花丸恵

はな まるえと読みます。note創作大賞2023恋愛小説部門入選。旅する日本語2020入賞。「#寄付してよかったこと」優秀賞。鎌倉新書「今は亡きあの人へ伝えたい言葉2021」佳作入賞。奈良の飛鳥大仏が大好きです。リレー&バトン企画には参加していません。

花丸恵

はな まるえと読みます。note創作大賞2023恋愛小説部門入選。旅する日本語2020入賞。「#寄付してよかったこと」優秀賞。鎌倉新書「今は亡きあの人へ伝えたい言葉2021」佳作入賞。奈良の飛鳥大仏が大好きです。リレー&バトン企画には参加していません。

マガジン

  • 花丸恵の漫筆日和

    思いつくままに書き留めたジャンルなしの日記やエッセイです。

  • 花丸恵の食べたり呑んだり作ったり

    自分が書いた食べ物やお酒などに関するエッセイをまとめました。 食べた感想だけでなく、食べ物に関して疑問や思ったことなども書いています。 今後もどんどん追加していきます。 食いしん坊ほとばしる雑文ですが、楽しんで頂けたら幸いです。

  • 一泊二日 《創作大賞2023入選作品》

    創作大賞2023 恋愛小説部門入選作品です。 全部で7話あります。読んで頂けたら嬉しいです。宜しくお願い致します。

  • 夢と鰻とオムライス《創作大賞2024中間審査通過作品》

    note創作大賞2024ファンタジー小説部門応募作品。山梨の勝沼を舞台にした作品です。創作大賞2024中間審査に通過しましたが、受賞はなりませんでした。

  • おもちょろい夫

    面白いことを、ちょろっと漏らしがちな夫が登場するエッセイです。面白いだけではなく、たまに哲学的なことも言ったりします。

最近の記事

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夢と鰻とオムライス 第1話

◇  飛んできたのは五百円玉だった。  よりによって一番攻撃力の高そうな硬貨の側面が、俺の眉間に命中したのだ。  鋭い痛みが目頭から眼球の裏へと伝わり、泣きたくもないのにじわりと涙が滲んだ。 「いってぇ……」  俺は両手で目を覆い隠した。痛みのせいで勝手に湧いてきた涙をそれとなく拭って、顔を上げる。 「何すんだよ!」  渾身の力を込めて睨みつけると、ほんの一瞬だけ、兄はうろたえた表情を見せた。だが、すぐに目を吊り上げ、 「呑気に家の中をうろうろすんじゃねーよ! とっととパ

    • 雲の上の谷川俊太郎

       結婚して不満だったことがある。  私は若くして嫁いだこともあり、《結婚したらこうありたい》という、今考えれば気恥ずかしくなるような、みずみずしい希望を抱いていた。  両親が不仲だったこともあり、自分がそういった希望を持つことはないだろうと思っていたが、いざ結婚が決まると、むくむくと夏の雲のようにそれは湧き出した。  結婚指環を作ったときの、はにかむような喜びを思い出すと、今でも照れくさい。指環の内側に入籍日と一緒に、二人が出会った場所のシンボルマークを刻印しようと決めた

      • アピールおじさん

         もう20年以上前の話なのだが、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだった、讃岐うどんのチェーン店にお昼を食べに行った。  讃岐うどんがブームになっていたこともあり、昼時を避けたのにもかかわらず列ができていた。皆、トレイを手に列に並び、天ぷらを選んだり、かけにするか、冷やにするかを決め、レジで清算している。  迷い箸ならぬ、迷いトングで天ぷらを選んでいる人を横目にしながら、私は余裕綽々で列に並んでいた。このときすでに、私は食べるものを決めていたからだ。  おろしぶっかけうどん(中)

        • アカレンジャーに遭遇した話

           ようやく涼しくなり、心身ともに秋を感じ始めた頃のこと。  その日、私は信号待ちで停まった車の助手席に座っていた。見慣れた街並みを眺めながら、  ……あー、帰ったら、ご飯作らないとなぁ〜。  と口を尖らせ、車窓に視線を向けていたのだ。  夕飯作りを面倒臭がる不良主婦と化した私が、  ……あー、うちに料理のお兄さんが突然現れて、パパッと3品くらい作ってくれないかなぁ~。  なんて現実逃避を決め込んでいると、愛車の横を走っていた自転車の男子高校生が、突然、ふらりとよろけた。車中

