マガジンのカバー画像

中沢新一著『レンマ学』『精神の考古学』『構造の奥』などを読む

58
中沢新一氏の著作『レンマ学』『精神の考古学』『構造の奥』『精霊の王』『アースダイバー神社編』などを読み解きます。
運営しているクリエイター

#神話

深層意味論的夢分析のケース・スタディ:ユングによるパウリの「マンダラ夢」分析をたどる(パウリのマンダラ夢1〜16)

深層意味論的夢分析のケース・スタディ:ユングによるパウリの「マンダラ夢」分析をたどる(パウリのマンダラ夢1〜16)

C.G.ユングは『心理学と錬金術1』の147ページにおいて、「夢に現れるマンダラ」として次の例を挙げている。

ぐるりと円を描く蛇。
青い花。
手のひらの上の金貨。
サーカス小屋?
赤い球。
球体。

「蛇」、「花」、「金貨」。ずいぶんと具体的なもののイメージが並んでいる。

具体物の向こうに述語的様相の脈動としてのマンダラを幻視するこういう具体的なものには注意が必要である、というのはレヴィ=スト

もっとみる
ユング、マンダラ、共時性:ユングの論文「共時性:非因果的連関の原理」を読むーーユングとパウリの共著 『自然現象と心の構造』より

ユング、マンダラ、共時性:ユングの論文「共時性:非因果的連関の原理」を読むーーユングとパウリの共著 『自然現象と心の構造』より

深層心理学で知られるカール・グスタフ・ユングと、「パウリの排他律」で知られる物理学者ヴォルフガング・パウリとの共著『自然現象と心の構造』を読む。

パウリの手による論文「元型的観念がケプラーの科学理論に与えた影響」については下記の記事で論じたので、今回はユングの手による「共時性:非因果的連関の原理」を読んでみよう。

「偶然」の世界・・偶然?必然?「共時性:非因果的連関の原理」の冒頭、ユングは次の

もっとみる
心の深層に浮かび上がる”四”について、ユングの夢、空海の曼荼羅、レヴィ=ストロースの神話論理から考える

心の深層に浮かび上がる”四”について、ユングの夢、空海の曼荼羅、レヴィ=ストロースの神話論理から考える

かのC.G.ユングがノーベル賞物理学者であるヴォルフガング・パウリの「夢」を分析したセミナーの記録である『C・G・ユングのセミナー パウリの夢』を読む。

パウリの夢の分析はユングの著書『心理学と錬金術』でも整理されているが、この『パウリの夢』をつうじて、ユング自身が『心理学と錬金術』の内容をレクチャーしてくれているかのようなライブ感を楽しむことができる。

全編を通じておもしろいのであるが、特に

もっとみる
W・パウリ「元型的観念がケプラーの科学理論に与えた影響」における四数性と、思考の根源を思考すること ーーユングとパウリの共著 『自然現象と心の構造』より

W・パウリ「元型的観念がケプラーの科学理論に与えた影響」における四数性と、思考の根源を思考すること ーーユングとパウリの共著 『自然現象と心の構造』より

深層心理学で知られるカール・グスタフ・ユングと、「パウリの排他律」で知られる物理学者ヴォルフガング・パウリとの共著『自然現象と心の構造』という本がある。

この本の終盤、「付録III」、236ページに次のような図が掲載されている(図3 スコトゥス・エリウゲナの『自然の分類について』において考えられた四元性)。

ここでは、

1: 造る(能動)/造られる(受動)
2: する/しない

この二つの二

もっとみる
暗黒瞑想 宇宙/非宇宙分節以前の”法界の根源的脈動”と微かに共振するアンテナとしての”わたし”へ -中沢新一著『精神の考古学』をじっくり読む(8)

暗黒瞑想 宇宙/非宇宙分節以前の”法界の根源的脈動”と微かに共振するアンテナとしての”わたし”へ -中沢新一著『精神の考古学』をじっくり読む(8)

中沢新一氏の『精神の考古学』を引き続き読む。

松岡正剛氏が『空海の夢』で「仏教の要訣は、せんじつめれば意識をいかにコントロールできるかという点にかかっている」と書いている(松岡正剛『空海の夢』p.23)。

意識をコントロールする例えば、私たちが迷い苦しむのは、自/他、生/死、清/濁、光/闇、などと二つに分けて、そのどちらか一方だけを自分ものにしようとこだわり、他方を遠ざけておこうこだわるから、

もっとみる
超-明るい部屋へ/埋蔵経典を”発掘”する神話的思考 -中沢新一著『精神の考古学』をじっくり読む(7)

超-明るい部屋へ/埋蔵経典を”発掘”する神話的思考 -中沢新一著『精神の考古学』をじっくり読む(7)

中沢新一氏の『精神の考古学』を引き続き読む。

精神の考古学。
私たちの「心」は、いったいどうしてこのようであるのか?

