今田ずんばあらず、旅する小説家

旅する小説家。随筆家。文芸個人サークル〈ドジョウ街道宿場町〉代表。代表作は東北津波被災地を旅する青春小説『イリエの情景~被災地さんぽめぐり~』シリーズ(全3巻)。いつでもどこでも同人誌即売会用のブースを設営するのが趣味。

今田ずんばあらず、旅する小説家

旅する小説家。随筆家。文芸個人サークル〈ドジョウ街道宿場町〉代表。代表作は東北津波被災地を旅する青春小説『イリエの情景~被災地さんぽめぐり~』シリーズ(全3巻)。いつでもどこでも同人誌即売会用のブースを設営するのが趣味。

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産声をあげる日-ある文芸評論家から作品の感想をいただいた話と、恩師の話

先日、ある文芸評論家と文通する機会があった。 自身の作品を読んでもらい、感想をいただくことを前提とした文通である。 ことの発端は、1本の電話からだった。 先週土曜日の朝、電話が鳴った。電話帳未登録の番号であった。 その日は仕事で、ちょうど出勤準備に追われていたこともあり、応えることができなかったがしかし、ひっきりなしにスマホは揺れつづけるのだった。 仕事の休憩時間に入るまで、2時間おきに不在着信があった。 折り返すと、それは高校時代の恩師であった。 当時僕は弓道部に所属

    • 文学フリマ大阪の前日、大阪駅前ビルを歩いた。

      大阪へは10回は行ったと思うが、梅田にある大阪駅前ビルすら堪能しきれていないということに気づいたので、先月開催された文学フリマ大阪のついでに立ち寄ることにした。 大阪駅前ビルは梅田ダンジョンの南側、JR北新地駅付近にある古風な高層ビルである。第一第二とつづき第四ビルまで連なっている。 このビルは以前から立ち寄ったことがあったかもしれないが、しかと認識したのは今年2024年の1月であった。 文学フリマ京都の帰り、お世話になっている評論系サークル〈アレ★Club〉の皆さんと飯を

      • 大阪という街を好きになった話

        電車に乗るのが苦手だった。 電車に乗る人の振る舞いをしなくちゃいけないと思っていたからだ。 ……などと冒頭から書き始めてしまうとタイトルとのミスマッチさに悪寒がはしるが、いやしかし電車での体験は大阪を好きになることと密接な関係があるのでどうか赦していただきたい。 僕は神奈川県の平塚市に住んでいる。乗る電車といえば東海道線と小田急線で、他のJR線や京急や東急もたびたび利用する。 その偏ったn=1の所感であることを断ったうえで、改めて言わせていただく。 僕は電車に乗るのが苦手

        • 兄とカレーを作った。

          兄が実家に帰ってきた。 もちろん、二人の姪を連れて。 7月6日。土曜日だった。 僕の住む平塚は七夕祭りが有名らしく、この時期になると駅前の銀座通りには絢爛な七夕飾りが風に揺れ、ほとんど身動きがとれないくらいの人が飾りを見に、あるいは露店の品々を求めて集う。 そんな七夕祭りを、東京に暮らす兄は娘にも見てもらいたいと思ったらしく、急遽帰郷することが決まった。 正直僕は七夕祭りにさしたる情熱や思い出があるわけでもないし、むしろ暑くて人だかりの多い祭の期間中は平塚市街に近づかない

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        • 思索と創作
          26本
        • 旅と日々
          15本
        • ぼっち・ざ・ろっく!にひたる
          4本
        • 【小説】ユーメと命がけの夢想家
          14本
        • 『あめつち』語り
          5本

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          書けない part.x

          そう、書けないのだ。 今回の書けないはしかし深い絶望を孕まない。 5月のすっきりとした青い空のような書けなさだ。 3週間ほどが経過するので、時節にも合う「書けない」なのがまた面白い。 どうして書けないか。いつもならどうして書けないのかの理由も分からず途方に暮れることが多いけれど、不思議と今回は目星がついている。 僕は人を書けないし、変化も書けない。 だから書けないのだ。 人物が書けない 現在長篇小説『his will』を書いていることはnoteやその他媒体で垂れ流してい

