〘お題リレーde神話〙Blue Ever Garden
note神話部の創部2周年記念企画『お題リレー』参加作品です。
文字通り、前の方からトスされたバトンを使って創作するので、つなげたバトンがどんな風に変化して行くのかがキモです❢
つたないことこの上ありませんが、匍匐前進の体ご容赦のほど、なにとぞー!w(私は鈍足)
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受け取ったバトン
『庭』
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『Blue Ever Garden』
庭[ garden【英】]: guard(囲い・守る)、Eden(悦び・楽しみ)を合わせた造語。
語源はヘブライ語。囲まれた、天国のような場所
*
美しいなどと
失い難いなどと
思ったことはなかった
あの時まで
*
「おねえさん、誰? どうしてここにいるの?」
少年の問いに、遠くを見ていた女が反応した。
美しい横顔。登るには困難な大岩の上に、女は当たり前のように立っている。
「……待っている」
「待ってる? 誰を? それより、どうやって家の庭に入ったの? どうやってそこに登ったの?」
質問攻めにゆっくり振り返った女の顔を見、少年は息を飲んだ。艶を含む黒い髪が揺れ、濃い茶色の左目と深い青の右目が見下ろしている。
(きれいだぁ)
見惚れていると、無造作に踏み出した女が宙に身を躍らせた。
「わぁ!」
重力を感じさせない程ふわりと着地した女に目を剥く。
(あんな高いとこから……!)
呆気に取られる少年に、女は微かに首を傾げた。
「家……?」
「うん。ここはぼくん家の庭だよ」
少年の顔をじっと見、うなずく。
「なるほど……似ている」
「似てる? ぼくが? 誰に?」
さっきまで見ていた方へと視線を戻し、女は答えた。
「お前の祖先たちだ」
親や祖父母ならまだしも、あまりに遠い相手との比較。女と少年の歳が大きく離れているとも思えない。
「何でご先祖様に似てるなんて知ってるの!?」
警戒より興味が先に立った少年は頬を紅潮させた。
「姿かたちだけの話ではないぞ。だが、お前の祖先たちには何度も会っている。最後に会ったのは150年程前だったか……この家の血筋には少々恩があってな」
咄嗟に意味がわからず、頭の中で言われた意味を反芻する。主に『150年』のところを。
「あなたは……見かけはおねえさんだけど違うの?」
この事態をストンと受け入れた様子に、女は微かに口角を上げて「やはり似ているな」とつぶやいた。
「そうだな。お前の祖母よりもずっと歳上だ。この地球とほぼ同じ歳と言っていいからな」
「!!」
次元を超えた返答に、少年は驚くより先に目を輝かせた。
「ね、ね、地球が出来たのは何年前なの? 誰が創ったの?」
「どのくらいになるか……もうはっきりとは憶えていない。だが、この世を創ったのも、私を生み出したのも同じ方だ」
「じゃあ、あなたも神様なの!?」
少年の前のめりにも特に動じる様子がなかった女の目が、刹那、まばたきを止める。
「そう呼ぶ者もいる。が、『神』と言う概念は、あくまで人が作り出したものだ」
首をひねる少年に、再び女の口角が上がった。
「お前には少し難しいかも知れんな」
そう言って、大岩の上に戻ろうと踵を返した女の手を、少年は咄嗟につかんだ。
「どうした?」
「あの……ぼくもこの岩の上に登ってみたい……です……」
『もう少し話をしたかった』
気恥ずかしさから言えなかった少年の頭を、女は思いの外やさしく撫でた。
「少しだけだぞ」
途端に少年の身体がふわりと浮き上がる。
「わあ……!」
初めて立った大岩の上。西の方角には陽が沈もうとしており、少年は女が眺めていたのが東の方角だったと気づく。
「そろそろ日が暮れる。家族に心配をかけるなよ」
「あなたは帰らないの?」
「私は夜明けまでここにいる」
「え!? だって夜は真っ暗になっちゃうよ!? お腹空かないの!? それに暗いと迷っちゃうよ!?」
ついさっき語った突拍子もない創世の話より、そちらの方が驚きを誘うのかと女は笑った。
「問題ない。私にとってはこの惑星自体が庭のようなもの……いや、私そのものと言って良い。行けぬ場所などないし、まして迷う事などありえない」
「この惑星が……?」
驚いて目を見開く少年に、女は深くうなずいた。
「そうだ。他の惑星もだが、この惑星は殊に……元々、我らの庭にするつもりで創られた。人が造る『庭園』と思えばいい」
「庭園……」
「風も水も火も……皆、各々この惑星に遊ぶ。自由にな。そして、時に眺めては想いを巡らせる」
「なら、何であなたは夜明けまでここにいるの? 何を待ってるの?」
「私は……」
女は何かを探すように遠くを見た。
「暁を待っている」
