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【読書記録】『秘密』

【読書記録】『秘密』

『秘密』
谷崎潤一郎著

主人公・「私」は、日常生活に飽きて、近くのお寺の離れに住み着く。そして、女装して、遊女のような装いで、街を闊歩し、周りから受ける熱い眼差しに満足する。
そんなある日、自分よりも遥かに妖艶な女性に遭遇する。そして、その彼女は過去自分が振った女性だったことを思い出すと、彼女も、「私」のことを覚えていて、密会の約束をする。

文章が、非常に美しいのですが、内容はかなり、変態的で

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【読書ノート】『パアテル・セルギウス』

【読書ノート】『パアテル・セルギウス』

『パアテル・セルギウス』
トルストイ著

トルストイの短編小説で、森鴎外が訳したもの。

ステパン侯爵は、将来を嘱望されるイケメンの仕官で、努力家として常にトップを目指していた。しかし、ある事件をきっかけに世捨て人となり、パアテル・ゼルギウス(ゼルギウス神父)として出家する。出家後も賞賛を受けるが、その度に欲望に悩まされ、山に篭って修行を始める。

ある日、美しい女性が彼を誘惑し、ゼルギウスは誘惑

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【読書ノート】『愛の適量』(『スモールワールズ』より)

【読書ノート】『愛の適量』(『スモールワールズ』より)

『愛の適量』(『スモールワールズ』より)
一穂ミチ著

主人公はバツイチの高校教師(慎悟)。元々情熱的な教師だった慎悟。文字通り、全てを捧げて、生徒たちに愛情を注いでいたのだった。ところが、ある事件をきっかけに、自分が注いでいた愛情は、むしろ、生徒にとってはありがた迷惑なものでしかなかったということが、わかり、離婚もして、幼い娘とも離れ離れに暮らしていた。

時が過ぎて、娘(佳澄)が、息子のような

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【読書ノート】『レインツリーの国』

【読書ノート】『レインツリーの国』

『レインツリーの国』
有川浩著

ネットで出会った女性(ひとみ)は、聴覚障害者だった。

聴覚障害の女性が、恋愛になかなか積極的になれないなか、「俺」(伸)はどんどんひとみに惹かれていく。聴覚障害という一つのコンプレックスを抱えている女性が、どのように、恋愛する決意を固めるか?

物語の主題は何か?
自分は「普通」だと思いながらも、「普通」という漠然とした概念から自分は外れているという思いを持って

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【読書ノート】『星の隨に』(『夜に星を放つ』より)

【読書ノート】『星の隨に』(『夜に星を放つ』より)

『星の隨に』(『夜に星を放つ』より)
窪美澄著

主人公(僕)は、小学4年生。中学受験のために塾に通う。
弟・海が、生まれて、僕は楽しい気持ちでいた。実は2年前から僕には、新しい母親・渚がいる。本当の母親は離婚してしまったため、離れて暮らしている。

キーワードを挙げてみる。
①ベガ
希望、純粋さを象徴する。また、人間の探究心や知識欲を喚起する象徴としても捉えられる。

②デネブ
高貴さや輝き、力

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【読書ノート】『使者の心得』(『ツナグ』より)

【読書ノート】『使者の心得』(『ツナグ』より)

『使者の心得』(『ツナグ』より)
辻村深月著

5篇からなる短編集の最終章。

それまでの4篇をツナグ(使者)の立場から見る。

また、主人公(歩美)の生い立ちやツナグ(使者)とは何なのか、語られる。

物語の主題は何か?
ひととの出逢いというのは、奇跡的なことなのだなあと改めて思わされた。人生で、何人ものひとに出会うのだけど、おそらく、すべての出会いは、必然なのではないか?その希少な出逢いに気づ

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【読書ノート】『月の満ち欠け』

【読書ノート】『月の満ち欠け』

『月の満ち欠け』
佐藤正午著

話題になっていた本を、ようやく、読むことができた。評判通り美しい物語だった。

『この世に誕生した最初の男女に、二種類の死に方を選ばせたの。ひとつは樹木のように、死んで種子を残す、自分は死んでも、子孫を残す道。もうひとつは、月のように、死んでも何回も生まれ変わる道。そういう伝説がある。』

