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旅と日々

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旅をすることは、息をするということだ。
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文学フリマ大阪の前日、大阪駅前ビルを歩いた。

文学フリマ大阪の前日、大阪駅前ビルを歩いた。

大阪へは10回は行ったと思うが、梅田にある大阪駅前ビルすら堪能しきれていないということに気づいたので、先月開催された文学フリマ大阪のついでに立ち寄ることにした。

大阪駅前ビルは梅田ダンジョンの南側、JR北新地駅付近にある古風な高層ビルである。第一第二とつづき第四ビルまで連なっている。
このビルは以前から立ち寄ったことがあったかもしれないが、しかと認識したのは今年2024年の1月であった。
文学フ

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大阪という街を好きになった話

大阪という街を好きになった話

電車に乗るのが苦手だった。
電車に乗る人の振る舞いをしなくちゃいけないと思っていたからだ。

……などと冒頭から書き始めてしまうとタイトルとのミスマッチさに悪寒がはしるが、いやしかし電車での体験は大阪を好きになることと密接な関係があるのでどうか赦していただきたい。

僕は神奈川県の平塚市に住んでいる。乗る電車といえば東海道線と小田急線で、他のJR線や京急や東急もたびたび利用する。
その偏ったn=1

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兄とカレーを作った。

兄とカレーを作った。

兄が実家に帰ってきた。
もちろん、二人の姪を連れて。

7月6日。土曜日だった。
僕の住む平塚は七夕祭りが有名らしく、この時期になると駅前の銀座通りには絢爛な七夕飾りが風に揺れ、ほとんど身動きがとれないくらいの人が飾りを見に、あるいは露店の品々を求めて集う。
そんな七夕祭りを、東京に暮らす兄は娘にも見てもらいたいと思ったらしく、急遽帰郷することが決まった。

正直僕は七夕祭りにさしたる情熱や思い出

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書けない part.x

書けない part.x

そう、書けないのだ。
今回の書けないはしかし深い絶望を孕まない。
5月のすっきりとした青い空のような書けなさだ。
3週間ほどが経過するので、時節にも合う「書けない」なのがまた面白い。

どうして書けないか。いつもならどうして書けないのかの理由も分からず途方に暮れることが多いけれど、不思議と今回は目星がついている。
僕は人を書けないし、変化も書けない。
だから書けないのだ。

人物が書けない

現在

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広島で靴の音を鳴らす。 文学フリマ広島6前日譚前篇

広島で靴の音を鳴らす。 文学フリマ広島6前日譚前篇

広島に着いた。
2月24日、土曜日のことだ。

新幹線の改札を抜けてコンコースへ至ると、その人の多さに驚いた。
新幹線に乗り換えた小田原駅や途中の名古屋駅では海外の人たちの姿が目立った印象だったけど、
広島では国内の人たち、とりわけ地元の人が多いように思えた。
ただの認知バイアスであることは承知の上でだけど。

僕は広島という街のことが好きだ。

さあ、歩こう。
先日迎えたばかりのOn Cloud

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証とはそういうものだ

証とはそういうものだ

初めてのぞみに乗った。
いや、もしかすると幼い頃に父に連れられて乗ったことがあるかもしれないけれど。というか、電車好きな父のことだから、乗せないわけがない。
だからこう訂正すべきだろう。

初めてひとりでのぞみに乗った。
名古屋駅で乗り換えだった。
しばしホームで待っていると、東京方面の線路の先から新幹線の白いビームがまぶしく見えた。僕は思いがけず心が浮き立った。大して期待もしてなかったのに、のぞ

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だから僕は他人の為に書くのをやめた。

だから僕は他人の為に書くのをやめた。

新幹線に乗っている。
明日開催される文学フリマ京都の遠征のためだ。

小田原駅を出てしばらく経ち、北の峰に新東名と東名の高架が見え、雲に隠れた(大抵この付近を訪ねると隠れている)富士山が主張をし始めたので、まあ静岡のそこらへんなのだろう。





