ストレスフリーな毎日へ。快眠・アロマ・リラクゼーション。手軽にできる心と体を癒す方法『フワッと、ふらっと、ストレスケアの健康心理学』
『フワッと、ふらっと、ストレスケアの健康心理学』
1. ストレスが心身に及ぼす影響
過大なストレスは、ストレス関連の疾患(高血圧、心臓病、不眠症等)につながり、また免疫力を弱らせます。
過大なストレスがかかると、狩猟採集時代の人間が猛獣に出会ったときと同じぐらいの危機を本能的・無意識的に感じます。
現代におけるストレスはそこまでの危機でないものが多いのですが、
人間の脳と心は狩猟採集時代から進化していないと考えられるため、
(人間は環境を変えることができるため生物として進化する必要がなくなったとも考えられます)
過大なストレスを感じると、本能的・無意識的に猛獣に出会ったときと同様の危機を感じてしまうのでしょう。
そしてその危機に対応するための準備を、これも本能的・無意識的にしてしまいます。
これを「闘争・逃走反応」(fight or flight response)といいます。
この反応は、脅威に対して「戦う(闘争)」「逃げる(逃走)」場合に適応する心身の態勢を整えようとするもので、
生物が危険やストレスを感じたときに、身体が自動的に発動する生理的な反応です。
闘争・逃走反応は、進化の過程で危険から生き延びるために発達した反応です。
初期の人類は、自然界のさまざまな脅威(猛獣や他の人間との争い)に直面しており、この反応が生命を守るために重要な役割を果たしてきました。
現代社会では、同じ反応が仕事や人間関係のストレス、試験など、物理的な危機ではない状況でも引き起こされることがあります。
生物が外的な脅威(例えば、猛獣や緊急事態)に直面すると、
危機に対処するため覚醒が必要になるので、
交感神経
(身体の活動性を高める自律神経。対して、休息やリラックスのときに優位に働く自律神経は副交感神経)
を活性化させ、
襲われ、出血した場合に備えて血管を収縮させたりします。
逆に、闘争・逃走状態では食事をしている場合ではないし、風邪などひいていても、それを治すことに身体機能のリソースを使っている場合ではないので、
消化機能や免疫機能は休止する方向に身体が反応してしまいます。
なので、過大なストレスがかかると、お腹がゆるくなったり、免疫力が落ちたり、血管が収縮したりするので、血管の病気になりやすくなったり、
また交感神経が活発化して止まらなくなって、逆に休息やリラックスをもたらす副交感神経は働かなくなり、不眠となったりします。
このため、長期にわたる慢性的なストレスが続くと、交感神経が過度に活性化され、心身に悪影響を及ぼすことがあります。
これが、ストレス関連の疾患(高血圧、心臓病、不眠症など)につながる場合があります。
ですので、それらの疾患の予防、免疫力強化等のためには、ストレスを溜めないということが重要になってきます。
闘争・逃走反応は、進化的には非常に役に立つものでしたが、現代の慢性的なストレスによって長期的な健康問題を引き起こすこともあります。
そのため、ストレス管理やリラクセーション(リラクゼーション)、セルフケアが現代では重要視されています。
2. 睡眠
ストレス状態の軽減方法としては、とりわけ休養、睡眠が重要です。
不眠は、うつ病のリスクを高めますし、
これが長期に渡ると交感神経優位となるため、
疲労の蓄積や、心循環器系への負担増となって、
高血圧等の生活習慣病へのリスクも高めるといわれています。
睡眠不足や不眠で悩んでいる人は多く、日本では5人に1人以上と言われています。
睡眠時間が短くても、全く大丈夫だという人もいますので、睡眠時間そのものにこだわる必要はありませんが、
自分でよく眠れたと感じられる睡眠をとる事が必要だと思われます。
一般的な快眠法としては、
① 毎日(休日も)同じ時刻に起きる
② 起床後、コップ一杯の水を飲み(目覚めを即し、体内時計を整え、生活リズムを高めると言われています)、
日の光をしっかりと浴びる(それにより、夜、睡眠を即すメラトニンというホルモンが分泌されやすくなるといわれています)
③ 就寝時間を決め、その2時間前には、勉強や仕事をするのを止め、オレンジがかった電球色の部屋で好きな音楽などを聴くなどして、リラックスして静かに過ごす(難しい本やTVやDVD、スマホ、パソコンも見るのをやめたほうがいいかもしれません)
④ 激しくなりすぎない運動する
運動は、抑うつの予防や、軽度の抑うつのセルフケアにも有効だといわれています。
⑤ 30分以上の昼寝を避ける
昼寝をする場合は5分~30分程度がよいとされています。
コーヒーは、摂取後15分〜30分後に覚醒効果が出始めるといわれていますので、昼寝前にコーヒーを飲んでおくと、15分〜30分後にすっきりと目覚められる効果が期待できます。
⑥ 就寝3時間前からカフェイン、タバコ、アルコールを避ける
⑦ ゆっくりとぬるめの風呂に入る
⑩ ストレッチなどをしてリラックスする
⑪ 少しの光や音も睡眠を妨げる刺激になるため、できるだけ暗く、静かで、適温の心地よい部屋で寝る。
そのためにカーテンを厚手にする、照明は全て切る、それらが無理なら、耳栓やアイマスクをする。
⑫ 寝具、寝間着などは、体を締め付けない自分が快適であると感じるものを使う
等があります。
ただ、あまりにも強く「絶対に快眠しなければならない。」「何がなんでも眠らなくてはならない。」と思いすぎることもよくないことでしょう。
