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本や映画のおはなし

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大好きな本や映画、作品にまつわる「人」のお話。
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#韓国在住

《6》韓国の独立系書店 「최인아책방(Inabooks)」

《6》韓国の独立系書店 「최인아책방(Inabooks)」

 2012年から1年間、ソウルの延世大学語学堂で韓国語を学んでいた時期に出会った友人2人と、久しぶりに再会することになった。そのうち1人は長年暮らしてきたカナダから韓国に戻ってきたばかりで、会うのは実に10年ぶり。

     2人が暮らすソウル・江南で、広島風お好み焼きを食べようという話になったので、これを機に、前からずっと行ってみたかった独立系書店「최인아책방(Inabooks)」を訪ねること

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《5》韓国の独立系書店 「가가77페이지(gaga77page)」訪問記

《5》韓国の独立系書店 「가가77페이지(gaga77page)」訪問記

  ソウル・望遠洞でもう一軒訪れた独立系書店は、가가77페이지(gaga77page)。望遠駅から歩いて9分、望遠市場のすぐ近く。

 今回始めた「韓国の本屋をめぐる旅」は、本と本屋が好きだったにも関わらず、韓国に来て8年の間なかなか身動きがとれなかった私が、やっと少しずつ「自分の時間」と「好きなものに向き合うエネルギー」を取り戻し、韓国の本や本屋、本にまつわるお仕事をしている方たちに出会いたくて

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《4》韓国の独立系書店「이후북스(Afterbooks)」訪問記

《4》韓国の独立系書店「이후북스(Afterbooks)」訪問記

 韓国の出版社、文学トンネが運営するブックカフェ「CAFE COMMA 合井店」を訪れた後、水原からはるばる会いに来てくれた韓国の友人と落ちあい、望遠洞で昼食。1年半ぶりの再会で話に花が咲いた上に、この冬一番の寒波到来中ということで、予定していた2か所の書店は次回行くことにし、レストランから近い書店を2か所訪問することにした。

 まず訪れたのは、独立系書店の이후북스(Afterbooks)。地下

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《3》韓国の出版社が運営するブックカフェ「CAFE COMMA 合井店」訪問記

《3》韓国の出版社が運営するブックカフェ「CAFE COMMA 合井店」訪問記

 2月のある日、数年ぶりにソウルの西に位置する望遠洞を訪れた。望遠洞と言えば望遠市場のほか、おしゃれなカフェや飲食店が集うエリアとして知られているが、私が2012~13年にソウル・新村にある延世大学の語学堂で学んでいた頃は、こんなに注目されているエリアではなかったと記憶している。当時は新村の隣、弘大や合井が若者の遊び場で、弘大や合井の西側に位置する望遠洞や、グルメスポットとして人気の延南洞は、まだ

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《2》韓国の独立系書店「북살롱 텍스트북(Booksalon Textbook)」訪問記

《2》韓国の独立系書店「북살롱 텍스트북(Booksalon Textbook)」訪問記

 今年はソウルや近郊の書店めぐりをたくさんしていきたく、パジュの『私的な書店(사적인 서점 )』に続いて訪れたのは、景福宮の西側、西村(ソチョン)エリアにある独立書店『북살롱 텍스트북 (Booksalon Textbook)』。昔、外国人宣教師の宿舎だったというレンガ造りの建物の2階にあった。

 コーヒーやワインが飲めるブックカフェで、注文すれば席に座って店内の本を読むこともできる(ただし、売

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J.Y.Parkと『私的な書店』と『パストライブス/再会』

J.Y.Parkと『私的な書店』と『パストライブス/再会』

 2025年が始まりましたが、みなさんどんな毎日をお過ごしでしょうか?私が暮らす韓国・ソウル近郊は寒波が押し寄せ、今週は最低気温がマイナス16度まで下がり、最高気温も連日氷点下。外を歩くとまるで冷凍庫の中にいるようです。

 韓国で暮らして8年目の冬。こちらは1月1日だけがお休みで、あとは普通に仕事があるので、韓国に来てからはまだ一度も年末年始に日本に帰省したことがありません。最初の数年は年越しそ

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《1》韓国の独立系書店 「私的な書店」 訪問記

《1》韓国の独立系書店 「私的な書店」 訪問記

    雪が降り積もった日曜日、ついにパジュにある「私的な書店(사적인 서점)」を訪問した。

    昨年11月にこの書店の代表であるチョン・ジヘさんのエッセイ『私的な書店 -たったひとりのための本屋-』が東京の書店&出版社「葉々社」から翻訳出版され、すぐ読んでいたのだが、実際にジヘさんの書店へ行ってみると、近くに住んでいるのに何でもっと早く来なかったんだろう…と後悔するほど私にとっては天国のよ

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韓国•北朝鮮で暮らす人たちの価値観を知る4冊

韓国•北朝鮮で暮らす人たちの価値観を知る4冊

韓国に関する本のお祭りK-Bookフェスティバルが今日から2日間、東京の神保町で始まりましたね。韓国から著名な作家さんが多数来日してトークイベントを行ったり、翻訳家さん、出版社のみなさんが一堂に集まりサイン会が行われたり。もう行きたすぎる!!

