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静かな感動が生まれたnote

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透明感と美しいことばの宝物。
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その音は、届いていた。 高橋久美子『いい音がする文章』

その音は、届いていた。 高橋久美子『いい音がする文章』

 読了、と言っていいのだろうか。

 知らない曲。サビしか思い出せない曲。
 読んだことのない本。ぼんやりとしか覚えていない本。

 いろんな作品がたっぷり引用されている。その一つひとつを、たどりたい。でも、それを待っていたら感想も何も1年後くらいになってしまいそうなので、一回通して読んだ今、筆を取って……いや、キーボードを指で弾いている。

 本当はね、しっかり調べて書かないと「それはただの感想

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15年で10のプロジェクトが中止になっても諦めない理由

15年で10のプロジェクトが中止になっても諦めない理由

「君はやっぱり研究に向いているね」

5年ほど前、数名しか入れない小さな会議室で、私は上司とテーブルをはさんで向かい合っていた。
小一時間ほどの面談の最後に笑顔で言われたその一言が今も私を支えている。

◇◇◇

私は製薬メーカーで15年ほど研究職を務めている。

創薬研究は非常に成功確率が低い。

例えるなら、無数の針山の中から他より1mmだけ短い針を素手で探すようなものだ。
さらにやっかいなの

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絶望と絶望

絶望と絶望

クッキークリームのアイスクリームを明日も食べたい。今、私の心の中にささやかな希望が残っているとすればそれだけだ。

絶望、それはいったいどこからやってくるのだろうか。

思いもしない事故や災害などで急にやってくることも多いだろう。晴天の霹靂、そんな絶望も世の中には多々ある。

ただ、私の絶望はそうではなく、日々暗い静かな足音を立てて近付いていた。
最初はその足音にほとんど気付かなかった。
その足音

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野菜にぶん殴られて、泣いた日の話

野菜にぶん殴られて、泣いた日の話

野菜にぶん殴られて、泣いたことがある。

玉ねぎの刺激に、ではない。
ほぼ鈍器みたいなかぼちゃに、でもない。

春、小料理屋で、蕗に泣かされたのである。

22歳のわたしは、日々の暮らしに擬態する虫だった。同級生は次々に社会人として羽化し、立派に羽ばたいていくのに、わたしは就活から離脱したまま人生のレールを敷けず、いつまでも飛べないままだ。惨めで、恥ずかしくて、今にも消えそうだった。

「ちゃんと

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離婚した話。あるいは、今日を生きる彼女と、明日を生きる僕の話。

離婚した話。あるいは、今日を生きる彼女と、明日を生きる僕の話。

人生があんまり上手くない自覚があるのだが、今回もそういう類の話だ。

先日、離婚した。届けが受理されたのが10月末だから、もう3ヶ月近く前だ。

これまで発信しなかった明確な理由はない。あえて言うなら、何を書けばいいか分からなかった、というのが一番近い。元妻に迷惑をかけたくないので、僕が見た景色を直截に書くのが難しかった。そうなると、人生を剥き出しにして本音を書いている普段の僕の芸風が使えない。し

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離婚を決意した1年前の私、ありがとう

離婚を決意した1年前の私、ありがとう

私ごとですが、離婚して丸1年が経ちました。

色々と思うことはあるけれど、
今の気持ちを一言で表すと

「離婚してよかった!!!!!!!!!」

これに尽きます、本当に。

結婚したときは未来への希望をいっぱい抱いていたのに、離婚するときは未来への不安しかなくて。

当時31歳にして、1人暮らしの経験なし、職業フリーライター。
だけど、今まで元夫の収入に甘えていた部分があるから1人で生計立てられる

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書き始めて分かった、自分の中にあった「表現したい」マグマ。書いていないと爆発してしまうかも

書き始めて分かった、自分の中にあった「表現したい」マグマ。書いていないと爆発してしまうかも

——國學院大學メディアnoteのお題企画「#私のコレクション」にご参加いただき、ありがとうございました。そして受賞おめでとうございます。

ありがとうございます。でも、noteに書いたとおり、真の受賞者はコレクションをしている息子だと思います。

——今日は、息子さんのKくんも来てくれました。せっかくなので、お母さんを受賞に導いたコレクションについてちょっと聞かせてください。Kくん、鳥が大好きなん

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次男は中学生だけど幼くてかわいい。先日、「ママがもし地獄に行ったら僕も一緒に行くよ。でももし僕が地獄に行ったらついてこなくていいからね。天国へ行ってね。」と言われ、プロポーズかと思って泣きそうになった。「いや、わたしも一緒に地獄へ行くよ!」と言った。演歌の世界観の2人だった。

公開しても読んでもらえなかった経験や、コンテストであっさり落ちた経験や、仕事で書いた原稿が真っ赤になって返ってきた経験。そのとき、「恥ずかしい」思う経験は、忘れた頃になって役に立ってくれたり力になってくれたりするものだなあと、いまあらためて思います。だから大丈夫だなと思います。

東京のウェブ業界で働く夫婦が、北海道に移住してワイナリーを継ぐ理由

東京のウェブ業界で働く夫婦が、北海道に移住してワイナリーを継ぐ理由

私は本業が医療記者ながら、イタリアンレストランのアルバイトでワインを出し、好きが高じて今年10月、日本ソムリエ協会ワインエキスパートの資格を取ったぐらいのワインラヴァーだ。

そんな私が身悶えするほど羨ましい転職をしようとする知人の話を聞いて、すぐさま取材を申し込んだ。

その人は、ここ「note」の運営をしている志村優衣さん(36)と玉置敬大(たかひろ)さん(39)。なんと北海道・余市のワイナリ

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父さんが泣くのを初めて見た日

父さんが泣くのを初めて見た日

父さんは、人と会うときにいつも、手製のフォトブックを持ってくる。
当たり障りのない挨拶を済ませると、おもむろに鞄からフォトブックを出して、どこの誰だかわからない人と一緒に写っている写真を見せ始める。そして、自分と関わりのある人がこんなにもすごい経歴があって、その人が自分のことを一目置いてくれている、といった内容を得意そうに喋るのが常だった。

父さんはとにかく長話で、放っておくと何時間でも一人で喋

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noteの3000円の使いかた。未来へのマルチフラグメントストーリー。

noteの3000円の使いかた。未来へのマルチフラグメントストーリー。

原田ひ香さんの本
『三千円の使いかた』

お金(三千円)を通して、人生や家族、価値観
そして自分自身を見つめ直すお話です。
家族それぞれの三千円の使い方。

『三千円の使いかた』を読んだ後
私も「三千円」に特別な思いを
馳せるようになりました。

今日はnoteの三千円の使い方です。

noteで1000円無印良品とか
1000円サイゼリヤとか見かけます。

もしもnoteで3000円使えるとした

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人生で、審査するってレア体験やん?|モノカキングダム👑通信

人生で、審査するってレア体験やん?|モノカキングダム👑通信

そろそろ別のことも書きたいけど、いまはこれですね。昨日もつぶやいたけど、現時点でエントリーが、え?75本!?えらいことになってますね。100本いくかどーかはわからんけど、まだ4日あるし。週末も含むし。

ぜひ、じーっくり読んでください。あなたが心を込めたように、みんなも同じように込めてるんで。

で、ですよ。わたしがこの大会を盛り上げるワードとしてよく言うのが「ごちゃごちゃ言わんと、誰が一番ええも

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