今年読んだホラー小説(下半期編)&2024年ホラー小説ベスト5
2024年振り返り、今回はホラー小説編です。
この記事では
・読んだホラー小説振り返り【下半期編】
・2024年の個人的ベスト5
の2パートでお送りしたいと思います。
上半期編にあたるこちらの記事もぜひご覧いただければと思います。
ホラー小説振り返り【下半期編】
2024年の1年間で15冊のホラー小説を読みました。概ねサウナで。
サウナの熱さとホラーの怖さは絶妙な反作用性があってぶっちゃけめちゃくちゃハマりました。趣味として継続できそうなので来年も面白いホラー小説を探していこうと思います。では振り返りです。
1.禍(わざわい)
「耳や「髪」といった「身体」を連想させるテーマで連なる短編集。各エピソードはおどろおどろしさと気持ち悪さとホラー的爽快感に満ち満ちている。それでいて全体的な雰囲気は耽美で幻想的で個人的には江戸川乱歩っぽいなと思いました。このあたりは上半期編にある「6」にも似ているかも。文章の密度が高く押し込まれる感じが大丈夫で江戸川乱歩好きだなあという方には圧倒的おすすめです。
2.フェイクドキュメンタリーQ
いわゆるモキュメンタリーホラーもの。そもそもこのタイトルの動画コンテンツがあって書籍化されたというものなのでそっちも見るとより世界観に没入できる。個人的にはモキュメンタリーホラー動画にありがちなやや投げっぱなしな感じが消化不良。動画だと映像の強さがあるので余韻で駆け抜けられるけれど文字だけだと文章が相当巧みじゃないと放置プレーに感じるのかもなあと思いました。
3.右園死児報告
「うぞのしにこほうこく」と読みます。【右園死児】という単語や概念や事象が世の中をおかしくしてしまうという漠然とした恐怖を報告書形式で綴るという内容。1冊の中でけっこうトーンが変わっていく作品で
序盤:得体のしれない報告書の羅列にぞわぞわする
中盤:話をつなぐ筋が見えてきて物語性を感じる
終盤:シンゴジラみたいになる
という何とも言えない読後感の1冊。なんとコミカライズされたとのことで気になる方はこちらもどうぞ!
4.穢れた聖地巡礼について
多分今年ホラー界隈で一番話題になっていた著者”背筋”先生の最新刊。「ネットに転がってる怖い話をもとにホラーストーリーをでっちあげて話題を取る」という話を軸にモキュメンタリー要素をふんだんに匂わせながら内容が展開していく。モキュメンタリーとしての楽しさと「ホラーストーリー」としての楽しさが同居する感じが面白い。前作「近畿地方のある場所について」に比べると怖さそのものはマイルドになってお話としての面白さに振っている印象です。
5.口に関するアンケート
背筋先生が上記とほぼセットくらいのタイミングで出したもう1つの新刊。まず本の物理的な大きさ。とても小さくてその小ささが異様さを放っていて怖い。
何者かが大学生にインタビューを行う形式。「とある肝試し」を軸として進んでいく。「ピースの足りなさ」みたいなものを感じながら進む内容はホラー世界に飲み込まれていく感覚になり、これがなかなかに怖い。このサイズで60ページくらいなのですぐ読み終わるのだが怖さは抜群。いろんな仕掛けもあって満足度も高かったです。
6.深淵のテレパス
「怪談を聞いたことをきっかけに怪現象に悩まされるカレン」と「怪現象を独自の見解で解決することを信条とする晴子と越野」の2サイドを行き来しながら進むホラーストーリー。登場人物が個性的で1本の映画を見ているような感覚で読める良作。怪現象に取り組む晴子と越野はバディものの体裁をとっていて解決に向けての流れはなかなかに痛快だし脇役各位もクセ強で面白い。ホラーでありながらしっかりストーリーがあるものを読みたいという方にはおすすめ。
7.入居条件:隣に住んでる友人と必ず仲良くしてください
怪しい物件に住まうことになった主人公と、隣の部屋にいる化け物が繰り広げる異様な日常もの。話は隣の部屋の化け物がベランダ越しに語ってくるショートホラーストーリーを軸として展開、それを聞く主人公の主観で話が進んでいく。読んですぐ感じたがこれは圧倒的にアニメ化に向いている、ところどころ感じられるコミカルさや映像的な怖さ、各話が一定の起承転結をもちながらテンポよく進んでいく感じ、キャラクター性の強い登場人物などの要素は圧倒的にアニメのそれ。最後続編がありそうな感じで終わったので期待します。
