ウルトラ・ショート

3分ください。空想と浪漫の世界にお連れします。 毎週土曜日更新。 コメントお待ちしてます。Xもよしなに。

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自己紹介 │ 2度目のnote

はじめまして。 空想特撮ショートを書き始めたダッチと申します。 実は数年前にnoteで自動車にまつわる記事を少し書いていたのですが、挫折して辞めてしまいました。なので、初めてではありません。 では、なぜまた懲りずに書こうとしているのか。 自分の紹介と絡めて残そうと思います。 幼少時代:特撮に育てられる  私は今30歳を過ぎていますが、人間性を形づけられたのはこの時期でした。車、戦隊シリーズ、ウルトラマンの大きく3つによって、よく言えば空想や浪漫に溢れた子供、悪く言えば

    • 見た目の問題 (2057字) │ 特撮ショート

       暗闇を切り裂くように、私を乗せて運ぶ車は都心に張り巡らされた高速道路と走り抜けていく。後部座席から流れる外に目をやると、きらびやかに彩られた街の中に、今日の目的地である展示場が見えてきた。私が主演する映画の完成披露試写会が行われる特設会場だ。 「終わった後はスポンサーと会食予定ですが、長丁場です。何か軽く口にできるものを、後でお持ちしますね」  手元の光に顔を照らされたマネージャーが、少しだけこちらを見ながらそう話す。私は手をやってそれに軽く応えるだけにした。俳優の道に

      • 谷川さんの訃報を見た。 部屋の床を照らす赤黄色の朝日が眩しくて、窓を開ければ、冷たいけれどすっきりとした風が入ってくる朝だった。 ご冥福をお祈りします。

        • 眠り船(2296字) │ 特撮ショート

           私たちの船が地球に不時着したのは、この星の暦の数え方で三ヶ月前になるだろうか。最新鋭の惑星間航行用AIを搭載した母船は、突き出た巨岩のように地面にめり込み、今や難民小屋と化している。 「ずいぶん遅かったじゃないか」  かろうじて地面に埋まることを免れたハッチをこじ開けながら帰ってきたYに向かって、タバコをふかしながらNが偉そうに声をかけた。 「おまえ、咥えている物のスキャンは済ませたんだろうな。そんな得体の知れないもの」 「冗談でも面白くないぞ。エレネが寝ちまってる

        • 固定された記事

        自己紹介 │ 2度目のnote

          30分後の未来予知(1769字) │ 特撮ショート

           何度も明滅を繰り返すサインの明かりと、大音量の割に何を言っているのかよく聞こえない広告の映像。この二つのおかげで、大勢が各地から寄り集まってくるのがこの街だ。虫より人間の方が多いとさえ思えてくる。ゆらゆらとうごめく群衆の波は、人を酔わせ、普段ならしないような選択をさせる。  だからわたしはこの街の片隅で、得意な未来予知を商売の種にしようと、占い屋を営んでいる。 「やってますか。一人なんですけど」  古びた薄緑色をした鉄製のドアを重そうに引きながら、若い女性が訪ねてきた

          30分後の未来予知(1769字) │ 特撮ショート

          炎上商法 (2255字) │ 特撮ショート

           この世の黒を、すべて集めて塗ってしまったような猫を拾って、今日で大体一週間になる。  ある日署を後にして、最寄りの駅から自宅まで歩いている道の途中で、私が見つけた。闇夜に溶け込んでいたせいで、長く伸びた尾を靴で踏んでしまい、今にも消え入りそうな声で怒りの鳴き声を小さく上げたのを、聞き逃さなかった。鉄パイプでも踏んだのかと思うほど硬い感触だったが、そんなことよりも、目の前の命のことで精一杯だった。  慌てて抱き抱えて家に帰るなり、ありったけの毛布で体を包んだ。季節は冬至を

          炎上商法 (2255字) │ 特撮ショート

          雄弁は銀 (1932字) │ 特撮ショート

           口当たりは悪くない。  たしかにぬるい水だが、酸味は抑えられている。電子式でもいいから、冷やす機能は必要だな。私は一人でそうつぶやきながら、手に持った折りたたみ式のゴムコップに、つづけて二杯目を注ごうとしてくる銀の玉を、手のひらで遮った。  この星に不時着してから72時間が経過しようとしていた。鬱蒼と茂った森と、肌にまとわりつく湿気のある気候。あとは、どこまでもついてくる銀色の自立型浮遊ロボットのおかげで、あと数日間は生き延びられそうな見通しだ。ロボットに備わった簡易的

          雄弁は銀 (1932字) │ 特撮ショート

          集人装置 (1202字) │ 特撮ショート

           誰もが寝静まった深夜。  とあるマンションのベランダで、暗闇からぬうと一人の男が出てきた。ペタペタとサンダルの音だけが響く中、蛍の光のように電子タバコの明かりが明滅し出す。  しばらくして、ふうと白い煙が夜空に向かう。吸っては吐いてを何度か繰り返しながら、ふと向かいにあるアパートの一室に目をやると、窓にうっすらかかった白いカーテンの奥に、白い光が浮んでいた。光っては、消えて。こちらも明滅を繰り返す。  その部屋は1階にあり、窓の前にある駐車場と地続きだった。テレビがつ

