〘夏祭り2023〙 真夏の夜のアレ
本日、算盤パチパチ 2023年8月8日。
草木も眠る丑三つ時前……。
矢口れんとさん 率いる 神話創作文芸部ストーリア(旧・note神話部)恒例『夏の企画2023』参加作品です。
このたび4回目の夏の企画となります。
今回のテーマは『ストーリア学園』!
学園ものです!!(遠い目)
この夏、どんな学園ストーリー ( by Mythology ) が繰り広げられるのか乞うご期待!
ひとまず初日( 始業式 は昨日)、タワシめが担当させていただきますので、よろしゅうお頼み申します!
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『真夏の夜のアレ』
夏──開放感あふれる季節
夏──汗があふれる季節
夏──合宿、ファイヤー、肝だめし……
ここ、帳友町にある帳友学園・神話研究創作妄想検証部(以下「ダベり部」)にも夏合宿の日が近づいていた。共同生活を通じて活動と交流を深めるのが目的だ。
「果たしておれたちの活動は活性化させるに値するのか」
「大丈夫。予算確保の活動だから」
部長である水生が凪いだ瀬戸内海のような笑顔で答えた。何が大丈夫なのかは定かでない。
((不安しかねぇ/ない……))
こうして汗と不安にまみれた合宿は幕を開けた。
✮
「ここだ」
顧問・太日向の言葉に皆のテンションが上がった。
「旅館だ! しかも、ストーリア学園も泊まるみたいだぞ!」
『帳友学園・神話研究部御一行様(だいぶ端折られてる)』の隣に『ストーリアインターナショナル学園御一行様(以下「ストーリア学園」という)』とあり、さらにテンションが上がる。
「あまりのレベルの高さに〈神の領域〉とまで呼ばれているあのストーリア学園か! 何のレベルなのかは定かじゃないけど!」
──と、その時。
「太(日向)陽(久)たちジャないカ!」
「アラ!」
「「…………」」
顧問2人が見るからに欧米系の男女に声をかけられた。しかし、副顧問・月夜野までが完全に無視しており、よほど関わりたくない相手なのだと部員は察した。
「ボクたちも生徒とキテるんだ」
めげずに話しかける様子に気の毒感がつのる。
「先生たちのお知り合い……?」
「ボクたちはストーリア学園の引率。ティースミスと、ボクはリスキーノ。太陽とは研修で仲良くなったンだ」
「ストーリア学園の先生なんですか」
「そうだヨ」
太日向たちの様子から、仲良しと言うより単なる顔見知りに違いないと察しつつ「あ~」で誤魔化す。
「ストーリア学園の世界研究部の子たち。勢斗、石須、大空、三門だヨ。仲良くしてネ」
「こちらこそ。水生です」
「金城です。後は略します」
「「ひでぇw」」
「時間ないから」
「「マジか」」
「だってほら、先生が」
金城の視線の先で太日向が腕組みをしている。
「早く来い。荷物を置いて集合しろ。予定を説明した後は各自予習だ」
「「はーい」」
🐤翌🐤日🐤
ゆるやかに登りつめると歴史ありげな鳥居と社が現れた。両脇には見事な大杉が二本そびえている。
「よーし、皆。ここが今回の目玉だ。まずは復習。水生、金城、チェックしろ」
「「はい」」
「木島、この妻夫返山とは?」
「N県の三〇山と所縁があるとされてます」
「海音寺、三〇山と言えば?」
「大神神社です」
「地場、大神神社と言えば?」
「大物主を主神、大己貴と少彦名を配神として祀ってます」
「火村、大己貴と少彦名と言えば?」
「国造りですっ!(肺活量オバケ」
「冥神、大物主と大己貴は?」
「同一神と言われてます……(ボソ声」
「土井、大物主が顕現した姿は?」
「蛇です」
「天谷、大己貴と言えば?」
「女好きです!」
「間違ってはないがソレじゃない」
「言っちゃったw」
〈苦節数作目、初めて自分の名前が呼ばれて生徒たち内心歓喜なう〉
「面白そうだネ。ボクらも入れてほしいナ?」