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        夢と鰻とオムライス 第1話

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        記事

          「本人」というタスキ

           選挙が終わった。  候補者の皆さんは、ひと安心した方もいれば、明日からの食い扶持はどうしようと、青い顔をされている方もいるかもしれない。政治、というものを脇においてみても、悲喜こもごもは、どの世界にもあるものだと思ってしまう。  選挙があると、選挙カーがやってくる。衆議院選挙のような全国区の選挙ならまだいいのだが、これが区議会、市議会選挙になると、わんこそばの如く選挙カーはやってくる。  そりゃあ、立候補したからには一票を獲りたい。そして選挙カーが、自分を喧伝するのに手

          「本人」というタスキ

          テニスボールとモンブランのうねうね

           どういう訳かわからないが、3、4歳くらいの頃住んでいた社宅の部屋に、筒状のテニスボールケースが置いてあった。  我が家にテニスをする人はいない。  今となっては我が家にテニスボールがあった理由を解明することはできないが、幼少期の私は、このテニスボールケースに、それはそれは熱い視線を送っていた。  子どもの私の目には、このテニスボールケースがチップスターに見えていたのだ。  共通点は、筒ということだけ。  調べてみると、硬式テニスボールの直径は、一般的に6.54~6.8

          テニスボールとモンブランのうねうね

          だれかさんになれる秋

           涼しくなりましたねー!  という挨拶が飛び交うようになった。  ネット上でも、秋が来た喜びを発信している方が多く、 「もう来ないと思っていた!」  とか、 「やっと来てくれたのね!」  などなど、まるで光源氏の恋人のような立ち位置で、皆さん秋を向かい入れている。  秋、モテモテである。  ここまで夏が暑くなかった頃は、夏の終わりはもっとセンチメンタルなものであった気がする。だが、最近は長っ尻すぎるせいで、夏は居酒屋でだらだらと酒を飲み続ける酔っぱらいのようになってしまっ

          だれかさんになれる秋

          あたたかい何か。

           「ねぇ! 今すぐ吉祥寺の駅まで来てよ!」  随分昔のことになるが、母からそんな電話がかかって来たことがあった。口調から察するに、誰かが倒れたり、事故に巻き込まれたわけではなさそうだ。  私は一番嫌いな家事は買い物というくらいの出不精でなので、突然呼びつけられても、「はい、ただいま参ります」ということにはならない。 「あ? なんで?」  気のない返事をしてしまった。  だが、そんな娘の煙たそうな声色にも母は全くひるまない。 「あのね! 今日、デパートですんごい美味しいヨー

          あたたかい何か。

          創作大賞2024の中間選考を通過することができました。 読んで頂いた皆さんにお礼を申し上げます。 スキやコメント、感想を頂き、とても励みになりました。 本当に有難うございました。 嬉しいです。本当に有難うございます。 応募作品です↓ https://note.com/hanamarue8787/n/n47cfe30a780c

          創作大賞2024の中間選考を通過することができました。 読んで頂いた皆さんにお礼を申し上げます。 スキやコメント、感想を頂き、とても励みになりました。 本当に有難うございました。 嬉しいです。本当に有難うございます。 応募作品です↓ https://note.com/hanamarue8787/n/n47cfe30a780c

          読書の必須アイテム

            台風がのろのろと通り過ぎたと思ったら、また暑さがぶり返している。  暑さが苦手な私は、長々と続く猛暑にほとほと参っているのだが、ここにきてつけっぱなしのエアコンのせいで、喉がいがらっぽい。だからといってエアコンを止めたら、暑がりの私は何もできなくなるので、喉には辛抱してもらい、連日エアコンの乾いた風を浴び続けている。  そんな私と違って夫は、暑さに強い。  強いがゆえに、エアコンがどうも苦手らしく、乾いた風から逃れるように、夫は隣の部屋で扇風機のみで読書をしている。ここ