          ガールズバンドクライの舞台は「いつ」なのか? 3つの説から謎に迫る

          6/10追記あり 『ガールズバンドクライ』が熱い。 毎日周回してる。誇張ではない。 ストーリーがいいのだから、仔細な部分にまで手が加わっていることだと思う。 (そして、観察すればするほど気になる点や疑問点も浮かぶわけで、この「気になる」が深堀りの原動力になるのだ) 物語に登場する小物や背景、セリフ、演出その他諸々から、この作品がどのように企画され、構成され、制作されたのか、その軌跡を辿るのである。 というわけでいくつかの着眼点でもって『ガールズバンドクライ』を深堀りし

          ガールズバンドクライの舞台は「いつ」なのか? 3つの説から謎に迫る

          広島で靴の音を鳴らす。 文学フリマ広島6前日譚前篇

          広島に着いた。 2月24日、土曜日のことだ。 新幹線の改札を抜けてコンコースへ至ると、その人の多さに驚いた。 新幹線に乗り換えた小田原駅や途中の名古屋駅では海外の人たちの姿が目立った印象だったけど、 広島では国内の人たち、とりわけ地元の人が多いように思えた。 ただの認知バイアスであることは承知の上でだけど。 僕は広島という街のことが好きだ。 さあ、歩こう。 先日迎えたばかりのOn Cloudmonsterをぎゅむっと踏みしめ、 広島市電高架化工事中の南口階段を降りた。

          広島で靴の音を鳴らす。 文学フリマ広島6前日譚前篇

          証とはそういうものだ

          初めてのぞみに乗った。 いや、もしかすると幼い頃に父に連れられて乗ったことがあるかもしれないけれど。というか、電車好きな父のことだから、乗せないわけがない。 だからこう訂正すべきだろう。 初めてひとりでのぞみに乗った。 名古屋駅で乗り換えだった。 しばしホームで待っていると、東京方面の線路の先から新幹線の白いビームがまぶしく見えた。僕は思いがけず心が浮き立った。大して期待もしてなかったのに、のぞみという響きを冷笑的に捉えていたはずなのに、この電車に乗るのを楽しみにしていたら

          だから僕は他人の為に書くのをやめた。

          新幹線に乗っている。 明日開催される文学フリマ京都の遠征のためだ。 小田原駅を出てしばらく経ち、北の峰に新東名と東名の高架が見え、雲に隠れた(大抵この付近を訪ねると隠れている)富士山が主張をし始めたので、まあ静岡のそこらへんなのだろう。 ・ ・ ・ 今、僕は小説を書いている。 このたった一行を記すことができたことに、僕は僕の感じる以上の嬉しさを抱いている。 とても、とても。 昨年の今頃は、創作に関してほぼ潰れていた。 一昨年はどん底。 三年前は? 書けないことから目を

          だから僕は他人の為に書くのをやめた。

          記憶の道、間近の車窓

          急遽、文学フリマ福岡には新幹線で向かうことになった。人生で何度か乗った覚えがあるけど、ここ数年は乗っていなかった。長距離の旅は、車を使っていたからだ。 小田原駅からこだまに乗っている。聞き覚えのある地名を冠する駅まで、あっという間に辿り着き、あっという間に過ぎていく。これがひかりやのぞみだったら、あっと口を開くまでもなくいつの間にか過ぎ去っていくのだと思うと、この乗り物は実に魅惑的だ。 車窓を眺めていると、見知った風景と出会う。熱海の再開発中の斜面、国道1号バイパスと隣接

          書けない。

          僕は今、文章が書けない。この夏で3年目に突入する。 きっと、ここでいう文章とは「文章」と書き表したほうが適切かもしれない。自分の「文章」を読むと、気持ちが悪くて仕方がなくなる。特に小説の、人間やそれに準ずる輩の言葉に、気味悪さというか、魂のようなもののない、虚ろなものに思えて、拒絶反応が起こるのだ。 ひとえに自信のなさから生じるものだと思うし、もはや完治なんか期待しちゃいけないのかとも思ってしまう。 熾のあかみが灯ったかと思えば消え失せ、灯ったかと思えば消える。何度も何度も息

