ヱリ

3行の雑記と3行におさまらなかった小話、ときどきLINEの記録を投下しています。島とビールとアートが好きです。へんなものを見つけると嬉しくなります。

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マガジン

  • 大阪城は五センチ【創作大賞2024】

    創作大賞2024に応募した小説をまとめたマガジンです。 恋愛小説部門です。感想・スピンオフを書いてくださった方の記事も収録しています。

  • 自己紹介みたいな

    創作以外の記事やつぶやきをまとめています。自己紹介がわりになる、かもしれないです。

  • わたしたちのLINE

    日々のLINEから抜粋。昭和生まれの私と平成生まれの妹の雑談記録です。

  • ザッキ

    3行から5行の雑記。印象に残った一言や風景の覚え書きなど。

  • コバナシ

    1000字ほどの小話。心がへんてこな場所にトリップさせられた時のことを書きます。

最近の記事

  • 固定された記事

ミッドナイト・ランドリー【ピリカ文庫】

すすぎの音を立てるドラム式の洗濯乾燥機の中で、元気に泳いでいるのは河童だった。 洗濯槽が右に左に回転するたびに生み出される、ねじれた水流の中をほとんど転がるようにして、河童は短い手足で気持ちよさそうに水を掻いている。ウィルキンソン炭酸のずんぐりとした1Lペットボトルほどの大きさしかないので、河童はまだ子どもなのだろう。マンションの一階部分に完備されたコインランドリーの、二台並べ置かれたうちの右側の洗濯乾燥機を指差しながら、僕は先客に声をかける。 「これだめでしょ」 ベン

    • 静かなトラ

      君は、最強のトラがどんな虎だか説明できるか? 動物園の檻の中でぼんやりしていて、ほんまに君は吠えたり走ったりするんかと訊きたくなるような虎? いんや。そんな分かりやすいもんじゃあないよ。 ベンガル、アムール、阪神タイガース、よく聞くやつね。 いやいや、そんな分かりやすい虎だったらわざわざ説明を求めたりしないじゃないか。あれは虎だって誰もが分かるからね。 最強のトラはね、うんと静かなんだよ。 とっても、とっても。 全ての空気に虎の気配を忍ばせるんだ。風はぬるい。 最強のト

      • 創作大賞に応募した「大阪城は五センチ」で朝日新聞出版賞をいただきました 春に向けて頑張ります noteでの創作も変わらず続けていきます noteを始めて、文章を好きだと言ってくれる人に出会えて、文章を好きだと思える人に出会えて、心から幸せです これからもどうぞ宜しくです✨

        • ヨーグルッペ記念日

          土曜日。ヨーグルッペが飲みたいのに、何度言っても同居人がブルガリア飲むヨーグルトを買ってくるので、とうとう胸ぐらを掴んでしまう。 「ヨーグルッペ知らんのか。色調補正のときに露出もコントラストも最大値にしたせいで目鼻立ちがほとんど消滅したみたいな、女の子のイラストが特徴なんじゃ。りんご味のときは同じ顔で白雪姫のコスプレとかしてくれるんじゃ。ヨーグルトより、味はむしろマミーなんじゃ。買い間違えるなら百歩譲ってピルクルなんじゃ」 胸ぐらを掴んだ手を震わせながら述べ「いっぺん飲ま

        • 固定された記事

        ミッドナイト・ランドリー【ピリカ文庫】

        • 静かなトラ

        • 創作大賞に応募した「大阪城は五センチ」で朝日新聞出版賞をいただきました 春に向けて頑張ります noteでの創作も変わらず続けていきます noteを始めて、文章を好きだと言ってくれる人に出会えて、文章を好きだと思える人に出会えて、心から幸せです これからもどうぞ宜しくです✨

        • ヨーグルッペ記念日

        マガジン

        • 大阪城は五センチ【創作大賞2024】
          36本
        • 自己紹介みたいな
          40本
        • わたしたちのLINE
          19本
        • ザッキ
          92本
        • コバナシ
          13本
        • シロクマ文芸部
          40本

