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〘お題de神話〙 神の馬

 
 
 
「この馬は……」

 万物の主アルファズルオーディンさえ、思わずうなった。

「スレイプニルと言います」

 ロキが連れて来たその馬には脚が8本あり、見目形を取ってもしんに相応しい気品と威厳を兼ね備えている。

「待て。今、スレイプニルと言ったか?」
「ええ。スヴァジルファリの子です」
「……では、こやつがそなたの……」

 ロキは答えなかった。

 先年、アース神族と山の巨人との間である契約がわされた。アース神族側は乗り気ではなかった。交渉で提示された報酬は、到底受け入れられるものではなかったためである。
 ロキの知恵でアース神族に有利になったものの、山の巨人の馬・スヴァジルファリの働きのせいでが悪くなると、皆一様に責任のを追及した。

 結果、責任はロキが負った。

 ロキは見目姿だけではなく性別すら変えることが出来たため、美しい牝馬ひんばの姿になり、山の巨人の仕事を手伝えないようスヴァジルファリを誘惑したのである。そして生まれたのがスレイプニルだった。

「何故、私の元に連れて来た?」
「我ながらいい出来でしたので、貴方以外に相応ふさわしい乗り手が思いつきませんでした」

 ロキは若い時分、天翔あまかけるオーディンにあこがれ、アース神族の一員となるべくさかずきわした身だった。

「………………」

 オーディンは何も言わずにスレイプニルに触れ、目を細めた。まるで何かを『た』かのように。

「どうされました?」

 ロキがいぶかしむ。

 オーディンは黙ってスレイプニルを見上げた。スレイプニルに触れたほんの刹那、えてしまった穏やかならざる光景を確かめるように。

 それは、足枷であるグレイプニル魔法の紐を引き千切ったフェンリルの姿だった。

 今まさにスレイプニルをひと飲みにしようとするフェンリル。
 背にったオーディンを振り落とし、フェンリルの牙から遠ざけようとするスレイプニル。
 そして、スレイプニルを飲み込んだフェンリルを切り裂く息子ヴィーザル。

── ラグナロク終焉 ──

 その言葉がオーディンの脳裏をよぎる。

「……いや、何でもない。良い馬だ」
「お気に召して何よりです」

 予知はおのが能力にあらずと胸にしまい、オーディンはスレイプニルにまたがった。

 故に、終焉の時、スルトの炎を眺めながらロキと最後の杯を交わすなどと、そしてそれがスレイプニルのお陰であることなど、この時のオーディンは知るよしもなかった。

 
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神々の家系図に兄弟姉妹概念はほぼほぼなさげですが、いちおーフェンリルとスレイプニルって兄弟なんだよなーとか思ってみたり。
オーディンとロキもさかずき交わした義兄弟的なアレですがね。

さて、北欧神話にご興味のない方に向け何度も何度も何度も言いますが、実際にはオーディンはラグナロクの時にロキの子・フェンリルに飲み込まれる or 噛み殺されてますw

最後、血まみれでロキと「乾杯!」したなんてのは暗黒の歴史構築中に某マンガ家様が私のMO✬SOと完全一致の結末を描いてくれたからもう絶対私の中ではこれだけが公式!となってしまってるってだけのことですので誤解なきよう😂

とは言え、オーディンの息子ヴィーザルがフェンリルを倒しただとか、スレイプニルはロキが生んだ子だとかは本当の話です。

元々は、人間の石工に化けた山の巨人が人間界ミッドガルドを囲む壁を造る代わりに月と太陽、フレイヤとの結婚を要求したことが発端。
その要求に神々が激オコし、ロキの助言で「誰の助けも借りずに冬至から夏至の半年間で完成させる」と言う対案を出し、石工(山の巨人)が馬(スヴァジルファリ)だけは使わせてくれと言うのでとりあえずその条件で締結。
ところがこの馬がすごくてこのままだと夏至までに完成しちゃうじゃん!ってことになり、皆がロキに責任の追及を始めたワケです。
仕方ないので、ロキが雌馬に化けてスヴァジルファリを誘惑すると作業を放り出してしまい、石工は期限に間に合わないと正体(巨人の姿)を現したところトールにやられた、と。
その後、ロキとスヴァジルファリの間に生まれた馬がスレイプニル、なのだそうですwww
あわよくば、ただで壁こさえてもらおうって魂胆だったんだろうけど、正直、一瞬、「バカなの?」って思ってしまたw

そう言えばロキって何にでも姿を変えられる上に男にも女にもなれるらしいんですけど。しかも超絶美形。
(北欧神話の絵を見てるととてもそうは思えないんですけどwww)

なのに(?)だから(?)生まれた子が何か皆「なんだ、これ?」なんですよね🤣

狼(フェンリル)だったり、蛇(ヨルムンガンド)だったり、人型だけど半分死人色(ヘル)だったり、馬(スレイプニル)だったり。

ちなみに、竜殺しのシグルズに与えられた名馬グラニは、このスレイプニルの血を引いていると言われているそうです。

 
 
 
 

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