8.撮ってはいけない家
ホラー番組を手掛けることになった制作会社のディレクター杉田とホラー好きのAD阿南のバディを主人公としたホラー×ミステリー。モキュメンタリーにありがちな現実から怪異に飲み込まれていく空気感とミステリーものとしての謎解き要素が絶妙に絡み合い一気に最後まで読み進めたくなる。呪い、謎の連続死、暗い過去を感じる一族、そして事件の謎解きなど各要素のバランスが良い。「6.深淵のテレパス」同様、映画的な見せ方がありながらホラーとしての怖さがもう一段強い感じがする。今年最後に読みましたがとても良かったです。
2024年の個人的ベスト5
ということで上半期編と合わせて15冊のホラー小説紹介でした。ではここからは個人的ベスト5の紹介です。
5位
「熊本県荒尾市の炭鉱産業」という史実をベースに語られるホラーシナリオという建てつけがなんとも現実味があって怖い。炭鉱という言葉が持つ「暗さ」「黒さ」「身体的なキツさ」などのなんとなく頭にある要素が「怖い話」という具体的な文章で可視化されていくのがめっちゃ怖くて良かった。怖さの描写もシンプルなので変に読みとどまるようなこともないしかなり読みやすくて入門編としてもおすすめの一冊。
4位
とにかく隣人の化け物のキャラクター設定が抜群。怖いのにコミカルでなんならかわいいまである。ちょっと違うかもしれないけど寄生獣のミギーみたいな「ヤバさをうまくデフォルメしてる」感じが溜まらない。主人公もどこかかつてのセカイ系男子的な要素がありトートロジーが心地よい。それでいて彼が巻き込まれる事象の一つ一つはしっかりと「怖い」というのがポイント。本当にアニメ化を願うし、各キャラクターのデザインと声優が早く見たい。結末はかなり2期をにおわせていたので期待します。
3位
多分2024年一番話題になったホラーがこれなんじゃないかと思う。これぞモキュメンタリーホラー小説の決定版という完成度で正直このジャンルだとこれ以上の長編は出てこないんじゃないかくらいに感じた。3月にこれを読んでモキュメンタリーコンテンツを漁ったけどこのジャンルではやっぱこれがすごかった。2ch怖い話まとめとかが好きな層には絶対突き刺さるし、めちゃめちゃ怖いしでとにかくこのnoteを見てホラーに興味を持った人には読んでほしい。ちなみに映画化も決まったらしいです。
2位
連続で背筋先生を選びましたがインパクトではこちらが上。とにかくこの小さいサイズの60ページでホラーとしての仕掛けがこんなに仕込まれていてそれでいてちゃんと面白くて怖いのがすごい。謎解きともまた違う怖さの中を手探りで考えながら読み進めていく感じが本当に独特。あまり色々話すと初見の面白さが薄まってしまうので割愛。値段的にも安いのでどれかホラーを買うときに一緒に買って「2冊目」として読むことを特大推奨します。
1位
今年の1位は「撮ってはいけない家」にしました。1年間ホラーを読んで思ったのが「怖さ」と「ストーリー性」をしっかり共存させて「最後までコンテンツとしてトーンダウンしない」のは相当に難しいんだなということ。この作品はそれを満たしている佳作だと感じました。モキュメンタリーホラードラマを作ることになった制作会社、ロケ地として借りた家の家族の隠された血筋の闇、子供が見る不思議な夢、謎の連続死、呪いと怪異の影、ミステリー作品としての謎解き、すべてのバランスが抜群で本当に面白い。特に個人的には結末にホラー作品としての矜持みたいなものを感じて「はあー、そうしますよねぇ…」と独り言が漏れた。これも映像化との相性がかなり良さそうで映画化やネットフリックスでのドラマ化を期待。AD阿南くん役を染谷将太にぜひ演じてもらいたい。
ということで今年1年趣味として完走したホラー小説読書を振り返りながらまとめてみました。ぜひ皆さんも参考にホラー小説読んでみてください!