        記事

          かくれんぼ

          火曜日。AirPods の右の音だけがくぐもっているので耳から外し、スピーカーの平たい面をじろじろ眺めてみたけれど、特に変わった様子はない。 音楽の止まった、黒い光沢を帯びたこまかな網目と無言のまま見つめ合う。 どうしようもなく視線を感じて「こっち見てる?」念のために訊いてみると、ワイヤレスイヤホンに埋め込まれた精巧な六角形の複眼が、頷くみたいにまばたきをする。

          かくれんぼ

          金魚サロン

          火曜日。14時の予約で訪れた秋刀魚から「いい感じの出目金にしてください」と、背鰭の形に切り抜いた赤セロファン紙を渡される。 オーガンジーやチュールなど、透け感のある薄い生地を使うのが相場だと伝えたけれど首を振るので「かしこまりました」と微笑んで秋刀魚を掴み、ミシンの上に横たえた。 なめらかに光る背にフィルムを重ね、「ヒレをお持ち込みされた上に布じゃないので、オプション料金たくさんいただきますね」と説明義務をきちんと果たし、肉厚な身に針を降らせて一息に縫い付ける。

          金魚サロン

          永谷園のあさげを作る娘から、 「あのね、マンモスの時、あのーママより昔の時はね、味噌ってなかったんだって。で、ママくらいから味噌ってできたんだよ。昔のことを調べようって、いま学校で勉強してるの」 って教えられて、自分がこの世に何年生息してる生き物なのか、一瞬見失う日曜日の朝。

          永谷園のあさげを作る娘から、 「あのね、マンモスの時、あのーママより昔の時はね、味噌ってなかったんだって。で、ママくらいから味噌ってできたんだよ。昔のことを調べようって、いま学校で勉強してるの」 って教えられて、自分がこの世に何年生息してる生き物なのか、一瞬見失う日曜日の朝。

          アンブレイカブル・バルーン

          水曜日。「絶対もういっかい観ようね」と約束していた映画の公開が週末で終わってしまうのでLINEから誘うと、<親友との先約があってゴメン>と断られてしまったのでやるせない。 やるせないので空を仰ぐと、めいっぱい膨らませた風船の内側みたいな、引き伸ばされ張り詰め薄まってしまった青色が、秋晴れのすみずみまで渡っている。 きっと割れるのではなくひっそりとしぼんでいくんだろう青色の代わりに、音がよく鳴るような、丸まって乾いた大きな落ち葉ばかりを踏みながらTOHOシネマズのオンライン

          アンブレイカブル・バルーン

          サイゼリヤの天使

          月曜日。路面電車に乗り合わせたオバアが煙草を1ダースくちびるに挟んで、一度にふかしているので煙ったい。 「それ一本ずつ吸うやつですよ」と教えると、十二本の煙草の先がいっせいに赤く灯り、煙草をぎっしり咥えたオバアの鼻の穴から真っ白な流煙がふき出された。 ぐねり絡まり合いながら力強く立ち上る白煙が、一瞬サイゼリヤの天使みたいな像を結んだのを見て「あ」と小さく声を上げる。排煙のために窓が開かれ、頬杖をついた天使が縦長に伸びて散っていく。

          サイゼリヤの天使

          琥珀色のスケイトリイ【秋ピリカ2024】

          「ごうかいな こいをして たくさんのスキをしました」 私の手のひらの上で寝そべりながら、最後の式神がほがらかに言う。グリコの包紙をひとさし指でなぜながら「ヘタクソだねぇ、日本語が」と、あなたからよく言われた言葉を独りごちて顔を上げる。 対岸に広がる朽ちた町と、百年前に役目を終えた電波塔。此岸に暮らす人々から、電波塔は「高い」と言う意味の公用語で呼ばれている。本当の名前を知る人や、知ろうとする人はもういない。 「パーデンネン」 式神が囁くので「それはなあに」笑いながら耳

