「気づいて手放す」にはどうすればいいのか? マインドフルネスの本質と、メタ認知の工夫とは
「メタ認知って、なるほどこうやればいいのか」
ストレス社会と言われる今の世の中で、注目を集めている「マインドフルネス」という言葉。ストレスや心のケアに活用できる方法として、外資系の大手企業がマインドフルネスを研修に組み込んだり、瞑想部屋などを完備するなどビジネスのシーンでも広まって来ています。社員のパフォーマンス向上につながると考えられており、注目されていますね。
先日、グラウンディングという手法について書きましたが、集中力を高めてから仕事に向かうための準備として、私も「今に集中する」ことの重要性を感じています。グラウンディングについては、こちらの記事も参考ください。
呼吸を落ち着かせたり、気持を整えたり、といったメリットは感じつつも、そもそもマインドフルネスは何を目指すものなのかは少し分かりにくい部分もあります。そこで改めて、マインドフルネスが目指すものとは何か、そしてその中でも重要な「自分を客観視する」工夫について考えます。
マインドフルネスとはそもそも何なのか
マインドフルネスとは一言でいうと「今、ここを意識する」方法です。過去の経験や先入観といった雑念にとらわれることなく、身体の五感に意識を集中させ、「今、この瞬間の気持ち」「今、この瞬間の身体状況」といった今の現実をあるがままに知覚して受け入れるための手法です。
これは仏教の瞑想がベースになっています。瞑想は、腹式呼吸や呼吸と連動したおなかの動きなどを通して、過去の事柄や、思考や感情にとらわれない心を育成するためのものです。マインドフルネスも非常に近しい概念です。
マインドフルネスは日本の医学会ではまだ信用されていない部分もあるそうですが、前述の通り、海外においては様々な研究が進んでおり、Googleなどの欧米企業ではマインドフルネスの独自プログラムが開発、実践されています。ストレスマネジメントやメンタルヘルスケアなどの効果が期待されています。
日本は他の国に比べて労働時間も長いです。世界幸福度ランキングでも長年低位をキープしており、「ストレス社会」という言葉もすっかり定着してしまいました。そんな日本の現代人こそ取り入れるべき手法と言えます。
マインドフルネスの要点
マインドフルネスのポイントになるものが二つあります。それがこちら。
1.アウェアネス(気づき)
2.アクセプタンス(受容)
仏教の思想でいうならば、「気づいて、手放す」ということ。 今に集中することで、自分の身体の中で起こっている変化や感情にまず「気づき」ます。そして、それを「受け入れる」。このプロセスを経て、最終的にはそれらを「手放す」のです。気づいて、受け入れて、手放す。この流れが重要です。
例えば、 自分の中に「怒り」や「悲しみ」や「イライラ」などの感情が芽ばえたなら、まずその状態を受け入れます。まず「今、自分は怒りや悲しみ、イライラを感じているんだな」と気づくことがスタートです。実はこのスタートラインに立つことは意外にできていなかったりします。怒ったり、イライラしている人はなかなか自分を客観視できません。そんな自分になっていることに「気付く」という意識が必要です。そこにマインドフルネスや瞑想は非常に有効です。
次はそれを「受け入れる」です。これはつまり評価や判断をしないということ。 「今よくない感情が出てきているな」と評価したり、「こんな感情消し去ろう」などといった、排除する意識は不要です。評価せず、判断せず、ただ受け入れる。これが意外に難しいです。
自分のことなので、そんな冷静に自分のことを見れなかったりします。特に感情が爆発している時は「そんな悠長なこと言ってる場合じゃない!今私はいら立っているんだ!」と、どうしても主観の感情を手放せなかったりします。どうすれば自分を客観視できるのでしょうか。
メタ認知の工夫
「メタ認知」という言葉があります。メタ認知とは、自分の認知活動を客観的にとらえる、つまり、自らの認知(考える・感じる・記憶する・判断するなど)を自覚することです。このこの「メタ認知」という言葉は、もともとアメリカの心理学者ジョン・H・フラベル氏が定義した心理学用語で、教育学や脳科学の分野で使われていた言葉です。
自分自身を超越した場所から客観的に見る。そして、自分自身をコントロールし、冷静な判断や行動ができる能力までを含めて、メタ認知能力と呼んだりします。
認知:自分が感じていることそのもの
メタ認知:自分は今こう感じているという客観的な認知
先ほど説明した「受け入れる」とは正にこのメタ認知の状態です。メタ認知ができれば、それだけで感情が収まっていきます。そしてその瞬間の感情に振り回されなくなります。
その時におススメの手法があります。それは「自分にナレーションをつける」という手法です。
自分の名前が仮に鈴木一郎だとします。そして自分が猛烈に怒っている時、一息大きく深呼吸して「今、鈴木一郎は猛烈に怒っている」と言葉にして自分を解説するのです。さながらドラマのナレーションのように。ドラマのナレーションは登場人物とは別にシーンを解説してくれる案内人です。登場人物達よりもひとつ上のレイヤーにいる感じ、天の声のようなポジションです。
自分の感情をナレーションのように解説するということは、天の声のポジションで自分を客観視するということです。コツとしては「今、(自分の名前)は〇〇している…」と淡々と冷静につぶやくことです。そして自分の名前をフルネームで言うことです。他人が解説しているように言うのがポイントです。
冷静に淡々と表現することで、怒り狂っている自分とは違う自分の視点に憑依できます。そして淡々とその状況を冷静に語ります。評価しません。その瞬間は自分の味方でも敵でもない中立な立場にいます。そうすることで、自分を客観視するとともに、とりあえずその状況を肯定することができます。
感情的になっている自分に冷静さを取り戻すのは容易ではありません。そんな時に「自分にナレーションをつける」という方法はとても有効です。仕事でうまく行かない時、子供が思い通りにしてくれなくてイライラしている時など、気持を沈めて本来の自分に戻りたい時におススメの手法です。
まとめ
日々ストレスフルな毎日をおくっている方も多いと思います。生きていると思い通りに行くことの方が少ないかもしれません。そんな時は怒りやイライラの感情が心に広がります。少しでも早く気持ちを落ち着かせ、本来の自分に戻りたいものです。
そんなストレスにさらされている私達に必要なことはマインドフルネスや瞑想といった「今に集中する」スキルです。これはストレスマネジメントの観点でみてもとても重要です。
そのマインドフルネスの本質は「気づいて、受け入れて、手放す」ということ。これは、自分の今置かれている体の状態、精神状態を客観視するということです。いわばメタ認知するということ。そんな時におすすめなのが「自分ナレーション法」です。
感情の起伏は突然起こります。素早く本来の自分を取り戻すためにも、メタ認知できる工夫を駆使して、冷静さを取り戻しましょう。
マインドフルネスとは本来の自分に戻る、本来の自分の力に気付くということなのかもしれません。日々多くの情報に触れ、自分の軸を見失いそうなときに、マインドフルネス、そしてメタ認知をうまく活用して、自分らしい毎日をおくっていけたらいいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。