          集人装置 (1202字) │ 特撮ショート

          【業務連絡】 今週のショート更新お休みします

          【業務連絡】 今週のショート更新お休みします

          【後編】終身刑(1495字) │ 特撮ショート

           ヨタヨタと部屋を彷徨い、沈むようにソファーにもたれかかる。すると、音がして肘置きの先に一本の線が入ったかと思うと、そこが割れ、下から丸いボタンが生えてきた。深く考えずに押すと、チンという音と共に、何やらいい匂いがしてきた。左を向くと、食器棚が据えれられた壁に取り出し口と書かれた小さい小窓があり、その前に立つとありとあらゆる食事がコンベヤーで運ばれてくるではないか。 誰かに監視されている気配もない。気づけば片っ端から口に運び、待ちくたびれているであろうベッドと戯れ、ぐうと眠り

          【後編】終身刑(1495字) │ 特撮ショート

          【前編】終身刑(1764字) │ 特撮ショート

          「被告人を、仮釈放のない終身刑に処す」    自分の目線の遥か上あたりに裁判長席が設けられているせいで、まるで天からの思し召しかのように、そのセリフは降ってきた。広い法廷の真ん中に立たされた被告人の私は、ヒョロリと先に向けて細長く伸びる耳を、青白い指先で揉むように触っている。  それも飽きて顔を上に上げても、誰かが席にいるのはわかるが、暗くてよく見えない。どこの誰だか知らないが、お前に私の人生は決められるんだなと思った。思うだけだった。  私も同じことをしてきたから、そ

          【前編】終身刑(1764字) │ 特撮ショート

          【落選のお知らせ】 第2回カモガワ奇想短編グランプリは一次審査落ちでした。結果発表のnoteで通過した方々のお話をいくつか読みましたが、構成が練りに練られており、自身の未熟さを痛感してます。切り替えて、また頑張ります。ありがとうございました。

          【落選のお知らせ】 第2回カモガワ奇想短編グランプリは一次審査落ちでした。結果発表のnoteで通過した方々のお話をいくつか読みましたが、構成が練りに練られており、自身の未熟さを痛感してます。切り替えて、また頑張ります。ありがとうございました。

          坊ちゃん文学賞に本日作品を提出できました。自分にとっては初めての公募で、正直結果はあまり気にしないことにしようと思っています。当然、最後まで何度も直すくらいにはこだわりました。ですが、自分はどんな作品をつくりたいのか、そのためには何が足りないのかを考えるいい機会になりました。

          坊ちゃん文学賞に本日作品を提出できました。自分にとっては初めての公募で、正直結果はあまり気にしないことにしようと思っています。当然、最後まで何度も直すくらいにはこだわりました。ですが、自分はどんな作品をつくりたいのか、そのためには何が足りないのかを考えるいい機会になりました。

          宇宙強盗団 「ONU」(1059字) │ 特撮ショート

           強盗団といえば、ありとあらゆる金品、煌びやかなものを行く先々で奪う。そんな印象が大概だろう。だが、そういったわかりやすい輩は、すぐ消える。  息が長いのは、効率を追求した商売ができる奴らだ。奪うもの、奪う相手、奪い方。どの要素も考え抜かれている。これから話す「ONU」という一団は、そのいい例だろう。  やつらが盗むのは、向かう星々にいる子供達のポジティブなエネルギーだ。喜びや期待、自信といった感情を、母艦に取り付けられた特殊な機械から発せられる電波を通して増幅し、採集し

          宇宙強盗団 「ONU」(1059字) │ 特撮ショート

          【後編】星間露天商 マヤカス星人(893字) │ 特撮ショート

           その日は、来るべくしてやって来た。これまで数々のスタントを成功させてきたが、一番苦手だった火に包まれるシーンに出るよう、事務所から依頼が入る。  今の自分ならやれる。いつもみたいに、軽々とこなしてみせるさ。自信に満ちた彼は、二つ返事で受ける意思を伝えた。 撮影日当日。  「ではいきまーす。はい」  カメラが回る合図と共に、スロットルを握る手に力を入れ、倉庫の壁を突き破りながら外に飛び出す。行手に燃え盛る日の壁に向かって、猛スピードで突入していく男。目の前が真っ赤にな

          【後編】星間露天商 マヤカス星人(893字) │ 特撮ショート

          【前編】星間露天商 マヤカス星人(1355字) │ 特撮ショート

          闇夜に溶ける裏通りを、一人で歩く男がいた。  彼は命知らずのスタントマンと呼ばれることを夢見て、大手アクション事務所に所属している。ただ、恐怖心を拭いきれずオーディションでは失敗続き。そのせいで、出演機会に恵まれることは少なかった。 「どうやったら、手っ取り早く上達するだろうか」  夢みがちな性格で、あまり努力をしないそんな彼の目の前に、妙な光景が広がっていた。壁沿いで何やら露天商がシートを広げているではないか。ただ、商品は何も並べられていない。"宇宙品質"と書かれた足

          【前編】星間露天商 マヤカス星人(1355字) │ 特撮ショート