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エッセイ・感想文

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自身のエッセイ(モドキ)、読書感想文・コンサート感想文などをまとめました。
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記事一覧

【エッセイ】ローソンさんありがとう

【エッセイ】ローソンさんありがとう

(ちょっと過去のお話)
明日の午後6時で、マンションの目の前のローソンが閉店となる。ここにはいつも、私がお風呂上がりにコーヒーを家族の分、買いに来ていた。

他にも、ゆうパックを出したり、コンビニ支払いのものを支払ったり、ポストに手紙を投函したり、ハガキを買ったり。もちろん、ウチカフェスイーツなども買っていた。

契約の10年が切れて、近くにセブンイレブンもあるし、イオンの近くにファミリーマートが

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【読書感想文】~あるいは差別について~『破戒』を読んで~

【読書感想文】~あるいは差別について~『破戒』を読んで~

島崎藤村の『破戒』を読んだ。忙しい中をぬってだったが、逆にじっくり時間をかけて読むことができた。

穢多である主人公が、ずっとその身分を隠して教師をしているが、解放運動家の死をきっかけに「ずっと身分を隠せ」という父の戒めをついに破ってしまうという話である。

歴史で穢多・非人などは習って知っていたものの、その実情、いったんその身分に生まれついたからには、その差別がいかほどか、そしてその身分を知られ

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【エッセイ】おかまを洗う女 

【エッセイ】おかまを洗う女 

「私、おかまを洗うのが得意なの」と、彼女は言った。

高校生の時の話だ。私の母校は、主管の先生というのが東組・西組・南組・北組(高等科はこれに中組も加わる)にそれぞれ3年間固定してついていて、その下で、生徒は毎年クラス替えがあるのだが、その彼女とは、なんと中1から高2まで、一緒のクラスだった。

特にどこのグループにも属さないでいたが、何かでグループ分けしないといけない時、私は彼女と同じグループに

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【感想文】ウィーン・フィルハーモニー@ミューザ川崎11.7(1回読み切り)

【感想文】ウィーン・フィルハーモニー@ミューザ川崎11.7(1回読み切り)

今年の目標「芸術に触れよう2024」もいよいよ最終回。最後を飾ったのは、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演。指揮はアンドリス・ネルソンス、会場はミューザ川崎シンフォニーホール。ちなみにチケット代金も今年最高額だ。まさしく締めくくりに相応しい華々しさだ。

まず驚いたのは、楽器の配置が、よくあるパターンとだいたい逆になっていた点である。客席から見て、バイオリンは右前方、その後ろにピアノやオ

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【読書感想文】天気売りさん

【読書感想文】天気売りさん

いしいしんじという作家の『ポーの話』を読んだ。何を間違えたか、エドガー・ポーにまつわるミステリーのつもりで買ったら、中身はおとぎ話風で、小学生後半から読めそうな感じだ。(ちなみに後で知ったが、いしい氏は新聞の人生相談の回答をされており、私は同性愛に関する回の彼の回答を読んで泣いたことがある。)

人間も出てくるが、ヘンな生物である主人公ポーとか、うなぎ女とか、ちょっと意味不明で、でもそれらは人間と

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【感想文】N響&シャルル・デュトワ@NHKホール10.30(後半)

【感想文】N響&シャルル・デュトワ@NHKホール10.30(後半)

3曲目 イーゴリ・ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」
この曲もさまざまな版で聴きこんだ曲である。だが版(あるいは指揮者?)により、かなり異なり、箇所によっては「違う曲なのではないか?」と思われるくらいの差異があるので(よって演奏時間も異なる)、この日の演奏も楽しみにして来た。

ストラヴィンスキー(1882―1971)の「春の祭典」は、1913年にディアギレフ率いるロシア・バレエ団がパリで

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【感想文】N響&シャルル・デュトワ@NHKホール10.30(前半)

【感想文】N響&シャルル・デュトワ@NHKホール10.30(前半)

今年の目標「芸術に触れよう2024」も、残すところあと2回。この日はNHK音楽祭と題して、ラヴェル「マ・メール・ロワ」、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」、ストラヴィンスキー「春の祭典」という有名どころのラインナップが演奏された。

1曲目 モーリス・ラヴェル 組曲「マ・メール・ロワ」
この曲はラヴェル(1875―1937)が親友夫妻の子どもたちにプレゼントしたピアノ連弾用の曲で、それがのちに管弦

