テッド・チャン「息吹」

21世期の最も重要な作家のひとり、テッド・チャン。「あなたの人生の物語」以来、17年(!)ぶり2冊目の短編集です。寡作にもほどがあるだろう、と言いたくなりますが、これだけ密度の濃い傑作が詰まった短編集はそうあるものではないでしょう。
卓抜な着眼点、論理的で明晰な文体、巧みな語り口によって科学の最新知見を元にした複雑な話もスムーズに読ませてしまいます。プロットによっては、シニカルになったりペシミスティックな話になっても不思議ではない話もあるのですが、チャンの作品はいずれもどこか希望を感じさせるものになっているのが素晴らしい。知的に興奮させるだけではなく、身につまされたり、ホロリとさせられたりもするのですからたまりません。
今年のベストに数えられるであろう強力な一冊です。

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