残念ながら今回は東京まで行くことはできないので、オンラインでの配信を楽しませていただきたいと思います(詳細は下記にリンクあります)。

本好きのみなさんと

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韓国で話題のスイーツ3選、本好きの人と語り合いたいエッセイ&小説5選

韓国で話題のスイーツ3選、本好きの人と語り合いたいエッセイ&小説5選

 韓国・ソウル近郊は朝夕ずいぶんと冷え込むようになり、先週からボイラー(床暖房)をつけ始めました。外を歩けば秋真っ盛り。青空とイチョウ並木のコントラストが最高に美しい季節です。それなのに、わが家の6歳児はイチョウの木の下を歩くたびに眉間にしわを寄せ、こう言います。

「은행나무 지독해(イチョウの木がとっても臭い)」

 同じ場所で同じものを見ても、美しいと思う人もいれば臭いと思うひともいる。特に

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韓国の祝日と偉人、釜山国際映画祭、初のQ&A

韓国の祝日と偉人、釜山国際映画祭、初のQ&A

 2週間ぶりに、ポッドキャストを配信しました。昨夜から今朝にかけて、韓国の小説家ハン・ガンさんがノーベル文学賞を受賞されたというニュースで持ちきりの韓国です。
 
 過去の配信でハン•ガンさんの最新刊『別れを告げない』についてお話ししましたが、正直に告白すると、彼女の小説を読む時、私はナイフで身体をゆっくりと切られているような、自分が生と死を行ったりきたりしているような感覚に陥ります。だから心身共

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映画『アイミタガイ』 と釜山国際映画祭

映画『アイミタガイ』 と釜山国際映画祭

きのうから、10年ぶりに釜山国際映画祭に来ている。結婚を機に韓国移住してもうすぐ8年、子どもを産んで6年の間、こうして2日間も一人で旅に出るのは初めてのことだ。

行こうと思ったきっかけは、12年前の留学時代に知り合った韓国人の友達が今年ついに監督デビューし、その作品『침범(侵犯)』が映画祭で上映されることになったからだった。それともうひとつ、2020年3月に亡くなられた佐々部清監督が企画•脚本の

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期待大のエンタメ、最近飲んでいるエキス

期待大のエンタメ、最近飲んでいるエキス

 先月、日本から韓国に戻ってきてすぐ体調を崩し、それが結構長引いていました。ここ数年、特にコロナに2度感染してからというもの、一度風邪をひくと2週間くらいずっと鼻の奥の方が詰まり、顔全体がぼーっとしてしまいます。

 「あれ?風邪をひいたかな」と思ったら、すぐに飲むものがいくつかあるんですが、その内の1つが写真の左側「생강쌍화」です。生姜やさまざまな韓方薬剤が入った栄養ドリンクと言えば良いでしょう

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韓国をもっと知りたくなる!注目の翻訳小説と韓国文学案内本

韓国をもっと知りたくなる!注目の翻訳小説と韓国文学案内本

 幼い頃から本を読むのは好きでしたが、海外文学はどうも苦手で、外国語や海外旅行にも全く興味がわかず、「私は生涯日本から出ることないだろう」と思っていました。ところが2006年、20代半ばの頃、人に誘われて行った韓国旅行で閉じていた扉が開き、韓国の人や食べ物、言葉に興味を持ち始めます。

 「この国のことが知りたい」という思いで最初に手を伸ばしたのは、韓国のドラマや映画、音楽でした。この時「韓国の小

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翻訳家になったつもりで韓国エッセイを翻訳してみたら

翻訳家になったつもりで韓国エッセイを翻訳してみたら

 私の記憶が正しければ、2015年頃までは日本の書店や図書館に行っても韓国文学の翻訳本はごくわずかしか置かれていませんでした。それに比べて、初めて韓国の書店を訪れた2010年当時、書棚にはあふれるほどの日本の書籍(韓国語に翻訳されたもの)が並んでおり、この日韓の差に驚いたものでした。

 ところが、それから約10年の間に日本ではものすごい勢いで韓国の小説やエッセイ、絵本、詩集、WEB漫画などが書籍

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