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語学エッセイ集

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ことばについてのエッセイ集。外国語学習のこと、気になる言葉、好きな言葉をまとめました。また、「激論」したことをこのマガジンに含めています。
文章の書き方やテーマの見つけ方をまとめました。また、英語以外の外国語の話題も取り上げています。哲学…
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#読書感想文

伝わる文章の作法

伝わる文章の作法

 岩淵悦太郎(編著)「悪文」(角川文庫)を読みました。この本の副題は「伝わる文章の作法」。
 言われてみれば、ごく当たり前のことが多かったのですが、自分で文章を書くときに気をつけたいポイントが凝縮されています。

 この記事では「悪文」に掲載されている例をもとに「なぜ悪文なのか?」を考えてみます。
 どこがおかしいのか(あるいは曖昧なのか)、いっしょに考えてみてください。

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襲撃 | スタインベック

襲撃 | スタインベック


(1) スタインベック「襲撃」について

 スタインベックの短編小説「襲撃」を読みました。この短編小説「襲撃」(The Raid)は、Peguin Classics の John Steinbeck, The Long Valleyの中に収められています。また、「襲撃」の日本語訳は、大久保康雄(訳)「スタインベック短編集」として新潮文庫に収められています。

 「襲撃」はPenguin版では 6

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読書 | 胡蝶、カリフォルニアに舞う

読書 | 胡蝶、カリフォルニアに舞う

 多和田葉子「穴あきエフの初恋祭り」(文春文庫)。この本には、表題作「穴あきエフの初恋祭り」をはじめ、7つの短編小説が収められています。
 
 いちばん最初に収められている「胡蝶、カリフォルニアに舞う」しかまだ読んでいないのですが、とても面白かったです。
 
 「胡蝶、カリフォルニアに舞う」を私は、普通に現実的なお話だと思って読み進めていったのですが、だんだん「何かがおかしい」と思う気持ちが強くな

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「透明人間」の非標準英語について

「透明人間」の非標準英語について

 何度か記事に書いていますが、現在、ラルフ・エリソンの「透明人間」を読んでいます。
 この本はアメリカ文学史に残る不朽の名著ですが、非標準的な英語がかなり会話に使われていて慣れないと読むのに手こずります。そうかと思えば、標準な英語で書かれている箇所には、難解な言葉が使われていて英語で読むのはけっこう大変です。

 この記事では、非標準的な英語で書かれている箇所と、標準的な英語で書かれている箇所を引

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読書📖井上靖 | 氷壁

読書📖井上靖 | 氷壁

  井上靖「氷壁」(新潮社)を読みました。山岳小説でもあり、不倫小説でもあり、ミステリー小説でもあり、既存のジャンル分けでは収まりません。

 物語は小坂と魚津という男性と既婚者・美那子との恋愛感情のもつれを中心に展開していきます。
 小坂と魚津は登山という共通の趣味があり親友ですが、互いに美那子には恋愛感情を持っています。端的に言えば、親友でありつつ、恋愛に関してはライバル関係にありました。

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読書 | 長沢和俊(著) | 張騫とシルク-ロード

読書 | 長沢和俊(著) | 張騫とシルク-ロード

 長沢和俊(著)「張騫とシルク-ロード」[新訂版] (清水書院)を読みました。
 先日読んだ井上靖「楼蘭」を読んで、シルクロードに関心を持ったのが、この本を読んでみようと思ったきっかけになりました。

 「張騫とシルク-ロード」のメインは、シルクロード。私は高校の頃に、世界史と日本史を両方学びました。受験では日本史を選択したので、世界史の記憶はほとんど失われています。しかしながら、この本を読んでい

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読書 | 経済成長主義への訣別

読書 | 経済成長主義への訣別

 佐伯啓思(著)「経済成長主義への訣別」(新潮選書)を読んで思ったことを書きます。

 この本の中で、佐伯先生は「当たり前のことばかり書いて恥ずかしいくらいだ」という趣旨のことをおっしゃっています。

 多くの経済学者は、GDPが何%伸びるのかという指標をもって、国の豊かさの尺度としている場合が多いですね。しかしながら、経済成長率というのは、そもそも怪しい尺度です。

 佐伯先生は分かりやすい例を

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読書感想文📖「雪のひとひら」と「日本的霊性」

読書感想文📖「雪のひとひら」と「日本的霊性」

 先日、ボール・ギャリコ(作)「雪のひとひら」の読書感想文を書きました。
 この物語は、空高いところで生まれた「雪のひとひら」という女性が、地上に降り、「水のしずく」という男性と1つになり、いつの間にか別れて、再び上空にのぼっていき消えるという物語です。

 私が「雪のひとひら」を読み終えたとき、なぜかとても仏教的なものを感じました。ギャリコの作品自体、読むのが初めてだったのに「懐かしい」と思いま

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読書 | 補陀落渡海記

読書 | 補陀落渡海記

 井上靖の短編小説「補陀落渡海記」(ふだらくとかいき)を久しぶりに読みました。この小説は新潮文庫「桜蘭」に収められています。年末に「銀河鉄道の夜」「フォークナー短編集」と一緒に購入しました。

 「補陀落渡海記」をはじめて読んだのは2013年3月1日から3月2日でした。
日本語ではなく、オックスフォード版「日本文学短編集」の「Passage to Fudaraku」(James T. Araki

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私の英語愛読書10冊

私の英語愛読書10冊

 noteには、読書感想文をけっこう書いています。
 今回は感想文ではなく、「私の英語愛読書」を10冊挙げてみたいと思います。ここに挙げる本は、個別に何度か記事にしていますが。。。
 たぶん、今までに300冊以上の英語の本を読んでいますが、繰り返し何度も読んでいる本は多くありません。

 この記事では、「黙読」および「音読破」(最初から最後のページまで音読したもの)した本に限定して紹介します。

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言語変化という問題

言語変化という問題


コセリウ(著) [ 田中克彦(訳) ]
「言語変化という問題」(岩波文庫)。
この本は10年くらい前に購入して一度読んだことがありました。

最近、AIの大規模言語モデルとチョムスキーの生成文法の文献を読んでいます。その中で、ことばの変化という問題は避けて通れないと思い、コセリウの「言語変化という問題」を再読してみました。

以前に読んだときよりも、内容を理解できました。
言語変化という問題は、

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