          琥珀色のスケイトリイ【秋ピリカ2024】

          夏の総集編2024【LINE】

          エンペンメンの記事を書いた流れでトーク履歴をさかのぼったら、豊作すぎて記事作成が追いつかなかったのでオムニバス形式での会話録。 <以下、わたしと妹のLINEの転記> ●家族旅行(飛行機利用)する日の朝に 私「やば寝坊した」 妹「オイオイオイ。私も今起きましたが寝坊ではなく計画通りです」 私「勇気出る」 (この後、結局わたしだけが遅刻) ●健康診断を終えて 妹「人生初バリウム。途中、地味に腕の筋力を試された。あれ本当に貧弱な人は逆さまになったとき落ちませんか?」 私「

          夏の総集編2024【LINE】

          リスの生態【LINE】

          思い通りには行かないんだなぁ。と、みつを的な心情になったので妹にLINEする。 <以下、わたしと妹のLINEの転記> 「今日は娘とクッキーを焼きました」 「2枚目のヤケクソ感」 「うまく型抜き出来ないから嫌になった」 「それにしたって手で成型するとか、手段はあっただろうに」 「親子で飽き性だとこうなる」 「私はシーフードヌードルとおにぎりを食べました」 「さいこう」 「そしてあと45分で、トマトパスタとライスコロッケがUberで届いてしまう」 「なぜ」

          リスの生態【LINE】

          甘酸っぱい肴ください【LINE】

          食後にビール飲みながら、ふと思い出し笑いをしたので妹にLINEする。 <以下、わたしと妹のLINEの転記> 「おとうさん昨日フロ入った?排水溝のふた空いてるし、シャワーがなんかヘタクソなんだけど。 っていう長男のセリフに、今日は朝からゲラゲラ笑った。酔っ払いはお風呂がヘタクソ」 (※長男は毎朝登校前にシャワーを浴びてます) 「シャワーヘッド掛けられなかったんだね」 「クロマニヨンは昨日また泥酔して帰ってきました」 「安定の泥酔」 「朝起きたらリビングの床で寝てた。

          甘酸っぱい肴ください【LINE】

          エンペンメンの系譜【LINE】

          曖昧にして生きてきた人生に今日こそ決着をつけようと思い妹にLINEする。 <以下、わたしと妹のLINEの転記> 「エアポッズ? エアポッツ? エアポッド? どれが正解ですか?」 「エアポッズ。だと思って生きてる」 「ありがとう。エアポッ……ンム って言って生きてた」 「笑笑笑笑笑」 「ポッズね」 「エアポッツとエアポッドは変換候補にAirPodsが出てこないのでエアポッズで間違いないと思います」 「すげえ。そうやって確認できるんだ」 「文明ってすごい」 「

          エンペンメンの系譜【LINE】

          蔓緒さんといぬいのラジオ(仮)に出た話

          生き別れの親戚、だとお互いに思ってる武川蔓緒さんと、「いぬいのラジオ(仮)」にお邪魔してきました。 先日の大阪文フリでお目にかかれたのをきっかけにラジオのお誘いをいただき、めちゃくちゃ光栄に思いながら二つ返事。 そして光栄に思いながら出演させていただき、 番組冒頭で行われる「いぬい探偵事務所コント」で、コントの締めとして探偵が飛び降りた後もゲストのみで続行。そして強制終了 コントの時だけやたら元気で、そのあとは何となくボーっとしてる スマホが高温になったことによりGo

          蔓緒さんといぬいのラジオ(仮)に出た話

          5時すぎに目が覚めたら季節が変わってたので、パジャマの上に裏起毛のトレーナーを着て朝散歩。 空の色が違う。虫の声が違う。土の匂いが違う。足首にあたる風が違う。 秋だなぁ。秋の小説を書きたくなるような天気だなぁ。と思いながら、早朝のコンビニでホットコーヒーを買う火曜日。

          5時すぎに目が覚めたら季節が変わってたので、パジャマの上に裏起毛のトレーナーを着て朝散歩。 空の色が違う。虫の声が違う。土の匂いが違う。足首にあたる風が違う。 秋だなぁ。秋の小説を書きたくなるような天気だなぁ。と思いながら、早朝のコンビニでホットコーヒーを買う火曜日。