文体ってなんだろう?(言語学的アプローチ)
文体論とは何か?
「文は人なり」という格言がありますね。文章を読むと、それを書いた人の「人となり」を感じるものです。
「文体」という言葉があります。文章を読めば、「○○さんっぽいな」と感じたりします。
先日、寝る前にムーナンの「言語学とは何か」という本を少し再読しました。
「文体論」の章だけを拾い読みしたのですが、ムーナンは、文体論は言語学の中で最も研究の遅れている分野だと言っています。
だいぶ前に書かれた本なので、最近の言語学における文体研究はどうなのだろう?、と気になって、いくつか論文を読んだり、文献を検索してみました。
次のような論文・文献(↓)がありました。
論文
https://medium.com/@davidxu90/relative-frequencies-of-words-in-the-english-language-94bf864a516c
前掲論文(↑)より引用
Conclusion : it seems quite likely the distribution of English words is random with respect to neither length nor word type (part-of-speech), and this is very likely because the English language (and probably other lnguages as well) is optimized for conveying a large amount of information in a relatively small number of words.
(拙訳)
結論は以下の通りである。
英単語は、(綴りの)長さや品詞に関係なく無作為に分布するものである蓋然性が高いように思える。なぜなら、(他の言語も同様なのだろうが)英語という言語は、比較的少ない単語で大量の情報を伝えるために最適化されている蓋然性が極めて高いからである。
書籍
英語のスタイル - 研究社 https://www.kenkyusha.co.jp/book/b10090829.html
はじめての英語文体論 - 株式会社大修館書店 https://www.taishukan.co.jp/book/b440318.html
現在、文体論は盛んに研究されているようですが、その多くはつまるところ、「コーパス」を使った数値的な分析(使われる単語やフレーズの頻度分布など)、あるいは、作家個人の作品の文学的な鑑賞・研究が多いようです。
しかしながら、文体論に関する論文を読むと、当たり前と言えば当たり前の結果であることが多いですし、なるほどなとは思っても、「文体」の核心に触れているという実感はもてませんでした。
文体とは極めて曖昧な概念ではありますが、それでも私は、やはり「文体」というものは存在すると思っています。
文体とは一体なんなのでしょう?
ムーナンは次のようなことを指摘しています。
①偏差が文体である。
②あらゆる偏差が文体だというわけではない。
③彫琢が文体である。
④あらゆる彫琢が文体だというわけではない。
いっけん矛盾する言葉が対になっていますが、私の理解ではこういうことです。2つにまとめます。
1つ目。
文体は、平均的(標準的)な文章からその人の書いた文章がどれくらいかけ離れているかによって定義されるものである。しかしながら、その「ズレているもの」がすべて文体であるとは言えない。
2つ目。
文体とは、彫琢(ちょうたく)である。言い換えると、著者が文章を書く過程において、「推敲した部分」が文体だと考えられる。ただし、推敲を施した部分がすべて文体であるわけではない。
いわんとするところは理解できるのですが、ビシッとした定義ではないですよね?
ではなぜ、文体は、ストリクトに定義しにくいのでしょう?
ムーナンによれば、文体論とは美学的な分析を要求するものだからです。そして、結局のところ、言語学における文体論は修辞学に近づいていくのではないかと指摘しています。修辞学とはレトリックのことですね。
だったら、名称はともかく、文体について考えるならば、「修辞学」を学べばいいではないか?、と私は思ってしまうのですが、文体論は修辞学とも違うようです。
文体論というものは、否定神学的にしか定義ができないのかもしれません。
こんな感じでしょうか?
否定神学的な文体論の定義
☆文体論は修辞学ではない。
☆文体論は文学研究ではない。
☆文体論は哲学ではない。
☆文体論は数値で表せるものではない。
☆文体論はAIには解明できない。
☆文体論には結論がない。
…etc…etc
なんのはなしですか?
#英語がすき
#読書感想文
#ムーナン
#言語学とは何か
#大修館書店
#言語学
#文体論
#文は人なり
#否定神学
#なんのはなしですか
ここから先は
語学エッセイ集
ことばについてのエッセイ集。外国語学習のこと、気になる言葉、好きな言葉をまとめました。また、「激論」したことをこのマガジンに含めています。
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
大人の英語講座
文法をイメージでとらえること、文学の英語など。大人の学び直しの英語教科書。 エッセイも多く含みます。初級者から上級者まで、英語が好きな人が…
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします