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美味しい北東北

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北東北の食に関する記事やつぶやきまとめ
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秋田のクラフトジン「AKITA CRAFT GIN 岑 No.65」で秋田の森の香りに酔いしれる

秋田のクラフトジン「AKITA CRAFT GIN 岑 No.65」で秋田の森の香りに酔いしれる

 最近は落ち着きを見せ始めているが、ここ数年クラフトジンのブームがきていた。

 ジンをご存知のない方向けに説明すると、ジンとはジュニパーベリーという針葉樹の果実を中心とした様々な植物の香りをつけた蒸留酒の一種だ。
 よく売られているものの度数は40°以上と強めで、ソーダで割ったジンソーダやトニックウォーターで割ったジントニックなどは居酒屋でもよく売られている。

 少し前まで日本でよく飲まれてい

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実家のレシピの梅干しならぬ「梅漬け (杏漬け)」と、津軽地方の伝統保存食「紫蘇巻梅」を作りたかった

実家のレシピの梅干しならぬ「梅漬け (杏漬け)」と、津軽地方の伝統保存食「紫蘇巻梅」を作りたかった

「梅の実を塩漬けにした保存食」と言われれば、日本全国で一般的なものは梅干しだろう。
 梅干しを作った経験がある人はわかると思うが、梅干しはその名の通りに途中で梅を干す工程が入る。そのおかげで適度に水分が無くなり、独特の食感が生まれると共に携行性が増し料理にも使いやすいというメリットが生じる。

 対して秋田県や青森県などの北東北の一部地域では、この「干し」の工程を挟まない梅漬けという保存食が存在す

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2日と1時間半かけて「干かすべ」から「かすべ煮(エイヒレの煮付け)」を炊く

2日と1時間半かけて「干かすべ」から「かすべ煮(エイヒレの煮付け)」を炊く

 関東地方に住んでいた頃、これまで当たり前に見てきた食材がスーパーに並んでおらず驚いたことは何度かあった。その中でも自分にとって筆頭と呼べるものがかすべだ。

 東北地方、または北海道や新潟県などに住んだ経験のある方は、スーパーの鮮魚コーナーに独特の形状を桃色の肉の塊が並んでいるのを見たことがあるだろう。

 かすべと呼ばれるこれの正体はエイの仲間のヒレの部分である。厳密に言えば、写真のものは皮を

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【岩手県雫石町】岩手を代表する観光地「小岩井農場まきば園」で五感で自然と歴史に触れる

【岩手県雫石町】岩手を代表する観光地「小岩井農場まきば園」で五感で自然と歴史に触れる

 おそらくこの記事をご覧の皆さんの近所のスーパーの乳製品売り場にも、小岩井乳業の商品が並んでいることだろう。
 中でもチーズやヨーグルト、そして発酵バターは他の大手メーカーと比較すると少しお値段は張るがその価格分以上に品質も良く自分も大好きだ。

 さて、岩手県雫石町にある小岩井農場まきば園は、そんな小岩井乳業の牧場の一部などが見学できる観光農場だ。
 驚くべきはその面積、観光エリアであるまきば園

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舌で楽しむ菊の節句。和製エディブルフラワー「阿房宮」と今はなき地酒「菊駒」、そして北東北のワタリガニ

舌で楽しむ菊の節句。和製エディブルフラワー「阿房宮」と今はなき地酒「菊駒」、そして北東北のワタリガニ

 食用菊と聞いて恐らくほとんどの地域の人が想像するのは、刺身のツマとして入っているたんぽぽのような小さな花だろう。
 しかし青森県南東部や岩手県の北部を中心とする旧南部藩地域や山形県では、花の直径が5〜10cmほどもある食用菊が昔から親しまれている。

 これらの大きな食用菊は薬味に使われるものと比べて苦味が穏やかで花弁が柔らかく、花弁だけをむしり取って食べることが多い。料理の彩りとして使われるこ

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農林水産省お墨付き「二子さといも」の食感に悶える

農林水産省お墨付き「二子さといも」の食感に悶える

 日本全国各地に存在する多彩な農林水産物。それらの中には地元で愛され続けているローカルなものもあれば、日本全国のこだわりの店で愛され、更には日本を飛び出し海外へも進出しているものもある。
 日本或いは世界の農林水産物を相手に渡り合う際に特にその個性と品質で勝負するとなると、その商品ならではの特徴や品質などを保証することは、1つのブランドとして成り立たせるための重要なポイントである。

 さて、この

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助宗たらの丸干しは過小評価すぎやしないか

助宗たらの丸干しは過小評価すぎやしないか

 北東北の太平洋側のスーパーでは、よくタラの丸干しという干物が売られている。

 丸干しと言っても頭と内臓を取り除いたドレスと呼ばれる状態で干したもので、さらに言えばタラはタラでもよくイメージされる大きなマダラではなく助宗たら (標準和名はスケトウダラ、あるいはスケソウダラ)と呼ばれる大きくても30センチ程度の小ぶりなものだ。
 助宗たらと言われてもピンとこない方も多いかもしれないが、いわゆるタラ

