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ペイパーバック・ライター
私は、大きくため息を吐いた。
どうしよう、と頭を抱えた。
行くべきだろうか、あの場所へ。心が一気に5年前に揺り戻された。心臓が早鐘を打っている。ひどく動揺しているのがわかった。思わず両手で顔を覆う。じわりと目頭が熱くなった。手のひらが、ひたひたと濡れた。重い漬物石を乗せて開かないように蓋をしていたのに、彼の文字はいとも容易く蓋を開けてしまった。私は手紙を安易に開封してしまったことを悔いた。悔いて
ほんとうに出会った者に別れはこない。
巨星墜つ。谷川俊太郎が亡くなった。
彼の傑作詩『あなたはそこに』を引用し、個人的に思うことを書いてみよう。
おそらく今日、この詩が目についたものの、ちゃんと読んでいない人が大多数であろうから、帰りの道やベッドの中でもいいので、とにかく静かに、噛み締めるように読んでみてほしい。
いかようにも解釈できる2人の男女の話である。
あなたはそこに(谷川俊太郎)
あなたはそこにいた
退屈そうに右手に
【ばあちゃんと僕と金ちゃんヌードル】
僕が小学2年生の時だった。父親の両親、つまり僕にとってじいちゃんとばあちゃんと同居することになった。
当時中学生だった姉はばあちゃんたちに甘えることは少なかったが、もともと二人が大好きだった僕はそれはもうベタベタに甘えさせてもらった。
両親が共働きだったこともあって、学校から帰宅するとすぐにばあちゃんたちの部屋を訪ねてはお菓子をもらったりカップ麺を作ってもらったりしていた。
その頃、僕が1番好きだ
友よ、旅先で妊娠すな
友人のつぼみん(仮名)は旅行好きだ。
航空会社のポイントを貯めるために、修行のように全国各地をハードスケジュールで飛び回っていた時期もある。
ポイントでホテルを予約してくれたり、航空券を手早く手配してくれたりと、一緒に旅行する際は本当に頼りになる。
平成から令和に変わるゴールデンウィークの10連休を利用して、つぼみんとわたしはドイツ旅行に行った。
ドイツに到着し、地下鉄なども駆使しながら移
マフラーから顔を出した日
グルグル巻きにしたマフラーから顔を半分だけ出しながら私は迷っていた。
左斜め前にいる女性に声をかけるかどうか。
最初にその女性に気づいた時には、
そのままおとなしく知らんぷりをしていようと思った。
でも…
その日、私は大学の就職課からかかってきた電話で目が覚めた。25年前のことだ。
「市内の小中学校、全校に司書を配置することがさっき市から発表されました。ミーミーさんは司書希望だったでしょ?今から