その返事に少年は拍子抜けした。何かもっとすごい答えを期待していたのだ。だが、返事の内容はともかく、女の様子には何かしら感じるものがある。
「どうして、こんなところで待ってるの?」
「ここは特別な場所だから」
即答だった。
「何で? どうしてここが特別なの?」
「お前は好奇心旺盛だな」
「だって、気になるよ」
女は少し苦味を含んだ笑みを浮かべた。
「いずれ知る事にはなろうが……まあ、これも何かの縁だろう……憶えておくがいい。この場所……この岩の真下が、この惑星の始まりの場所……原点だからだ」
「ええっ!?」
「この惑星の全てが、ここから始まったのだよ」
親たる神がこの世を創り、そこに丸い惑星たちを浮かべた時の事。
球体を作るにあたり、中心の周りに均等に肉付けをしてゆく方法を取らず、一点を定め、そこを原点とした。球体が出来上がった時、原点はちょうど南北の中間付近の地表に在った。
本来なら、原点を惑星の天辺──頂点にすればわかりやすかったのだが、彼らは要であるそこに軸を差したくなかった。故に、その時にたまたま頂点に来ていた場所に軸を差し込み、さらに僅かに傾けて原点の存在を霞めた。
この惑星が公転に対して傾いているのはそのためなのだと言う。
「そうだな。原点と言うのは、人の身体で言うなら、臍、になるか」
「ヘソ……」
少年が、服の上から自分のヘソを押さえたのを見、女は目を細めた。
「しばらくは何事もなかったが、『人』が生まれると問題が起きた。時折、重要な場所である事を嗅ぎ付ける者が出て、そのたびに奪い合いが絶えなくなってな。我らは余程の事がない限り、人の生の流れには介入せぬのだが……一度、本当に全てを消し去ろうと思った事がある」
苦々しく言った女は、だが、直後に表情を和らげた。
「その時、ここを死守してくれた男が、お前の家の始祖となった者だ。だから私は、その礼として一族を見守ってゆくと約束した」
女は遠くを眺めたまま視線を動かさなかったが、まだ何かを話そうとしている気配を感じ、少年は待った。
「その男の弟が、お前の直接の祖先にあたる。お前の祖先たちは、その後もたびたび起こった争いを退け、手を尽してこの地を守ってくれた。他人が入り込む余地のない庭にしているのも、そのためだ」
まるで夢物語のような話だったが、女が嘘を言っていない事は少年にも理解出来る。
「わかるか? お前の祖先はこの庭を守る事で私たちの惑星を、ひいてはお前や人々の運命をも守ってくれたんだ。もし、あの時、彼が収めてくれていなかったら私は……この惑星ごと壊していたかも知れぬ」
祖先への感謝と共に、少年の中でもう一つの疑問が首をもたげた。
「……どうして、暁を待っているの?」
今度の返事には間があった。
「……彼が、この惑星と、この惑星の暁の美しさを私に教えてくれたから……共に眺めた暁が、それまでに目にした何よりも美しかったからだ」
夕陽に照らされた女の横顔を見、少年は自分もこの庭を、延いては神々の惑星が永久に青く在るよう、力を尽くそうと決意した。
何より、この神の話を、神との対話を伝えてゆこうと。
*
少年は後に、一族の始祖がその名に『暁』の意を冠していた事を聞き、女が真実待っていたのは『暁の名を持つ者』との邂逅だったのだと知る。
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この話は、既存の有名神話から完全に浮いてしまった妄想像モリモリ神話です。地球というか、宇宙創世を勝手に作った感じですねw
遥か昔、まだノートに妄想マンガを描きまくっていた頃に山ほど作った抜粋設定からさらに抜粋したひとつなのですが、その時の漠然としたイメージが、『地球という大樹の化身である女神』でした。
それから少し経ってからだったか……某有名大御所作家さんがまさに『地球樹の女神』というタイトルの小説を発表され、驚くやら嬉しいやらだったのでしたw
それにしても、前走の部長からバトンを受け取った時、『庭』なら行けそう~なんて気楽に考えていたのですが、トンでもなく浮かばなかったという体たらくw
別の抜粋部分を使い、舞台設定をある方からお借りしてオマージュにしようと書き始めたものの、ものの40秒で文字数制限内に収まらないことに気づいて挫折……完全なる抜粋になってしまったことをお赦しくださいwww
そして最後に、note神話部 創部2周年 おめでとうございます❢
そしてそして、これからもよろしくお願いします❢
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すーさん!よろしくお願いします!
(((((ノ゚Д゚)ノ⌒パ⌒ス⌒🖋️ヽ(゚Д゚ )))
トスしたバトン
『暁』
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