          霧がかる夕焼けと湘南平

          西の空が茜色できれいだった。 こんな日はドライブをしようと地元の田園を走らせていたら、湘南平に霧がかかっているのに気がついた。 湘南平。 標高約180M、平塚の西南にある山の名前だ。 正しくはその山の頂上を指す名称で、千畳敷とも呼ばれる。一帯が平らで、散歩やキャッチボール、季節によっては花見をする地元の人たちが訪れる。 このちいさな山の麓で育った僕にとって、それこそ「親の顔より見た」と形容できる相手だ。 コンクリート造のレストハウスと、白と赤の鉄骨で造られた東京タワーみた

          「生まれてきてくれてありがとう」という言葉に、違和感。

          「誕生日おめでとうと言われるのは嫌なんです。歳とっておばさんになってく感じがするじゃないですか。だから誕生日が嫌いだったんですけど、『生まれてきてくれてありがとう』って言われたことがあって、それで、ちょっとだけ誕生日も悪くないかなって思ったんです」 数年前に、そんな感じのことをラジオ番組のパーソナリティが言っていた。 いつものようにドライブ中のことで、そのときは「こんなふうに思う人もいるんだな」程度の感想を抱くだけであった。 でも今に至るまで心に留まりつづけているということ

          「生まれてきてくれてありがとう」という言葉に、違和感。

          灰皿を囲んで煙草を吸えない。吸いたいけれど。

          僕はおそらく、煙草を吸うのが遅い。 「おそらく」というのは、他人が嗜む様子を見る機会がそれほどないからだ。でも数ヶ月に1回程度、見知った方と共にする機会があって、自分が半分ほど進んだ時点で相手は1本終えている。自分よりゆっくり嗜む方と相席したことがないので、「おそらく」煙草を吸うのが遅い、と思うわけだ。 煙草をはじめたのは、大学を卒業して1年後、当時勤めていた仕事に疲弊して、「夜逃げ」をしたあとのことになる。 喘息を持っていたこともあり敬遠していたし、かつていた彼女が唐突に

          灰皿を囲んで煙草を吸えない。吸いたいけれど。

          アニメぼっち・ざ・ろっく!最終回文化祭ライブで演奏されなかった幻の3曲目を考察する。

          覚悟はしていたが、とんでもなく長いnoteになってしまった。 なにせ今回はアルバム『結束バンド』収録曲全曲の歌詞精読が不可欠な部分であるためである。 毎度長いタイトルで恐縮なのだが、今回のタイトルを正しく書くならば「アニメぼっち・ざ・ろっく!最終回文化祭ライブで演奏されなかった幻の3曲目を考察するためにアルバム『結束バンド』の全曲を考察し導きだす」といった具合になるだろう。 図らずも2万字を超えてしまった。 「しおり」機能のないnote仕様のため、いつも以上に目次を多めに

          アニメぼっち・ざ・ろっく!最終回文化祭ライブで演奏されなかった幻の3曲目を考察する。

          アニメぼっち・ざ・ろっく!「忘れてやらない」「星座になれたら」の制作時期考察、山田がアクロバティックだと判明する。

          『ぼっち・ざ・ろっく!』最終回の文化祭ライブは、まるでライブを観ているような心地になる演出に心痺れた。 細やかな演出のひとつひとつをピックアップするのもいいかもしれないが、今回は前回に引き続き、 アルバム『結束バンド』収録曲が、作中内時間のいつごろ制作されたのかを検討していきたい。 第3回目は、文化祭ライブに焦点を当てる。 10月2日(日)秀華祭2日目 『ぼっち・ざ・ろっく!』1期最終話に行われた文化祭ライブのセットリストは、 1.忘れてやらない 2.星座になれたら

          アニメぼっち・ざ・ろっく!「忘れてやらない」「星座になれたら」の制作時期考察、山田がアクロバティックだと判明する。