オッペンハイマー、2回目を今週見に行く予定なのだが、2回もノーランの映画を観ることは珍しい。彼の作品はどこか煙に巻く・巻かれるような印象があって嫌いではないけれど、今一つ掴み所がなかった。それがオッペンハイマーという毀誉褒貶ありきの人物を描いた時に感心したのだ。そのフラットさに。
オッペンハイマーの感想で思うのは、監督クリストファー・ノーランはイギリス人であること。 アメリカ発の映画だと思われているが、この映画はイギリス人監督のノーランだからこそ撮れた作品で、アメリカ人がこの題材で作品を作り、これ程の影響力を保てたかといえばそれは出来ないと思う。
アラビアのロレンスとオッペンハイマーは似ている。が違うところもある。そこをひもとくと大分わかるんじゃないだろうか。まず、戦争で活躍した人物であること。そして、その活躍によって不可逆的に歴史を変えてしまったこと。三つ目に戦後での評価が少しずつだが、結果大きく変わっていったこと。
米映画として、オッペンハイマーの内容に皆が侃々諤々。製作はアメリカの制作会社であるからして、原則的には米映画。けど、これまで何度も映画の企画が持ち上がっては頓挫し続けたこの作品を完成までこぎ着けたのがイギリス人のクリストファー・ノーランであることは、作品を理解する上で重要である。
オッペンハイマーの原作を読み返しているが、トリニティ実験が成功した単行本上巻まではどちらかというと読むのが苦しかったが、下巻オッペンハイマーが自責の念に駆られ、また赤狩りを含めた反共産主義の嵐のなかで猛烈に追い詰められていく姿を読み進めるのが、どんどん楽しくなるのは何故だろう。
オッペンハイマーを見て、原作のアメリカン・プロメテウスを再読しているのだが、些細なところを一つ。 兄ロバートと、弟フランクのオッペンハイマー兄弟と、監督であり兄でもあるクリストファーと弟のジョナサン・ノーランがダブって見えるのは気のせいだが、面白い符号に感じる。