- 運営しているクリエイター
記事一覧
イタロ・カルヴィーノ「冬の夜ひとりの旅人が」
言葉の魔術師と評された、イタリアの作家、イタロ・カルヴィーノの最後の長編です。
カルヴィーノの長編は毎回趣向が凝らされているのですが、本作のそれはメタフィクションによる読書論。
こう書くとややこしく感じる方もいるかもしれませんが、彼の魅力的な語り口は難解さを感じさせません。
本作の書き出しはこうです。
<あなたはイタロ・カルヴィーノの新しい小説『冬の夜ひとりの旅人が』を読み始めようとしている
中村邦生編「この愛のゆくえ」ポケット・アンソロジー
これも愛 あれも愛 たぶん愛 きっと愛
(松坂慶子「愛の水中花」より)
岩波文庫別冊で「ポケットアンソロジー」として発行された2冊のうちの1つです。
「愛」というテーマは魅力的でありながらも漠然としていますが、編者の中村さんは古今東西の作品を目配りよく取り上げて、未知の作家・作品に出合う喜びと、既知の作品を新たな視点から捉えなおすことができる愉しみを読者に提供してくれています。
篠田一士「二十世紀の十大小説」
篠田一士は丸谷才一とも親交のあった評論家で、小説はもちろん、詩歌から批評に至る文学全般に広くて深い知識をもっていました。本書は1988年に刊行された長編評論で、質・量とも読み応えある一冊です。
世界文学のなかから10冊を選ぶという試みはモームの「世界の十大小説」が有名ですが、篠田のこの評論の主眼は、彼自らが生きた「二十世紀」の小説の独自性とはなにか、それまでの小説とはなにが異なるのかをつまびらか