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【読書感想文】~あるいは差別について~『破戒』を読んで~
島崎藤村の『破戒』を読んだ。忙しい中をぬってだったが、逆にじっくり時間をかけて読むことができた。
穢多である主人公が、ずっとその身分を隠して教師をしているが、解放運動家の死をきっかけに「ずっと身分を隠せ」という父の戒めをついに破ってしまうという話である。
歴史で穢多・非人などは習って知っていたものの、その実情、いったんその身分に生まれついたからには、その差別がいかほどか、そしてその身分を知られ
【感想文】ウィーン・フィルハーモニー@ミューザ川崎11.7(1回読み切り)
今年の目標「芸術に触れよう2024」もいよいよ最終回。最後を飾ったのは、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演。指揮はアンドリス・ネルソンス、会場はミューザ川崎シンフォニーホール。ちなみにチケット代金も今年最高額だ。まさしく締めくくりに相応しい華々しさだ。
まず驚いたのは、楽器の配置が、よくあるパターンとだいたい逆になっていた点である。客席から見て、バイオリンは右前方、その後ろにピアノやオ
【感想文】N響&シャルル・デュトワ@NHKホール10.30(後半)
3曲目 イーゴリ・ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」
この曲もさまざまな版で聴きこんだ曲である。だが版(あるいは指揮者?)により、かなり異なり、箇所によっては「違う曲なのではないか?」と思われるくらいの差異があるので(よって演奏時間も異なる)、この日の演奏も楽しみにして来た。
ストラヴィンスキー(1882―1971)の「春の祭典」は、1913年にディアギレフ率いるロシア・バレエ団がパリで
【感想文】N響&シャルル・デュトワ@NHKホール10.30(前半)
今年の目標「芸術に触れよう2024」も、残すところあと2回。この日はNHK音楽祭と題して、ラヴェル「マ・メール・ロワ」、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」、ストラヴィンスキー「春の祭典」という有名どころのラインナップが演奏された。
1曲目 モーリス・ラヴェル 組曲「マ・メール・ロワ」
この曲はラヴェル(1875―1937)が親友夫妻の子どもたちにプレゼントしたピアノ連弾用の曲で、それがのちに管弦
【感想文】人生初の「ブラボー!」ベジャール「ボレロ」@東京文化会館9.28
9月28日土曜、13時半から、上野の東京文化会館にて、モーリス・ベジャール・バレエ団の2024年日本公演のBプロ(ミックスプログラム)を観に行った。「芸術に触れよう2024」という私の目標では当初は入っていなかった予定だったが、大学生の頃観に行ったベジャールのボレロがどうしても忘れられず、また観たいと思ってダメでもともと検索してみたら、たまたま今年来日公演がある。また数枚の万札が飛んだが、迷わずチ
もっとみる【ほぼつぶやき】ロンドン・フィルと 辻井伸行さんの共演@サントリーホール9.11(一応後半)
1曲目 : ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 Op.73《皇帝》」
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 辻井伸行(ピアノ)
今回のライナーノートは、前半と後半が逆になると書いたが、この「一応後半」の方は、だから、2曲演奏された方の、1曲目になる。だが、そもそも、ライナーノートにすらなっていない、感想文にすらもしかしたらなっていない。私の「つぶやき」である。
そもそもの動機はマーラ
【感想文】ロンドン・フィルと辻井伸行さんの共演@サントリーホール9.11(一応前半・今回は前半と後半の内容が逆です)
「芸術に触れよう2024」今回はベートーヴェン「皇帝」とマーラー「交響曲第5番」である。チケットを取るきっかけは毎回違い、目的が演奏者だったり、指揮者だったり、楽団だったり、曲だったりするが、今回はおそらく今年の中では一番はっきりしていただろう。マーラーの第5番(第5楽章まである)の中の第4楽章を聴きたかったのだ。それがまずありきで、ロンドン・フィルと辻井さんは後付けだった、ハズなのだが……。
今
【感想文】三大交響曲@芸術劇場8.18(後半)
2曲目はベートーヴェンの「交響曲第5番ハ短調作品67〈運命〉」。この名称もまた、ベートーヴェン自身による正式なものではない。さらに通称の由来(もしくは冒頭の4つの音)についても大きく2つの説があるようだが、措いておく。この曲は絶対音楽であるので、逸話に関しては私はあまり興味はない。
冒頭の4つの音、これをどうやって指揮するか、よく子どもの頃に父に試された。(父はいまだに趣味で吹奏楽団とオケでトロ