終戦後初めてマンハッタン計画を描いた映画『始めか終りか(1947年)』オッペンハイマー(2023年)からは隔世の感
多大な犠牲を払いながらドイツと日本に圧勝した歓喜が冷めやらぬ中(第二次世界大戦と太平洋戦争が終結した翌年には撮影が開始され)マンハッタン計画を描いた映画『始めか終りか』が1947年3月に全米で公開されました。
少し前の記事でふれたシャドー・メーカーズ(1989年、原題は『長崎型原爆と広島型原爆』)
と同様に興行的には奮いませんでしたが、原子爆弾の完成・投下後、初めて(実写フィルムも使用しながら)マンハッタン計画を描いた点では歴史的に意義のある作品です。
この映画が企画された経緯や広島と長崎の惨禍についてふれなかった(隠蔽した)時代背景についてはグレッグ・ミッチェル氏の著書に詳しく述べられていますが
今日まで続く米国の核兵器に対する考え方が終戦後間もない時点でほぼ確立されていたことがわかります。
この映画は(この映画に登場する)マンハッタン計画に携わったアメリカ・イギリス・カナダの軍人・科学者・公職者が500年後の2446年に(人類が生存していれば)開封されるタイム・カプセルにこの映画(および映写機等)を封印する場面から始まります。
世界中で(国連常任理事国の中で)原子爆弾を実用化していたのはアメリカのみであった当時、国家機密である原子爆弾に関する科学的・技術的な詳細が映画の中で描かれるはずはないので、77年前に公開された作品であることを考慮しても、笑いを禁じえない描写も少なくありません。重要なプロットの一つであるメロドラマの内容もB級です。
日本語字幕付の配信は見当たりませんが、ご興味があれば、英語字幕をONにして YouTube でご覧ください。
尚、晩年に夫人(ジェシカ・タンディ)と一緒にコクーン(続編も含む)やニューヨーク東8番街の奇跡(原題は Batteries Not Included、電池は別売)他に出演したことで知られるヒューム・クローニンがオッペンハイマーを演じましたが、この映画ではオッペンハイマーは主役ではありません。
また、ヒューム・クローニンは少し前の記事でふれたデイ・ワン最終兵器の覚醒(めざめ)(1989年)
では、ハリー・トルーマン大統領に請われ1945年7月に国務長官に就任し、日本に対して強硬派であったジェームズ・バーンズ国務長官を演じました。