箱男が『自分の小さな「箱」から脱出する方法』/アービンジャー・インスティチュート
こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です!
むかし読んだ本のなかに安部公房の『箱男』という小説がありました。主人公が段ボール箱をかぶって街をさまようという奇妙な設定で、社会からの孤立や自己欺瞞のテーマを描いた作品だったように思います。
小説には主人公が箱を脱ぎ捨てる場面はあるものの、孤立や自己欺瞞から脱却するための方法までは描かれていませんでしたね。
ですが、その解決策を教えてくれるのが『自分の小さな「箱」から脱出する方法』です。
『自分の小さな「箱」から脱出する方法』は、人間関係の悩みを抱える人々に向けて、自己欺瞞のメカニズムを解き明かし、そこから脱却する方法を提示する自己啓発書です。
なぜかいつも同じようなパターンで人間関係がこじれてしまう
相手の言動にイライラしたり、傷ついたりすることが多い
コミュニケーションがうまくいかず、孤独感を感じてしまう
もし、このどれかひとつにでも当てはまるとしたら、この本は絶対に読んでおいた方がいいです! 社会的関係性という段ボール箱から抜け出すためのヒントが詰まっています。
そして、これらの悩みは、実はあなた自身の心の奥底に潜む「自己欺瞞(ざまん)」のためであると、著者は問いかけます。
ちなみに著者はアメリカ・ユタ州に拠点を置く研究所です。
内容
物語形式で、主人公のトムが職場での人間関係に悩み、あるセミナーに参加するところから始まります。セミナーを通じて、トムは自分自身の内面と向き合い、人間関係を改善するための考え方や行動を学んでいきます。
自己欺瞞(ざまん)のメカニズム 「箱」に入る
私たちは、誰しも「箱」と呼ばれる自己欺瞞の中に閉じこもってしまうことがあります。「箱」とは、自分の価値観や信念に反する行動、つまり「自分への裏切り」から生じる心の状態です。例えば、約束を破ったり、嘘をついたり、誰かを傷つけたりといった行為がこれに当たります。『箱男』の主人公が、ダンボール箱を頭からかぶった動機も、匿名性の確保のためであり、つまるところ他者からの評価を過剰に恐れていたにすぎません。
「箱」に入った人は、自分の裏切りを認めたくないため、様々な方法で自己正当化しようとします。他人の欠点を見つけ出して非難したり、自分の行為を正当化する理由を探したりするのです。そして、自己憐憫、優越感、無関心といった態度で周囲の人々を遠ざけ、ますます「箱」の中に閉じこもってしまうのです。
「箱」の中の5つの態度
箱のなかで人間は5つの態度を取るとされています。
非難
自分を守るために、他人の欠点を見つけ出し、非難する
「あの人が悪い」「あいつのせいだ」と責任転嫁する
正当化
自分の行動を正当化するための言い訳を探す
「仕方がなかった」「そうするしかなかった」と自分を納得させる
自己憐憫
自分を被害者のように思い込み、同情を引こうとする
「私はかわいそう」「どうして私だけこんな目に遭うのか」と嘆く
優越感
他人を見下し、優越感に浸ることで自己肯定感を高めようとする
「私はあの人より優れている」「あいつはダメだ」と見下す
無関心
問題から目を背け、何も感じないように振る舞う
「どうでもいい」「関係ない」と無関心を装う
「箱」の存在
人は誰でも「箱」と呼ばれる自己欺瞞の中に閉じこもる傾向があります
この「箱」は、自分を守るためのものですが、同時に人間関係を悪化させる原因にもなります
「箱」に入る原因
自分自身への裏切り、つまり自分の価値観や信念に反する行動をとること
裏切りを正当化するために、他人の欠点を見つけ、攻撃するようになる
「箱」から出る方法
自己認識
まずは、自分自身が「箱」に入っていることに気づくことが重要
自分の行動や感情を客観的に観察し、上記の5つの態度に当てはまるものがないか振り返ることの必要性
自己受容
自分への裏切りを認め、素直に謝罪する勇気を持つこと
「ごめんなさい」と言えるようになることで、自己欺瞞から抜け出す第一歩を踏み出すこと
他者への貢献
他人への感謝の気持ちを忘れず、貢献することを意識する
自分以外の誰かのために何かをすることで、自己中心的な「箱」から抜け出すことができる
まとめ
この本は、自己欺瞞のメカニズムを理解し、そこから脱却するための具体的なステップを提示しています。
この本を読むことで、自分自身と向き合い、人間関係を改善するためのヒントを得ることができると思います。
感想
なんというか……、
心のレントゲンでも撮られたような気分になりました。
日頃の人間関係の悩みやモヤモヤの原因が、自分自身の「箱」に入ってしまうことにあると気づかされたからです。
特に印象的だったのは「箱」に入った時に示す5つの態度です。つい他人を責めてしまう癖は人間だれにでもあると思うのですが、それは「非難」という態度に当てはまることがわかりました。
また、何かうまくいかないことがあると「自分は運が悪い」と嘆くことも多かったのですが、これは「自己憐憫」に該当すると気づきました。
これらの態度は、自分を守るための防御反応であると同時に、人間関係を悪化させる原因にもなっていることを痛感しました。
そして、自分自身がいかに「箱」の中に閉じこもりがちであるかという事実に、ショックを受けながらも、同時に、解決への糸口を見つけたような希望も感じました。
本書で紹介されている「箱」から脱出する方法、つまり自己認識、自己受容、他者への貢献という3つのステップは、非常にシンプルでありながら、実践するのは容易ではありません。
しかし、これらのステップを意識することで、少しずつ自分の内面と向き合い、人間関係を改善していくことができると感じました。
特に「自己受容」の重要性は、私にとって大きな気づきでした。完璧主義になってしまいがちな日本人ですが、それは自分の欠点や失敗を認めたくないという気持ちが強く、それが「箱」に入ってしまう原因の一つになっていたと思います。
しかし、本書を読んで、完璧な人間はいないこと、そして、自分の弱さを受け入れることが、成長への第一歩であることを学びました。
また「他者への貢献」という考え方も、新鮮な視点でした。皆、つい自分のことばかり考えてしまいがちですが、他人のために何かをすることで、自己中心的な「箱」から抜け出すことができるという考え方は、目から鱗でした。
本書は、決して楽な内容ではありません。自分の内面と向き合うことは、時に痛みを伴うものです。しかし、その痛みを乗り越えることで、より良い人間関係を築き、自分自身を成長させることができると信じています。
この本は、人間関係に悩む全ての人におすすめしたい一冊です。自分自身の「箱」に気づき、そこから脱出するための具体的な方法を学ぶことができます。
そして、より幸せな人生を送るためのヒントが得られるはずです。今すぐ、この本を手に取って、新しい自分への一歩を踏み出してみませんか?
あなたには心の箱をこじあける勇気がありますか?
この本を手に取って新たな扉を開けてみませんか?
【編集後記】
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