今、僕は小説を書いている。
このたった一行を記すことができたことに、僕は僕の感じる以上の嬉しさを抱いている。
とても、とても。

昨年の今頃は、

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記憶の道、間近の車窓

記憶の道、間近の車窓

急遽、文学フリマ福岡には新幹線で向かうことになった。人生で何度か乗った覚えがあるけど、ここ数年は乗っていなかった。長距離の旅は、車を使っていたからだ。

小田原駅からこだまに乗っている。聞き覚えのある地名を冠する駅まで、あっという間に辿り着き、あっという間に過ぎていく。これがひかりやのぞみだったら、あっと口を開くまでもなくいつの間にか過ぎ去っていくのだと思うと、この乗り物は実に魅惑的だ。

車窓を

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霧がかる夕焼けと湘南平

霧がかる夕焼けと湘南平

西の空が茜色できれいだった。
こんな日はドライブをしようと地元の田園を走らせていたら、湘南平に霧がかかっているのに気がついた。

湘南平。
標高約180M、平塚の西南にある山の名前だ。
正しくはその山の頂上を指す名称で、千畳敷とも呼ばれる。一帯が平らで、散歩やキャッチボール、季節によっては花見をする地元の人たちが訪れる。

このちいさな山の麓で育った僕にとって、それこそ「親の顔より見た」と形容でき

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「生まれてきてくれてありがとう」という言葉に、違和感。

「生まれてきてくれてありがとう」という言葉に、違和感。

「誕生日おめでとうと言われるのは嫌なんです。歳とっておばさんになってく感じがするじゃないですか。だから誕生日が嫌いだったんですけど、『生まれてきてくれてありがとう』って言われたことがあって、それで、ちょっとだけ誕生日も悪くないかなって思ったんです」

数年前に、そんな感じのことをラジオ番組のパーソナリティが言っていた。
いつものようにドライブ中のことで、そのときは「こんなふうに思う人もいるんだな」

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東日本大震災から10年。だからなんだ。

東日本大震災から10年。だからなんだ。

東日本大震災から10年が過ぎた。
おそらく、この日をひとつの節目と思う方は少なくないかもしれない。
僕も、この日が来るまでぼんやりとそんなことを考えていた。

でも、よくよく考えてみると、10年が経ったからといって、
だからなんだ、
という気持ちが少しずつ強くなってきた。

確かに、この10年間、僕は東北の津波被災地を中心に、地続きな変貌を見続けてきた。
(僕は神奈川県の湘南に住んでいて、ここから

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大阪で日本最古の道を巡礼したいという欲望

大阪で日本最古の道を巡礼したいという欲望

 僕は道が好きだ。道とは人とモノとが行き交う線のことで、ふと冷静になると、人類史上最大の建築物と言っても過言ではないのではないかと、思う。世界は道に溢れていて、つまり道の数だけ歴史と営みがあるということである。

 来たる(2019年)9月8日(日)、大阪市のOMMビルで文学フリマ大阪というイベントが行われる。文学フリマは、今回で7回目の開催のようだ。

 文フリ大阪へは、何度か出店者側として参

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古事記の時代から生ける峠、御坂峠MEMO

古事記の時代から生ける峠、御坂峠MEMO

おいしいものを食べると、思わずメモをとってしまいます。写真に残すよりも、見返したとき味がよみがえる気がするんです。

初めましての方は初めまして、そうでない方も初めまして。今田ずんばあらずです。旅をしていました。

今回の旅は長野県の霧ヶ峰高原と美ヶ原高原でした。インバーターという、車のなかでコンセントが使える装置を入手したので、それを活用したひとり執筆合宿でした。
今回は、その帰りに立ち寄った御

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僕は世界を拓いていくことにしました。

僕は世界を拓いていくことにしました。

あの家を越えた先になにがあるのか。この探求心の延長線上に今の自分がいるんだと思います。

初めましての方は初めまして、そうでない方も初めまして。旅する小説家、今田ずんばあらずです。noteわかばマークです。

先日の初note(URL)、想像の10000000倍くらい反応があって驚いております。ありがてえありがてえ……。気の向くまま続けていきます。

前回は自らの脚である(比喩表現というよりかは、

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