後からやって来たリスキーノが目をキラキラさせているが、太日向は答えようとしない。生徒4人は背後で様子を窺っている。
「続けるぞ。この妻夫返山に祀られているのは?」
「太陽。ボクにも質問してほしいヨ」
「誰かいないか」〈完全にスルー〉
「「三〇山の主・大物主と同一とされる大国主命です」」
水生と陰に隠れていた勢斗が同時に答えた。
「それから?」
「「大国主命の正妃である須勢理毘売命です」」
今度は金城と石須が答える。
「有名な夫婦神に所縁があるにも関わらず知名度が低い理由は?」
「え、と……」
「そもそも、何故二柱が祀られるようになった?」
「え、と…………」
大空と三門がモニョり、
「今回、それも調べたくて来たんです」と勢斗が付け加えた。
「仕方ないな。月夜野先生」
「はい。では、二つの山について考察し、明日結果を発表してください」
「「はーい」」
「よーし。とりあえず関連してる場所を巡るぞ。肝だめしするから地理も把握しとけよ」
「「きっ、肝だめし……!」」〈外灯皆無の山です〉
🐤翌🐤日🐤
「では発表してもらおう」
天谷と大空が大判の模造紙を、冥神と三門が日本地図をボードに貼り付けた。
「まず、二つの山ですが……印のところが妻夫返山と三〇山です」
木島が言う通り、地図上には赤い✕印が記されている。太日向が頷くのを確認し、金城がボードの横に立った。
「ざっくりですが、これは日本列島の火山や地脈の流れです。必要なトコだけ地図に書き加えたものがこちら」
勢斗と水生がもう一枚の地図を貼った。
「なるほど」
太日向が楽しげな顔、月夜野は感心した顔をし、リスキーノとティースミスはアホ面で首を傾げる。
「それで?」
今度は海音寺、土井が『今日から記紀神話(仮名)』という本を持って前に出た。
「国造りのため各地に赴くたび、大己貴は現地の女性と懇ろになったと言われてますが、実は空白の時もあったようです」
「国譲りの末に幽冥界の主となってもたびたび地上で過ごしていて、その場所がこの山とされてます」
「それを証明するかのように、三〇山のある地点と妻夫返山のある地点は地脈でダイレクトに繋がってます。それが二本の大杉なのです」
地場と火村が地図の前に立つ。
「あの大杉には三〇山の杉と同レベルの霊性が宿っていて、老人の形をした大国主が周辺の民と交流していたと伝えられてます」
「浮気がバレた時の逃げ場にしていたと思われます!(肺活量オバケ」
教師陣から拍手が起きた。
「最後の言い草はアレだが、いい考察だ。地図も即席にしてはよく出来てる。だが、まだ足りない」
「須勢理毘売が共に祀られている理由ですよね。色々案は出たんですけど、どれもしっくり来なくて……」
「よし。それは次の課題にするとしよう」
🐤お待ちかね🐤
🐤レクリエーションのお時間です🐤
「よーし。一人ずつ社でハンコ押して来い。防犯対策バッチリ、100メートルあるかなしか、(お化け屋敷みたいな)仕掛けなし、そもそも霊験あらたかな山は魑魅魍魎の類も出ない(はずだ)から安心しろ。おれは近くでキャンプファイヤーを設営してるから何かあったら叫べ(原始的」
「メチャクチャ暗いんですけど……」
「ボクがいるカラ安心してイイヨ」
リスキーノが無駄に明るいため暗さが際立つ。「肝だめしだもの」と送り出す月夜野は妙に楽しそうだ。
ちなみに、太日向の言う通り確かに仕掛けはなかったが、リスキーノの焼けた肌色が闇に同化し、逆に白目部分は浮かび上がって無駄に怖いだけだった。
「一人はヤバい」
「マジ、暗すぎる」
「なあ。途中に誰かいたような気が……」
「やめれ!」
「リスキーノ先生だろ?」
「いや、女の人だった気が……」
「それ以上、言うな!」などと騒いでいると、女子組が妙な顔をしている。
「どうした?」
「石須さんも同じようなこと言うの。あの大杉の辺り、何かいるって」
