ち。ほんとうにありがとう。これからもゆるゆる更新しながら、愛を届けられたらな。

          たくさんのスキをいただけたこと、 フォローを外さずにいてくださったフォロワーさんがいること。その事実にほんとうに、こころから救われました。ハグして愛してるって生きててくれてありがとうって、叫びたい気持ち。ほんとうにありがとう。これからもゆるゆる更新しながら、愛を届けられたらな。

          ぼくらの夏、青い春

          いつだってどうしようもないぼくらは、ただ瞬間的な夏を生きている。人生は夏みたいだ。恋しくて、いざ来ると最悪で、終わってしまうのは悲しくて。振り返ればきらめく思い出たちが、心に焼き付いて離れない。痛みと隣り合わせの愛は、わたしをどうしようもなく狂わせる。そんな、夏。 * しばらく前から、ゲストハウスに滞在している。わたしが働く本屋さんのオーナーが経営する、大きな古民家だ。といっても、2〜3人しかおらず、なんだかシェアハウス感覚。虫だらけのこの家は、夏は暑く冬は寒い。けれど、

          ぼくらの夏、青い春

          いつも読んでくださってありがとうございます。愛と喜び、痛みを分け合ってる気持ちで、いつも愛おしい。ただ、申し訳ないことにフォロバが追いつけません。あなたを愛するためにフォローを外させてください。詳しくは画像を読んでくださるとうれしいです。生きててくれてありがとう。

          いつも読んでくださってありがとうございます。愛と喜び、痛みを分け合ってる気持ちで、いつも愛おしい。ただ、申し訳ないことにフォロバが追いつけません。あなたを愛するためにフォローを外させてください。詳しくは画像を読んでくださるとうれしいです。生きててくれてありがとう。

          "ぼくの好きな先生"

          あのひとは、いつもくしゃくしゃの顔で笑う。ぼさぼさの髪の毛に埃をいっぱい纏わせて、「今日はどしたん」と訛りの強い関西弁。白衣はクタクタになっていて、あちらこちらに汚れをつけている。 「先生、今日はね」からはじまる、二人の時間。広大なキャンパスという人の海で、ここだけはまるで陸の孤島。閉じ込められた空間で、わたしはただ泣きながら、怒りながら、今日のことを話しだす。口から流れる言葉を、まるで水を眺めるように穏やかに聞く先生。「それはアホやなあ」「それはえらいしんどかったなあ」ぽ

          "ぼくの好きな先生"

          世界一脆い、ダイアモンド

          「ねえ、大きくなったら何になりたい?」無邪気に問いかける姿は、いまだ少女のようで。そんな彼女にわたしは答える。「いつか、必ずエッセイストになるよ」誰にも言ってこなかった秘めた想いを、震えながら口に出した。彼女は静かに微笑んで、「やっぱりあなたは、どうしようもなく"あなた"だね」とつぶやく。 金木犀の香りが微かにする、大学のカフェテリア。テラスで交わした、二人にとってはじめての約束だった。 * 彼女は初めて会った時から、発光体のように光っていた。 わたしはその頃からド派

          世界一脆い、ダイアモンド

          孤独の話をしよう

          孤独の話をしよう。 目をつぶると、暗闇がわたしを支配する。穏やかな悲しみが全身を豊かに覆い尽くして、ただ溺れてゆく。目が慣れてくると、暗闇のなかで、微かに光る星屑がある。まぶたの裏でチカチカと。その光がとても希望だとは思えなくて、ただまぶしさだけが絶望を深くする。だれかの輝きが、わたしの影を色濃くするのだから。 毎日楽しい訳がないなんてこと、思春期の頃にはとっくに分かっていた。なのに、なぜわたしは今も生き続けているのだろう。この虚しさを永遠に抱えながら死んでゆくだけの"に

          孤独の話をしよう