豆と散る|毎週ショートショートnote|【節分胎教】
ねえ、いくらなんでもその大きな声。
やめてくださる?
私の可愛いデイヴィッドがびっくりするざます。
あなたが恐ろしい声で叫ぶたび、デイヴィッドが私のお腹を蹴り飛ばすんですの。
ああ、ほら。デイヴィッドったら。
随分興奮しているわ。
父親譲りで血生臭いことを好むのね。
それにしても、見事に豆だらけ。
足の踏み場もないざます。
この床がきれいに片付くまで、私は立ち上がらないほうがよさそうね。
豆に足を取られて転んだりしたら大変だもの。
あらあら、いやだ。ちょっと。
目も当てられない。
今年の豆投げ部隊は容赦ないわねえ。
いくらリンチ家の恒例行事といっても、なんだか気分が悪いわ。
こんなことって初めてざます。
いよいよ私も母になる準備ができたのね。
ねえダーリン。そろそろいいんじゃない?
十分、楽しませてもらったわ。
ああ、ほら。
デイヴィッドもこんなに喜んで。
あはははは、すごい暴れよう。
今夜にでも生まれそうよ。
鬼の断末魔の叫びほど良い胎教はないものね。
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