正木瑠璃という名前の女性が、三角哲彦という恋人(不倫相手)にもう一度会いたい

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【読書ノート】『冬空のクレーン』

【読書ノート】『冬空のクレーン』

『冬空のクレーン』(『さいはての彼女』より)
原田マハ著

日本最大手の都市開発会社で日本最大と言われる開発プロジェクトを任されて日々奮闘ている主人公・陳野志保。周りからは、閃光の眼差しで崇められ、自らも、大会社の看板を背負って立っている自負もある。そんなある日、期待していた後輩・横川君との間でトラブルが起こり、強く叱責したところ、横川君は、出社拒否どころか、名誉毀損で会社を訴訟することをちらつか

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【読書ノート】『偽声』

【読書ノート】『偽声』

『偽声』
藤井清美著

主人公(私:渚)は、声優を目指して、養成所に何年も通い、芽が出ないでいる。同期の友人たちは、夢を諦めてどんどん辞めて行く。

名越先生という大御所の講師から演技の指導を受けて、悩んでいた時、ふと自分の母親を思い出した。母親は渚が中学生の時、勤務先の上司と不倫をして、家族を捨てた。母親の放つ言葉は、場面ごとにまったく異なる。やっていることはめちゃくちゃなのに、ストレートに響い

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【読書ノート】『路上』(『檸檬』より)

【読書ノート】『路上』(『檸檬』より)

『路上』(『檸檬』より)
梶井基次郎著

主人公は、いつもと違う道を使ってみた時、その道が、いつもの道に繋がっていることを発見して喜んだのだった。新しい道が、新しい選択肢になって行く。

そして、もう少し、冒険してみたくなって、ひとがあまり通らない、少し危険な道を行ってみた。
そして、案の定、危険な目に遭う。自分が無事で、冒険者の仲間入りができたと思うのだけど、そこには、自分の実績を認めてくれる観

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【読書ノート】『元迷子係りの黒目』

【読書ノート】『元迷子係りの黒目』

『元迷子係りの黒目』(『約束された移動』より)
小川洋子著

”ママの大叔父さんのお嫁さんの弟が養子に行った先の末の妹”と呼ばれていた人が裏に住んでいた。

この呼び名を言い間違えると小さなペナルティを科せられる。

主人公(私)は、彼女のことを密かに、"末の妹"となづけていた。

彼女(末の妹)は、斜視であった。
結婚し、流産した後、離婚して、デパートで働く。

①斜視
目の位置や視点が通常の状

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【読書ノート】『十三月怪談』(『愛の夢とか』

【読書ノート】『十三月怪談』(『愛の夢とか』

『十三月怪談』(『愛の夢とか』
川上未映子著

何かを失うというテーマの短編集なのだけど、最後の物語は、自分の生命を失うということ。

時子は、何となく体調がすぐれなかったので、駅前のクリニックに行った。血液検査の結果、大きな病院で、詳しく検査が必要な状況であることがわかった。

こういう時、時子はいつも、最悪のケースを想定する。死んだら自分はどこにいるのか?自分が死んだら夫・潤一は、どうなるのだ

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【読書ノート】『ある閉ざされた雪の山荘で』

【読書ノート】『ある閉ざされた雪の山荘で』

『ある閉ざされた雪の山荘で』
東野圭吾著

今年は、映画もあって、けっこう話題になった作品なので、積読状態だったのだけど、ようやく読むことができた。

7人の俳優が、最終オーディションとして、雪に閉ざされた山荘に集められる。山荘で起こる事件を解決する課題が与えられている。

密室の中、次々と、メンバーが姿を消していく。アガサクリスティーの『そして、誰もいなくなった』を思い起こさせられた。

俳優と

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【読書ノート】『水曜日が消えた』

【読書ノート】『水曜日が消えた』

『水曜日が消えた』
本田壱成著

一つの身体に宿った“七人の僕”。曜日ごとに切り替わる人格のうち火曜日を担当するのが、「僕」だ。
ある朝目覚めると「僕」は、水曜日にいた。

以下の要点をまとめる。

ひとは、与えられている時間の中で自分のアイデンティティを認識する。火曜日の「僕」にとって、あくる日は、翌週の火曜日なのであって、「僕」にとって、他の曜日は、認識できない状態だった。
偶然にも水曜日を体

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