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2024年10月の記事一覧

音声として立ち現れるもの、文字として立ち現れるもの

音声として立ち現れるもの、文字として立ち現れるもの

 戻れない、もうあそこには戻れない、あの状態を取り戻すことはできないだろう。そんなふうに思うことが多くなりました。

 年を取り、複数の持病をかかえているからかもしれません。

 今頭にあるのは歌です。痛みや苦しみや悲しさをこらえるときに、知らず知らずのうちに頭のなかで歌や旋律の断片が鳴っていることがあります。

 勝手に鳴るのです。流れているという感じ。

 有り難いものです。

 歌の場合だと

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あなたとの出会い

あなたとの出会い

 今回は、あなたと初めて会ったころのことを書きます。

*「二つの「あなた」」
*「あなたは近くて遠い、まぼろし」
*「「I love you./only you」+「 I miss you./without you」」

 以上、一連の記事の前提となる「あなた」という言葉の辞書での語義とイメージについてまとめてみます。

・「あなた」:彼方・かなた・あなた。「あなた」=you。
・「あなた」:貴

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壊れる、崩れる(文字とイメージ・06)

壊れる、崩れる(文字とイメージ・06)

「こわれる、くずれる(文字とイメージ・05)」の続きです。

コワレル、クズレル
 壊れる、こわれる、コワレル。崩れる、くずれる。クズレル。

 こわれる。コワレル。kowareru――「a」と「k」のせいでしょうか、どこかかん高い。

 くずれる。クズレル。kuzureru――「u」が二つで「z」があるせいでしょうか、どこか低い響きが……。

 イメージは個人的なものです。なかなか人には通じませ

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振れる、触れる、狂れる(文字とイメージ・04)

振れる、触れる、狂れる(文字とイメージ・04)

 前回の「pen、pending、pendulum(文字とイメージ・03)」をまとめます。

 文字を書くとき、人は宙吊り状態に置かれる。文字を書くさいに用いる指も宙に浮く。ぶらぶら、ゆらゆら、ふらふら、という具合に。そうしたイメージを、私は、「pen・ペン、pending・ペンディング、pendulum・振り子」という言葉の文字に感じる。

 以上です。今回は、「ふれる」という言葉を「振れる、狂

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はかるとわかる

はかるとわかる

「わけるとわかる」の続きです。

     *

「わける」と「わかる」が似ているように、「はかる」と「わかる」も似ています。見た目というか字面が似ているのです。

 わける、わかる
 はかる、わかる

 ただし、「わける」と「わかる」はイメージも似ている気がしますが、「はかる」と「わかる」のペアのほうはイメージは似ていないと感じます。

 とはいえ、イメージや似ているは個人的な印象ですから、人そ

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「I love you./only you」+「 I miss you./without you」

「I love you./only you」+「 I miss you./without you」

 今回は以下の記事の続きです。

*「二つの「あなた」」
*「あなたは近くて遠い、まぼろし」

     *

 私の大好きな「あなた」という言葉には、大雑把に言って二つの表記と語義があります。

・「あなた」:彼方・かなた・あなた。「あなた」=you。
・「あなた」:貴方・あなた。「あなた」=over there。

 図式的に言うと、上のようにまとめることができます。

・近くにいる「あなた」

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「物に立たれて」(「物に立たれて」を読む・01)

「物に立たれて」(「物に立たれて」を読む・01)

 ようやく涼しくなってきたので、古井由吉の小説の感想文を書きたいと思います。体調を考慮して、少しずつ作業を進めていきます。具体的には、一回の記事でのテーマを絞っていくつもりです。

 古井由吉の小説については、このアカウントを開設した初期のころには、集中的に記事を書いていました。

 古井由吉の作品の感想文を連載として投稿するのは久しぶりです。

     *

 引用するさいには、古井由吉作の『

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言葉の中に言葉がある(言葉の中の言葉・01)

言葉の中に言葉がある(言葉の中の言葉・01)

 今回の記事の「Ⅰ.  短いけど長いもの」は再掲です。実は再掲の再掲なのです。複製の複製であり、引用の引用とも言えます。

 現在書いている記事の原点になる内容なので、あらためて再掲します。もとは十年以上も前にブログに投稿した記事に加筆したものです。

Ⅰ. 短いけど長いもの
 たしか高校二年生になった春でした。

 新学期が始まって、新任の英語教師が教壇に立ちました。教師も生徒たちも、おたがいに

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欠ける、書ける、欠ける

欠ける、書ける、欠ける


Ⅰ モーリス・ブランショの英訳の文章
 私のX(旧ツイッター)のアカウントのタイムラインには、機械というかシステムの選んだと思われるポスト(旧ツイート)が流れてきます。

 これを私は歓迎しています。なかなかスリリングな出会いがあるからです。

 たとえば、次のポストは、note で書いている記事の内容に関連してくるので記事に載せたことがあります。

 モーリス・ブランショのどの著作(原著はフラ

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二つの「あなた」

二つの「あなた」


*二つの「あなた」
「あなた」を辞書で引くと、「彼方」と「貴方」の二つの「あなた」があります。大きな国語辞典だと、どうして二通りの表記があるのかの経緯が説明されているでしょう。

 ここでは簡単に、「あなた=over there」と「あなた=you」の二つがあると考えてみます。

「はるか遠く」の意味の「彼方・あなた・かなた」と「大切な」「貴方・あなた」というふうに意味をざっくりと取りましょう。

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視覚芸術としての「文字で書かれた作品」(文字について・05)

視覚芸術としての「文字で書かれた作品」(文字について・05)

 前回の「続・小説にあって物語にはないもの(文字について・04)」では、マルセル・プルースト作『失われた時を求めて』の井上究一郎訳を例に取り、文学の長い歴史においては新しいジャンルである小説が極端な形で現れているさまを見ました。

 とてつもなく長いだけでなく入り組んでもいるプルーストの文章は、作品が活字を組んで印刷されることを前提として、作者が何度も原稿をいじりながら書かれたものです。

 もと

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こわれる・くずれる(文字とイメージ・05)

こわれる・くずれる(文字とイメージ・05)

 体を壊す、体調を崩す。

 昨夜は寝入る前に、この二つのフレーズを転がしていました。

 こわす、壊す、壊れる、くずす、崩す、崩れる
 破壊、崩壊、崩壊感覚、環境破壊

 こういうのは寝入り際に転がすものではないと思い、他の言葉転がしに移りました。

 目覚めた頭で、あらためて転がしてみます。

見える「壊れる」、見えない「壊れる」
 こわれる。こわす。

 見えるものだけでなく、目でとらえられ

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「同じ」に憧れる「似ている」

「同じ」に憧れる「似ている」


 今回は「文字を書いてもらう」と「複製としての文字」という記事の続きですが、その二つを読まなくてもいいように、以下にまとめます。

*二つの記事のまとめ
 まず、「文字を書いてもらう」でお話ししたことを箇条書きにまとめてみましょう。

・機械は「同じかどうか」を基本とする「はかる」世界にいる複製である。だから、杓子定規に作動する。
・人は「似ている」を基本とする印象の世界で生きている。だから、適

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はからずもはかられる、はからずにはかる

はからずもはかられる、はからずにはかる

 前回の「はかるとわかる」で、「イメージや似ているは個人的な印象ですから、人それぞれでしょう。」と書きました。

 今回はその「似ている」という感覚についての私の印象をお話しします。

「似ている」と「同じ」は似ている
 私の印象では、「似ている」と「同じ」は似ています。激似とか酷似とまでは言いませんが、よく似ています。

 よく似ているので混同します。つい同一視してしまうのです。

 自分は「似

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