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【感想文】人生初の「ブラボー!」ベジャール「ボレロ」@東京文化会館9.28

【感想文】人生初の「ブラボー!」ベジャール「ボレロ」@東京文化会館9.28

9月28日土曜、13時半から、上野の東京文化会館にて、モーリス・ベジャール・バレエ団の2024年日本公演のBプロ(ミックスプログラム)を観に行った。「芸術に触れよう2024」という私の目標では当初は入っていなかった予定だったが、大学生の頃観に行ったベジャールのボレロがどうしても忘れられず、また観たいと思ってダメでもともと検索してみたら、たまたま今年来日公演がある。また数枚の万札が飛んだが、迷わずチ

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【エッセイ】独白⑤~終章~

【エッセイ】独白⑤~終章~

(過去作)

私がこれからどうするのかって? それは誰にも分からないさ。

自殺を考える時、まさに実行しようとする直前、私はひどくもがき苦しむ。考えることは、自殺しても良いか否か、である。こんなことを自殺直前の人間が、哲学を引き合いに出して必死に考えようとするのである。死んでしまったら思考することは不可能である。だから生きているうちに思考するのである。それ故思考は専ら、死を否定しようと試みる。生を

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【ほぼつぶやき】ロンドン・フィルと 辻井伸行さんの共演@サントリーホール9.11(一応後半)

【ほぼつぶやき】ロンドン・フィルと 辻井伸行さんの共演@サントリーホール9.11(一応後半)

1曲目 : ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 Op.73《皇帝》」 
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 辻井伸行(ピアノ)

今回のライナーノートは、前半と後半が逆になると書いたが、この「一応後半」の方は、だから、2曲演奏された方の、1曲目になる。だが、そもそも、ライナーノートにすらなっていない、感想文にすらもしかしたらなっていない。私の「つぶやき」である。

そもそもの動機はマーラ

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【感想文】ロンドン・フィルと辻井伸行さんの共演@サントリーホール9.11(一応前半・今回は前半と後半の内容が逆です)

【感想文】ロンドン・フィルと辻井伸行さんの共演@サントリーホール9.11(一応前半・今回は前半と後半の内容が逆です)

「芸術に触れよう2024」今回はベートーヴェン「皇帝」とマーラー「交響曲第5番」である。チケットを取るきっかけは毎回違い、目的が演奏者だったり、指揮者だったり、楽団だったり、曲だったりするが、今回はおそらく今年の中では一番はっきりしていただろう。マーラーの第5番(第5楽章まである)の中の第4楽章を聴きたかったのだ。それがまずありきで、ロンドン・フィルと辻井さんは後付けだった、ハズなのだが……。

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【エッセイ】小説家ではないけれど

【エッセイ】小説家ではないけれど

私はまだ若い頃、今のSNSの先駆け的なものに1つ、2つ登録していたが、そのプロフィールに「自称日本一のその日暮らし女」なんて書いていた記憶がある。少しばかり(いや、だいぶ)YOSHIKIさんの生き方についてのエッセイ本などに影響されている感がなくもないが、意味は、賢い読者のみなさまならお分かりのことと思う。

本題に入る前に、YOSHIKIさんの生き方について少し書いておこう。
ファンになり始めた

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【エッセイ】独白④~狂人日記~  

【エッセイ】独白④~狂人日記~  

(過去作)

「つまり、私はこのように思うんです。
 既に気のふれた人間が、要するに、彼の主張するところの彼の理性をもってして、狂人とは何であるかを定義し得るのか、ということです。

学と名のつくものは、問いに対する解を追究するものですね。そしておよそ学と名のつく限り、それは理論的に他者に教えられうるものと考えます。哲学の問いとは、例えば、いかに生きるべきか、時間はいつ始まったか、誰が芸術家と呼ば

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【感想文】三大交響曲@芸術劇場8.18(後半)

【感想文】三大交響曲@芸術劇場8.18(後半)

2曲目はベートーヴェンの「交響曲第5番ハ短調作品67〈運命〉」。この名称もまた、ベートーヴェン自身による正式なものではない。さらに通称の由来(もしくは冒頭の4つの音)についても大きく2つの説があるようだが、措いておく。この曲は絶対音楽であるので、逸話に関しては私はあまり興味はない。

冒頭の4つの音、これをどうやって指揮するか、よく子どもの頃に父に試された。(父はいまだに趣味で吹奏楽団とオケでトロ

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