          読書の必須アイテム

          時の焼却炉

           夏休みが終わると、ぐっと秋の気分が高まってくる。  九月、という数字だけ見ると秋なのだが、気温はまだ夏だ。  この夏の間、私は本当に何もできなかった。  考えてみれば、昨年も夏は何もできなかった。  何かを進捗させた、という実感もなく、今年も八月が終わった気がする。  ここ数日、台風の影響もあってか、湿気はあったがひと頃よりも、ずっと涼しかった。その間、ここ二か月ほど停滞していたものが、少し前へ進んだ。なんとなく復調の兆しを感じて、ほっとしたのと同時に、おや? と思った

          時の焼却炉

          体感型飲料水

           子供の頃、数人で友達の家に遊びに行くと、おうちのお母さんが、冷えたコーラやサイダーなどを持ってきてくれたのを思い出す。 「ありがとうございます!」  皆でお礼を言い、ごくごくと喉を鳴らす中、なかなか飲み物に手を出さない子がいた。 「あら? どうしたの?」  お母さんが心配そうにその子の顔を覗くと、 「……ごめんなさい。私、炭酸飲めないんです」  そう言って申し訳なさそうに背中を丸めた。 「あらやだ。そうよね、苦手な人もいるわよね」  と、お母さんは彼女のために、オレンジジュ

          体感型飲料水

          出不精の選択

           面倒臭がりのうえに、筋金入りの出不精のせいで、毎日家に引きこもってばかりいる。そのせいで気づかぬところで損をしてきたかもしれない。でも、それを気に病んだりしないのは、やはり家にいるほうが性に合っているからだろう。  そんな私を外に連れ出してくれたのは夫である。  夫も特に活発なタイプではないが、若い頃バイク乗りだったこともあり、旅が好きだった。そんな夫に付き合って出かけるうちに、まぁ、旅行くらいなら出かけてもいいかな……と思うようになった。  旅の間は家事をしなくていい

          出不精の選択

          ぱらぱらめくる #夢怪談

           目が覚めたとき、部屋は真っ暗だった。  夕方頃、異様な眠気に襲われて、そのままごろんと横になったら、いつの間にやら眠ってしまった。  出窓から、街灯の明かりだけが差し込んでいる。  カーテンを閉め、電気をつけようと思うのだが、それも面倒くさい。顔にずっとエアコンの風が当たっていたせいか、喉がからからだった。    とりあえず、ビールが飲みたい。  ゆっくり起き上がり、出窓から漏れる明かりを頼りにキッチンに向かう。暗い中、手探りで冷蔵庫を開ける。庫内の明かりにほっとしなが

          ぱらぱらめくる #夢怪談

          死ねってホントに思ってますか?

           私のかつての知人に、何かというとすぐに 「死んだらいいのに」 「死ね」 「マジで、殺したい!」  そんなことを言う子がいた。  彼女は人並みに気遣いもできる子で、特に問題行動もない。でも彼女は、何か気に入らないことがある度に、《死》を絡ませる言葉で、その場にいない誰かを罵ることがあった。  私はその言葉を聞く度に嫌な気分になり、  ……こういうことを言わなければ良い子なのになぁ。  と思うことが多々あった。  でも、それを咎めることができるほど、付き合いは深くない。  下

          死ねってホントに思ってますか?

          銀婚式を間違える

           自分の銀婚式を間違える人なんて、この世にいるのだろうか。  私は茫然としながら、追いつかない頭で朦朧と考えていた。  ……きっと、私以外には、存在しないのではないか。  そう思えば思うほど、恥、という文字が私の頭の中をひしめきあった。  青い顔をしてため息をつく妻を見て、夫は言う。 「どうしたの? 随分と暑さにやられてるじゃないか」  そうだ。全部、この記録的な暑さのせいだ。  連日、エアコンのない34℃の台所で、夕飯をこしらえていたら、脳みそも熱々になって、何がなん

          銀婚式を間違える