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誠信書房の本を読む

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誠信書房の本について書かれた記事をまとめています。
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記事一覧

書籍内コラムを書かせていただきました!

書籍内コラムを書かせていただきました!

先日手元に届いたこの書籍

その中のコラムのひとつを執筆させていただきました。
こんなちゃんとした本に自分の文章が載るなんて初めての経験!
錚々たる執筆陣による、かなり重厚でしっかりとした学術本です。
心理系や社会福祉系、教育系などの大学の教科書にも採用される可能性があるんですよ〜。

執筆のお声がけをいただいたのは2023年に心理臨床学会で自主シンポジウムでの話題提供者をさせていただいた流れから

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【読書メモ】心理尺度はどのように構成されているのか?:『心理尺度構成の方法 基礎から実践まで』(小塩真司編)

【読書メモ】心理尺度はどのように構成されているのか?:『心理尺度構成の方法 基礎から実践まで』(小塩真司編)

『心理尺度構成の方法 基礎から実践まで』の第2章のタイトルは「心理尺度の形式」です。社会人大学院の心理統計に関する基礎的な授業で扱われる、教示文、尺度の種類、リッカート法、などが丁寧に説明されています。授業を受けるとその時はわかった気になるのですが、実際に尺度を作ろうとすると理解があやふやだったりします。本書は、授業の復習教材や副読本としても最適な一冊と言えそうです。以下では第2章のポイントをまと

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【読書メモ】信頼性について基礎から学び直せるテキスト:『心理尺度構成の方法 基礎から実践まで』(小塩真司編)

【読書メモ】信頼性について基礎から学び直せるテキスト:『心理尺度構成の方法 基礎から実践まで』(小塩真司編)

『心理尺度構成の方法 基礎から実践まで』の5章のタイトルは「心理尺度における信頼性」です。個人の印象ですが、心理統計についての基礎は、授業でも聞き、本でも何回も読んでいる内容でも頭に定着してくれません。その場では理解していると信じているのですが。信頼性について理解があやふやな方は、ぜひ本書の5章を読んでみてください!以下では簡単にまとめます。

古典的テスト理論と項目反応理論ある分野についてよくわ

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外発的動機づけは分けられる… & 共有

外発的動機づけは分けられる… & 共有

文献を探していて、
「時間ないけど、一応さらっと読んでおくか…」
と積んでおいた本がびっくりするほど新しい知識に満ちていたので共有します。

取り上げた内容は私の主観による抜粋でほんの一部です。目次ではありません。

書籍
河村茂雄 2022 子どもの認知能力を育成する 教師のためのソーシャル・スキル 誠信書房

序章
・認知能力、非認知能力の分かりやすい定義を「資質・能力」として示す
・自律性の

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#283:河合隼雄著『カウンセリングの実際問題』

#283:河合隼雄著『カウンセリングの実際問題』

 『カウンセリングの実際問題』(誠信書房, 1970年)を読んだ。私は本書を20代の頃に一度読んでおり、その本は手元にあるのだが、考えたいことがあってもう一度読んでみようと取り出したら、あらゆるページにびっしりと赤鉛筆で傍線が引いてあったので、改めて新しく本を買い直した。手元に届いた本は、2021年発行の第60刷とあり、本書が今も読み継がれているロングセラーであることをうかがい知ることができる。

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自分を救えるのは自分しかいない-片岡一竹著『疾風怒濤 精神分析入門』(誠信書房,2017年)書評

自分を救えるのは自分しかいない-片岡一竹著『疾風怒濤 精神分析入門』(誠信書房,2017年)書評

精神分析の面白いところは、人は誰もが狂気的で変態的な生き方をしている、というやや厭世的な前提からはじまることです。
「自分はどこかおかしい」といつも考えてしまうのは、人間の初期設定なのかもしれない。

精神分析には健康や健常者という概念が無いため、「苦しいのは精神が病んでいて不健康な生活をしているからだよ、一緒に治そうね。」とは言いません。
代わりに、苦しいのは「自分が納得できる〈生き方〉」を見つ

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影響力の武器[新版]:人を動かす七つの原理 ビジネス書レビュー