私たちが日常的感覚的に経験している分別心(例えば、好き/嫌いを分別したり、自/他を分別したりすることは当たり前だと思っている心)が、発生してくる深みへと発掘を進める中沢氏の「精神の考古学」。

いよいよ第八部「暗闇の部屋」を読んでみようと思う。

ここで中沢氏は、「まったく光の

もっとみる
鶴の恩返し?!「神話」から神話の外へ -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(62_『神話論理3 食卓作法の起源』-13)

鶴の恩返し?!「神話」から神話の外へ -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(62_『神話論理3 食卓作法の起源』-13)

クロード・レヴィ=ストロース氏の『神話論理』を”創造的”に濫読する試みの第62回目です。これまでの記事はこちら↓でまとめて読むことができます。

これまでの記事を読まなくても、今回だけでもお楽しみ(?)いただけます。

鶴の恩返しの八項関係一年生になったばかりの下の子が、学校で「鶴の恩返し」のお話しを聞いてきたという。

そして次のように尋ねてきた。

ん? わたしに聞くと、ちょっと、話、長くなる

もっとみる
中沢新一著『構造の奥』を読む・・・構造主義と仏教/二元論の超克/二辺を離れる

中沢新一著『構造の奥』を読む・・・構造主義と仏教/二元論の超克/二辺を離れる

(本記事は無料で全文立ち読みできます)

中沢新一氏の2024年の新著『構造の奥 レヴィ=ストロース論』を読む。

ところで。
しばらく前からちょうど同じ中沢氏の『精神の考古学』を読んでいる途中であった。

さらにこの2年ほど取り組んでいるレヴィ=ストロース氏の『神話論理』を深層意味論で読むのも途中である。

あれこれ途中でありますが、ぜんぶ同じところに向かって、というか、向かっているわけではなく

もっとみる
人類の”心”のアルゴリズムを解き明す神話論理×十住心論 -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(44_『神話論理2 蜜から灰へ』-18)

人類の”心”のアルゴリズムを解き明す神話論理×十住心論 -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(44_『神話論理2 蜜から灰へ』-18)

クロード・レヴィ=ストロース氏の『神話論理』を”創造的”に濫読する試みの第44回目です。

これまでの記事はこちら↓でまとめて読むことができます。

これまでの記事を読まなくても、今回だけでもお楽しみ(?)いただけます。

この一連の記事では、レヴィ=ストロース氏の神話論理を”創造的に誤読”しながら次のようなことを考えている。

則ち、神話的思考(野生の思考)とは、Δ1とΔ2の対立と、Δ3とΔ4の

もっとみる
野生の思考の核心にふれる/螺旋状に踏破する「心」 -β樹木のβ樹皮を纏ったβ老人がβジャガーに変身し…  -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(43_『神話論理2 蜜から灰へ』-17)

野生の思考の核心にふれる/螺旋状に踏破する「心」 -β樹木のβ樹皮を纏ったβ老人がβジャガーに変身し… -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(43_『神話論理2 蜜から灰へ』-17)

クロード・レヴィ=ストロース氏の『神話論理』を”創造的”に濫読する試みの第43回目です。今回はとてもおもしろいので(もちろん毎回おもしろいと思って書いていますが特に今回は特別に)どうぞお楽しみください。

これまでの記事はこちら↓でまとめて読むことができます。
これまでの記事を読まなくても、今回だけでもお楽しみ(?)いただけます。

はじめに、下の図をご覧ください。

神話的思考(野生の思考)とは

もっとみる
意味分節理論とは(4) 中間的第三項を象徴するモノたち -中沢新一著『アースダイバー神社編』を読む

意味分節理論とは(4) 中間的第三項を象徴するモノたち -中沢新一著『アースダイバー神社編』を読む

(本記事は有料に設定していますが、全文「立ち読み」できます!)



中沢新一氏の『アースダイバー神社編』を引き続き読む。

(前回、前前回の続きですが、今回だけでお楽しみいただけるはずです)

『アースダイバー神社編』には、諏訪大社、大神神社、出雲大社、そして伊勢神宮といった極めて古い歴史を持つ神社が登場する。

中沢氏はこれらの神社に今日にまで伝わる神話や儀礼やシンボル(象徴)たちを媒にして

もっとみる
人間の世界が発生する場所にふれる -中沢新一著『精霊の王』を精読する(6)

人間の世界が発生する場所にふれる -中沢新一著『精霊の王』を精読する(6)

本noteは有料に設定しておりますが、最後まで無料でご覧いただけます。

中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note。第七章「『明宿集』の深淵」を読む。

(前回はこちらですが、前回を読んでいなくても大丈夫です)



『明宿集』というのは室町時代の能楽師 金春禅竹によって記された書である。善竹はかの世阿弥の娘婿でもあり、「芭蕉」など珠玉の能楽を生み出した人である。

翁とはその善竹が、

もっとみる
両義的媒介項としての宿神 -中沢新一著『精霊の王』を精読する(2)

両義的媒介項としての宿神 -中沢新一著『精霊の王』を精読する(2)

中沢新一氏の『精霊の王』を精読する連続note。

第一章「謎の宿神」を読む。



「侍従成通卿と言えば、比類のない蹴鞠の名手と讃えられ…」(『精霊の王』p.4)

この一節から始まる第一章は「蹴鞠」の話である。

「精霊の王」たるシャグジ−宿神は、日本列島に国家が成立する遥か以前から祀られてきた神である。

その精霊の王の話をするのに、なぜ国家が成立して数百年を経た後の時代の芸能のことから始

もっとみる