2024年9月の記事一覧
小説にあって物語にはないもの(文字について・03)
小説にあって物語にはないものがあります。今回は、誰が見ても明らかなもの、誰の目にでも付くものを挙げてみます。
空白と黒いページです。
読んでいて不意に現れる白い部分、真っ黒なページですから、目に付くはずです。
こうしたものは、物語にはありませんでした。あり得なかったというべきでしょう。
ここで言う物語とは、もとが口頭で語られ、長い間口頭で伝えられていたものです。口承文学とも呼ばれ
続・小説にあって物語にはないもの(文字について・04)
今回は「小説にあって物語にはないもの・03」の続きです。前回は、小説にあって物語にはない、空白とまっくろ黒なページについてお話ししました。
「小説にあって物語にはないもの」とは、たとえば音読すると伝わりにくかったり伝わらないものだとも言えます。小説は視覚芸術だと考える私にとって、小説では目で鑑賞できる部分にはできるだけ目を注いでやりたいという気持ちが強くあるのです。
ただし、小説の朗読やオ
スクリーン越しに(スクリーン・04)
「わける、へだてる、かくす(スクリーン・03)」で予告したように、今回は「ついたて・衝立」の出てくる小説を取りあげます。
昨年十一月に亡くなった山田太一さんの小説『飛ぶ夢をしばらく見ない』です。今回の投稿は、タイトルを改め、若干の加筆をしての再掲載です。
「スクリーン」という連載で『飛ぶ夢をしばらく見ない』を取りあげるのは、そこに出てくる「衝立」(ついたて)が、「さえぎる、うつす、とおす」と