影響力の武器[新版]:人を動かす七つの原理 ビジネス書レビュー

はじめに

「影響力の武器[新版]:人を動かす七つの原理」は、ロバート・チャルディーニ博士による社会心理学の理論を基に、人の行動に影響を与えるための原理を明らかにした書籍です。これまでの6つの原理「返報性」「コミットメントと一貫性」「社会的証明」「好意」「権威」「希少性」に加え、新たに「承諾誘導戦略」を加えた7つ目の原理が紹介されています。

概要

本書では、日常生活におけるさまざまな場面で、私

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【影響力の武器】自分の意見が素通りする5つのトリガー【なぜ人は動かされてしまうのか?】

【影響力の武器】自分の意見が素通りする5つのトリガー【なぜ人は動かされてしまうのか?】

みなさんこんにちは!あなたをモチベートと申します。

最初に一つだけみなさんにお願いがあります。今回お伝えする言葉は盛りだくさんになるんですが、その中で「一つだけ」、たった「一つだけ」でいいのでみなさんの今後に役立つような内容を持って帰っていただきたいんです。あなたが重要だと思ったこと、胸に響いた言葉、その一つのエッセンスがあなた自身の人生を良くするカギになってくれるはずです。

ということで、今

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『終わりのない質問』を読む

『終わりのない質問』を読む

 引き続き、ボラスのインストール中だ。なるだけ臨床に接地したボラスを読む。2011年に誠信書房から出版された『終わりのない質問』を紐解く。原書は"The Infinite Question"で、2009年にラウトレッジ社から出ている。本書には、3名の被分析者のセッション記録が逐語的に載せられており、そこに対するボラスの後知恵が付されている。分析家の頭のなかを垣間見ることができるという点でも興味深い

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ゴフマン『行為と演技』についてのメモ

ゴフマン『行為と演技』についてのメモ

現在近くにあるのが誠信書房版のゴフマン『行為と演技』(石黒毅訳)なのだが、最初に読んでいた頃から気になっていたのは、ゴフマンは相互行為の記述において「アメリカの中流階層」というように範囲を限定して分析していることである。これはゴフマンの博士研究が、シェットランド島のフィールドワークだったのと関係があるだろう。つまり地域の集団を分析単位としていて、その特徴の範囲と説明の限界も織り込まれているというこ

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医療職・福祉職・心理職におすすめ!性の多様性の本 - 司書の本棚

医療職・福祉職・心理職におすすめ!性の多様性の本 - 司書の本棚

こんにちは。
respectrum(リスペクトラム)の小川奈津己(おがわなつき)です。

「司書の本棚」では、多様な性に関する本をご紹介していきます。
今回のテーマは医療・福祉・心理に関する本です。

吉田絵理子ほか(2022)『医療者のためのLGBTQ講座』南山堂

葛西真記子(2023)『心理支援者のためのLGBTQ+ハンドブック 気づき・知識・スキルを得るために』誠信書房

佐々木掌子(20

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アンナ・フロイト,「自我と防衛」,誠信書房 要約

アンナ・フロイト,「自我と防衛」,誠信書房 要約

<アンナ・フロイトについて>
 精神分析家。父は精神分析の創始者のジグモント・フロイト。1895年にウィーンに生まれ、1982年ロンドンで没する。幼児の防衛機制についての研究で名高い。
<要約>
 児童の精神分析、臨床研究事例をもとに、防衛機制の働きが超自我の形成にどうかかわっているのかを明らかにしている。
 通常、防衛機制はエス(無意識)の衝動的欲求に対する自我の不安から発動される。しかしこのよ

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『心理療法家になる 内界の旅への実践ガイド』を読んで

『心理療法家になる 内界の旅への実践ガイド』を読んで

臨床心理士の大先輩である山田勝先生からご恵贈いただいた本を読みました。翻訳がスムーズであるからでしょうか。著者コゾリーノ氏に語りかけられているように感じながら読み進めることができました。

臨床現場に腰を据え続ける心理療法家になるためには、自分自身の内界を率直に見つめることが重要であると本書の至る所で記されています。これはコゾリーノ氏に言われるまでもなく知識としては理解しているのですが、その実践は

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