「あそこで何かが身体の中を通り抜けたような気がして……」
「やめてくれぇ!」
全員ガクブルする。
「ダイジョブ。この山イイ神サマしかいないヨ」
根拠なく無駄に明るいリスキーノに力なく笑い、向かった広場ではキャンプファイヤーの点火を待つのみとなっていた。
「立派だね」
「火、ちゃんと点くんかな?」
その時、火の手が立ち、まるでイリュージョンのように炎の欠片が夜空に舞い上がった。
「うわっ! すげぇ!」
「かっけぇ!」
「どうやってんだ!」
やんややんや喜ぶ。
「ん? あれ何?」
「え、人!?」
高く舞い上がった炎が作ったのは、確かに人の形だった。そのゆらぐ炎の人形が、ポカンとする生徒たちを見下ろしている。
『あの方ときたら……私の神気で己の気配を隠していたとは。私の元に戻る前に、此処で他の女子の気配を消そうとでもしておったのか? まったく……他の女子どころか私も立ち入れなかったではないか。だが、同じ名を冠するそこな者……我が名はスセリ。そなたのお陰でようやく通り抜けることが出来た。礼を申すぞ』
そう言うと一瞬で掻き消えた。
「「先生、ホログラムすごい!」」
拍手喝采で盛り上がる彼らを、勢斗たちは背後からただ見ていた。
「スセリ……確かに須世理とも書くネ。名の力はスゴいネ。石須世理……石須のフルネームはイシスと須世理重なりだもんネ」
「石須の身体を媒体にするとはな。ホログラムだと信じてる方が平和か」
「そうね。この山に須勢理毘売が祀られていたのは他の女人を近づけないため、でもあったのね」
「あの二柱、あれで仲がいいみたいだしネ」
「それにしても、嫁さんが虫除け代わりか。まあ、ヒト生活なかなか楽しいしな。大国主にも一柱になりたい時があったのかもな」
「ってかさ。今回、おれたち“力”の出力間違えちまってたみたいだな」
🐤翌🐤日🐤
「ねー先生。昨日の仕掛けどうやったの?」
「何のことだ?」
「キャンプファイヤーだよ」
「何言ってんだ。湿気って点火出来なかったじゃないか」
「「?????」」
9人は顔を見合わせた。
「どーゆうこと?」
「トボけてるようには見えないよね」
「……確かめてみる」と水生が立ち上がった。
「先生。ストーリア学園の皆、喜んでましたよ」
太日向が怪訝そうに首を傾げる。
「お前たち、あそこの生徒と面識あったか?」
「「え」」
「そりゃあ、おれは研修で顔を合わせたりはしたが、かなり前だ。あの学園は不思議なところがあるし……招待に応じて訪ねたりもしたが、所在地に辿り着けた試しがなくてな。それきりのはずだぞ?」
背中を冷たい汗が伝う。
「え、じゃあ、アレ何だったの?」
「先生の態度、確かに不思議とは思ったけど」
「無視とかじゃなくて、私たちにしか見えてなかったってこと?」
「言われてみれば思い当たるフシが……(なくもない」
一気に血の気が引く。
.。oO(( 誰かぁ!〈夢〉だと言ってくれ!!))
こうして冷や汗にまみれた合宿は幕を閉じたのだった。
~チャンチャン~
✵°⿴⿻⿸✧✵✧⿴⿻⿸°✵
今回はゲストにエジプトの方々をお招き致しましたwww
【ゲスト・ストーリア学園の皆さん】
オッシー・リスキーノ ──オシリス
ララネフ・ティースミス──ネフティス
勢斗コウガ ──セト
石須 世理 ──イシス/スセリ
大空 隼人 ──ホルス
三門 当麻 ──トート
名前、苦しくて堪りませんwwでも許してwww
ちなみに、何となくほんのりと昨年の夏祭りとかぶらせてますw
最後までご覧いただきありがとうございました。
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明日は 吉田翠さん です❢
どうぞお楽しみに❢(嬉〃∀〃)ゞ
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