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【岩手県花巻市】「Wildcat House 山猫軒」で宮沢賢治の世界を味わう

【岩手県花巻市】「Wildcat House 山猫軒」で宮沢賢治の世界を味わう

“二人の若い紳士が、すっかりイギリスの兵隊のかたちをして、ぴかぴかする鉄砲をかついで、白熊のような犬を二疋つれて、だいぶ山奥の、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことを云いながら、あるいておりました。

「ぜんたい、ここらの山は怪しからんね。鳥も獣も一疋も居やがらん。なんでも構わないから、早くタンタアーンと、やって見たいもんだなあ。」
「鹿の黄いろな横っ腹なんぞに、二三発お見舞いもうしたら、ずいぶ

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八戸の館鼻岸壁朝市で買った謎の「ヤマモモ」と産直ならではの出会いを愛でる

八戸の館鼻岸壁朝市で買った謎の「ヤマモモ」と産直ならではの出会いを愛でる

 一般的にヤマモモというと、漢字で楊梅と書かれることが多い鮮やかな赤い果実をつける植物を指すと思う。

 しかし青森県の三八地方 (※)ではお盆明けの短い時期に、同じく「ヤマモモ」の名で呼ばれる謎の果実が売られていることがある。

※ 八戸市を中心に、階上町や五戸町などの青森県南東部の地域

 今回この「ヤマモモ」を購入したのは、青森県八戸市で行われている館鼻岸壁朝市だ。

 館鼻岸壁朝市は毎週日

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岩手県奥州市伝統の精進料理、くるみ豆腐は「くるみ味」

岩手県奥州市伝統の精進料理、くるみ豆腐は「くるみ味」

「醍醐味」という言葉がある。
 至上の美味さを意味する言葉であり、そこから転じて物事の中でも特に味わい深い部分を指す言葉であるが、その由来はその名もずばり醍醐と言うかつて存在していた乳製品を指す。

 これと似たような例として、岩手県の一部の方言では「非常に美味しい味」という意味で「くるみ味」や「くるみの味」という表現を用いる。
 そんな岩手県では数々のクルミを使った郷土料理が存在するが、その中で

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【育てて食べた】復活した青森の伝統野菜 糠塚きゅうりはデカくて甘くてジューシーで旨い

【育てて食べた】復活した青森の伝統野菜 糠塚きゅうりはデカくて甘くてジューシーで旨い

 日本全国には、伝統野菜として古くから栽培されてきた野菜が数々ある。

 各地域毎で長年に渡り品種改良が行われてきた作物たちはそれぞれ独自の性質を有している。その多様性は時に今現在広く栽培されている主力品種のベースとなり、日々様々な品種が作られては我々の食卓に登っている。
 例えば現在寒冷地で広く栽培されているニンニクの品種である福地ホワイト六片は、かつて青森県に存在した福地村 (現在は南郷村に編

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マアナゴではないアナゴの「沖はも」を、広島の郷土料理のアプローチでうなぎの蒲焼に近づける

マアナゴではないアナゴの「沖はも」を、広島の郷土料理のアプローチでうなぎの蒲焼に近づける

 以前記事にした「沖はも」ことイラコアナゴは、主に北海道や東北地方の太平洋側で漁獲される深海魚であり、これらが漁獲される地域では缶詰などの加工品はもちろん、大衆魚として親しまれている魚だ。
 マアナゴの代用魚として扱われることも多い本種だが、脂が乗ったこってりとした身とねっとりとした独特の食感はマアナゴとはまた違う旨さがある。

 さて、この記事の投稿日の前日である2024年7月24日は土用の丑の

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【青森県おいらせ町】青森で育つバナナ、パパイヤ、ジャボチカバ!?アグリの里おいらせは「食える」植物園

【青森県おいらせ町】青森で育つバナナ、パパイヤ、ジャボチカバ!?アグリの里おいらせは「食える」植物園

 幼少時代、植物園に行った経験のある人は多いと思う。特に北国生まれ北国育ちの自分にとって、個性的で見たこともない様々な植物の姿はとても魅力的に見えていた。
 そしてそれら植物の中でも、特にこの一文を持つ植物に心惹かれた。

「—現地では食用」

 こんな見たこともない植物も、世界のどこかでは誰かの腹を満たしている。そんな遠くで暮らす人々の生活に想いを馳せ、彼らも、自分たちが当たり前に食べる山菜を前

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北東北の陸上自衛隊カレー食べ比べ

北東北の陸上自衛隊カレー食べ比べ

 北東北にも梅雨が到来し、今年もまた一段と蒸し暑い日々が続いている。
 食欲が落ちるこの時期だからこそ、スパイシーなものが食べたくなる。そして、スパイシーな料理の代表格といえばカレーだろう。
 そして日本でカレーといえば、この組織のことを忘れてはいけない。そう、自衛隊だ。

 ご存知の方も多いと思われるが陸上自衛隊や海上自衛隊では各駐屯地や部隊、護衛艦毎のカレーレシピを公開している。

 今回は上

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