万が一、眠れなくても、
① 「一日ぐらい眠れなくても、悪影響は出ない。」
② 「寝不足の日は、夜熟睡できるはずなので、次の日に解消できる。」
③ 「寝不足で失敗したとしても、それが自分の実力。
失敗することもあるのが人間。
一所懸命、今までやってきたけれども、それでもまだ実力が足らないとされて失敗したとするならば、もうこれ以上、頑張れないのだからしかたない。それもまた人生。」
と諦めて、開き直る。
(ここまで開き直ると、逆にあっさりと眠れたりする場合もよくあることです)
④ 「考え事は寝る前にしてもしかたない。明日、考えよう。」
などと考え、緊張しないようにするのが肝要かと思います。
これらの、快眠法を実施しても、不眠が解消しなかったり、眠りが浅かったり、激しいいびきをかいたり、
日中にひどい眠気を感じるような場合は、心身の疾病の可能性もあるので注意が必要なことでしょう。
3. 食事
ストレス状態の軽減方法としては、他に食事に気をつけるということがあります。
食事は、身体の健康だけではなく、心の健康にも大きく影響するといわれています。
ビタミンC、たんぱく質、カルシウムを適度に取ることはストレス耐性を高め、また毎日2食よりも、3食採る人は、抑うつ発症が低いといわれています。
4. リラクセーション(リラクゼーション)
リラクセーション(リラクゼーション)も有用です。
リラクセーション法の種類としては以下のようなものがあります。
A 呼吸法
呼吸には、胸式呼吸と腹式呼吸があります。
緊張した時や不安な時は、胸式呼吸になっているので意識的に腹式呼吸に切り替えるとよいといわれています。
① 背筋を伸ばし、他の部分に余計な力が入らないようにします。
② 軽く眼を閉じ、鼻からゆっくりと息を吸い込みます。
③ 吸い込んだら、口から長くそして静かにゆっくりと息を吐きます。
B 漸進的筋弛緩法
① まず前述の呼吸法などにより、リラックスします。
② 最初に、筋肉(手、腕、肩)に、力を思いっきり入れます。
③ その状態を5秒ほどキープします。
④ その後、一気に脱力します。
⑤ リラックスした、気持ちいい感じを充分に感じます。
即効性があって、効果的です。
一度お試しいただくと、その効果が実感できるのではないかと思います。
C 自律訓練法
自己暗示(自己催眠)により、心身をリラックスさせる方法です。
なお、この自律訓練法と次のアロマテラピーについては、専門家の指導を受ける、あるいは専門書等でよく知識を身につけた上で実施するのがよいとされています。
自律訓練法は、以下の7種類の練習法があります。
下記の言葉を声に出すか、心の中で唱えます。
① 基本公式・・・気持ちがとても落ち着いている(安静練習)
② 第一公式・・・両手両足が重たい(重感練習)
(通常、片方ずつ暗示します)
③ 第二公式・・・両手両足が温かい(温感練習)
(これも、通常、片方ずつ暗示します)
④ 第三公式・・・心臓が静かに、規則正しく打っている(心臓調整練習)
⑤ 第四公式・・・楽に呼吸している(呼吸調整練習)
⑥ 第五公式・・・おなかが温かい(腹部温感練習)
⑦ 第六公式・・・額が気持ちよく涼しい(額部冷感練習)
なるべく静かな場所で、椅子にゆったり座るか、仰向けの姿勢で行います。
一つの公式が終わると、消去動作をして締めくくります。
消去動作とは、両手にこぶしを作り、力を入れた後、ゆっくり開き、さらにおおきく背伸びをして、けだるい感じをとる動作です。
自己流で行うのではなく、専門家による指導を受けたり、自律訓練法に関する専門書籍をよく読んで、よく理解した上で行ったほうがよいとされています。
5. アロマテラピー(アロマセラピー)
精油(エッセンシャルオイル)を用いたリラクセーション法です。
精油とは植物の葉や、花、果皮、樹皮、樹脂などから水蒸気で蒸したり、圧搾したりして得られるもので、
植物の有効成分を抽出した揮発性(容易に蒸発する性質)の有機化合物のことです。
これらの精油は、アロマポットやアロマランプ(芳香拡散器)等を用いて芳香浴をしたり、
湯舟の湯に入れて沐浴したり、
洗面器等に湯を入れて、数滴滴らし、吸入したり、
トリートメントに用いたりして、心身・皮膚などに作用させることにより、
リラクセーション効果を得ることができます。
アロマテラピーも、正しく行うには知識や技術が必要となるので、自己流で行うのではなく、
アロマセラピストや、
アロマテラピーインストラクター、アロマテラピーアドバイザー等の専門家の指導の下に行う、
あるいは専門書籍をよく読んで、よく理解した上で行ったほうがよいことでしょう。
精油については、粗悪なものを用いると逆効果になりますし、また粗悪な精油を用いて、トリートメントや湯舟にたらして、沐浴したりすると健康被害が生じるおそれもあります。
また良質な精油であっても、用いる量が適切でないと、健康被害が生じる恐れがありますので、
前述しましたように、専門家の指導のもとあるいは専門書籍をよく読んで、よく理解した上で自己責任のもとで行うようにしましょう。
なお、これらのストレスケアを行い、一時的にストレス反応を緩和できたとしても、そもそものストレス要因が除去されなければ、再びストレス反応が生じるおそれがあります。
そこでストレス反応の根本的な解決を目指す場合は、ストレス要因そのものを除去し、ストレス反応を低減させる必要があります。
そのような行動をコーピングといいます。コーピングについては以下をご参照ください。
参考文献)