『玉と石の神話26』 神妙に聞き入る金剛、琥珀、トパーズ、青、紅、エスメラルダを、王は静かに促し、奥へと誘った。 金剛だけが黙って付き従い、他の者は、皆一様に顔を見合わせ、意を決したように後に続いた。 「ここは……」 長い廊下を通り抜けた先の重厚な扉。王はその前で皆を振り返った。
『天の川』 時に交わっては離れ、流れていた二つの川。いつしか彼らは、広がり続ける宇宙の隅々までをも潤す事に疲れ果てた。 それを知った星々は、軌道を変えると次々とぶつかり合って小さな欠片となり、互いに混ざり合うように流れ始めた。 二川は、こうして一川に見えるようになったのである。
『玉と石の神話24』 皆一様に、猛き王を想像していただけに、その穏やかな表情とやわらかな声に意表を突かれた。だが、その佇まいは、一国の王として納得させるだけの威厳に満ちている。 「……! ご、ご尊顔を拝し恐悦至極に存じます」 魂を抜かれたかになる中、我に返った琥珀が口上を述べた。
『ウラバナ2』 「今年も大変だった…」 眠気と闘いながら織姫は思った。 何せ夫とは年一しか逢えないワケで、一年分イチャコラしておかねばならない。そこは最早、前倒しなのか後払いなのかすら不明なのだが。 一年後の夫を待ちわびつつ、近所のBF達と過ごす一年にも思いを馳せる織姫であった。
『玉と石の神話23』 その日、琥珀、トパーズ、青、紅、エスメラルダを伴い、金剛は王との謁見に望んだ。全員で跪拝する。 「よう集まってくれた。皆、顔を見せて欲しい」 瞬間、金剛を除く五人は魂を掴まれたような感覚を覚えた。それが王の声によるものだと、最初に気づいたのはトパーズだった。
『玉と石の神話7』 青、紅、エスメラルダの密やかな努力により、少しずつ仲間が集い始めた。 だが、それにより、思いもよらなかった事実を知りもする。かつて金剛と親しかった者の幾人かが、既に儚くなっていた──などである。 一方では、王が危惧した通り、不穏な動きを見せる国も現れていた。
『玉と石の神話10』 琥珀が眉をひそめた。 「意図はわかっておる。だが、では、お主の方は私の言う意味を理解しているか?」 二人の話を聞き入る他の者たちも、生じた間に緊迫する空気を感じた。 「お主は我らをひとつ所に、と思うたのであろうが、それが徒となったこと、わかっておるのか?」
『玉と石の神話9』 金剛を見据える琥珀の眼差しは厳しさを含んでいた。それこそ非難をすら含んでいる。 「では、何故来てくれたのだ」 「訊きたいのは私の方だ。何故一国の招集に応じた?」 一呼吸視線を交えた後、金剛は静かに口を開いた。 「そなたにわからぬはずないと思うておるのだが……」
『玉と石の神話6』 「最近、我らの仲間が減っている事に気づいていよう」 「はい。絶滅した一族も……」 金剛が厳しい表情で頷く。 「所在を確かめる事で、知らぬ間に行方知れずになる仲間を減らしたいのだ」 「金剛様……」 居所を知る限りの仲間を当たると、エスメラルダは金剛に約束した。
『玉と石の神話4』 「琥珀様とトパーズでございますか?」 「そうだ。琥珀の居場所にトパーズもおるはず……」 青と紅は顔を見合わせた。 「……少し前の事になりますが、エスメラルダが南方でトパーズを見かけたと、噂を聞き及びました」 「エスメラルダが……」 金剛は腕を組み、考え込んだ。
『玉と石の神話5』 琥珀とトパーズの居所を訊ねるため、金剛はエスメラルダに使いを飛ばした。 金剛の呼びかけに応じたエスメラルダは、まず金剛が王の招集に応じた事に驚くのであった。 「金剛様が仕える主を持たれる日が来るなどと、思ってもみませんでした」 その言葉に、金剛は静かに頷いた。
『玉と石の神話8』 琥珀発見の報が届いたのは、それからすぐの事であった。古い付き合いの二人が向かい合う。 金剛の意図を察したのか、琥珀はトパーズの他にも数人の仲間を連れていた。 「助かったぞ、琥珀」 「金剛よ……勘違いするな。お主の為ではない」 強い視線を向け、琥珀は言い放った。
『玉と石の神話3』 初めて王の子である双子に謁見した金剛は、そのあまりの美しさに息を飲んだ。と同時に、王と同じく、儚さに不安も覚えた。 「青、紅……御子たちをお護りするため、皆の力を貸して欲しい。今、他の教え子たちも呼び寄せているのだが……お主たちあの二人の行方を知らぬか?」
『玉と石の神話』 いつの頃か、いずこの話か。 ある王の元に、得も言われぬ美しい双子が産まれた。 王は喜び、それ以上に心配にもなった。乳白色の肌、絹のような髪の子供たちは、美しくはあってもか弱く見える。 王は、強者と定評のある者を護衛として召し抱える事にした。 その名を金剛と言う。
『玉と石の神話2』 王に応じる条件として、金剛は己の信頼する者の招集を提示した。無論、王は快諾したが、真っ先に呼び寄せたかった二人の行方は掴めず、彼らを捜す為にも、金剛はサファイヤの青とルビーの紅を招集する事にした。 尊敬してやまない金剛からの招集に、二人は馳せ参じるのであった。
『ウラバナ1』 素戔嗚は思った。 手弱女と思っていた櫛名田は、中々どうして手強い女子である、と。 「櫛名田。そなたの姉達を祀る宮も作ろうと思…」 「ありがとうございます」 ニッコリ笑う妻に、姉達が大蛇に食われた話は本当なのだろうか、と疑惑の暗雲が立ち込める素戔嗚なのであった。