本能寺の変1582 第186話 16光秀の雌伏時代 4服部七兵衛 天正十年六月二日、明智光秀が織田信長を討った。その時、秀吉は備中高松で毛利と対峙、徳川家康は堺から京都へ向かっていた。甲斐の武田は消滅した。日本は戦国時代、世界は大航海時代。時は今。歴史の謎。その原因・動機を究明する。『光秀記』
第186話 16光秀の雌伏時代 4服部七兵衛
◎光秀にとって、これが二度目の大量殺戮だった。
光秀には、過去にも同様のことがあった。
すなわち、元亀二年1571。
叡山焼討。
敵は、同じく、宗教勢力。
この時も、光秀は、容赦しなかった。
「数千の屍(しかばね)算を乱し、哀れなる仕合せなり」(『信長公記』)。
そうせねば、都を維持することが出来なかったのである。
光秀は、「大量殺戮」を厭(いと)わぬ人物なのである。
否、むしろ、積極的だった。
すべては、立身出世。
明智の再興。
子らのために。
比叡山一帯を徹底的に破壊している。
その結果として、志賀一郡を手に入れるのである。
これについては、後述する。
◎ここが重要ポイント!!
要注意ヶ所!!
◎光秀は、恐ろしい男であった。
光秀は、信長の同調者。
かつ、その実行者。
すなわち、同じ感覚の持ち主。
「根絶やし」
越前を平均(へいぎん)するには、それしかない、と考えていた。
そして、大殺戮を行った。
しかも、何と、これが二度目。
さらには、以後の行動等々。
これらを見れば、そのことがよくわかる。
恐ろしい人物であった。
秀吉、同。
◎ここが重要ポイント!!
要注意ヶ所!!
◎光秀は、強靭でしたたかな戦国武将だった。
光秀は、戦国時代を生き抜いて来た男。
決して、柔(やわ)な男などではない。
全く、その逆。
冷酷で、情け容赦のなく、強靭で、したたかな戦国武将正だった。
その上、「貪欲」なのである。
これらのことが、それを証明している。
光秀の明智氏は、この様にして出来上がった。
言い換えれば、これら「大量殺戮」の上に成立した家なのである。
これが、当時の風潮。
凄絶な時代だった。
真実は一つ。
これまでの、フィクションに満ち溢れた光秀の人物像を、もう一度、
見直すべきではないだろうか。
◎ここが重要ポイント!!
要注意ヶ所!!
織田軍は、北上した。
取り懸け、責め破り、斬り拾て、数多斬り拾て、手を合わせ放火侯。
同十八日。
柴田勝家・丹羽長秀・織田信澄らが鯖江を攻めた。
八月十八日、柴田修理・惟住五郎左衛門・津田七兵衛、両三人、
鳥羽の城*へ取り懸け、責め破り、五、六百斬り拾てられ侯。
金森長近と原政茂は、美濃から越前大野郡へ攻め入った。
金森五郎八・原彦次郎、濃州口より郡上表へ相働き、
によう(根尾)*・とこの山(徳山)*より、大野郡*へ打ち入り、
数ケ所、小城ども攻め破り、数多斬り拾て、
諸口より手を合わせ放火侯。
*鳥羽城 福井県鯖江市鳥羽
*根尾 岐阜県本巣市根尾高尾
*徳山 岐阜県揖斐郡揖斐川町徳山
*大野郡 福井県大野市
一揆勢は、壊滅状態に陥った。
逃げ惑う一揆勢の姿である。
これに依つて、国中の一揆既に撥忘(はいもう)を致し(うろたえて)、
取る物も取り敢へず、右往左往に、山々へ逃げ上り侯。
信長は、一揆勢を根絶やしにしようとしていた。
織田軍は、これらを追撃し、見つけ次第、男女を問わず斬殺した。
推し次第(追撃して)、山林を尋ね捜して、
男女を隔てず、斬り捨つべき旨、仰せ出だされ、
信長は、一揆勢一万二千二百五十余を誅殺した。
八月十五日より十九日まで、
御着到の面(おもて=信長の本陣に)、
諸手より搦め取り進上侯分、一万二千二百五十余と記すの由なり。
御小姓衆へ仰せ付けられ、誅させられ侯。
信長は、容赦せず。
「合せて三、四万にも及ぶべく侯」
己に逆らう者たちを一掃した。
其の外、国々(参陣した諸勢の国々)へ、
奪ひ取り(連れ)来たる(帰った)男女、其の員を知らず。
生け捕りと誅させられたる分、合せて、
三、四万にも及ぶべく侯ひし歟。
(『信長公記』)
戦国時代、日本の総人口は1200~300万程度だったという(「人口か
ら読む日本の歴史」)。
これは、現在の凡そ十分の一に相当する(令和元年度比)。
また、福井県の人口は、およそ80万。
これを、単純に、同比率で計算すれば、8万となる(同)。
すなわち、当時の越前・若狭両国の総人口は、8万人くらいだった。
『信長公記』の記述を額面通りに受け取れば、これはその半分に近い数。
信長の侵攻により、越前国は、わずか数日で、半数近くの人々を失った
ことになる。
それにしても、恐ろしい事件であった。
叡山焼討に比して、犠牲者の数が桁違いに大きい。
これが平和の代償。
残酷な話である。
本願寺にとっては、大きな打撃となった。
⇒ 次へつづく 第187話 16光秀の雌伏時代 4服部七兵衛
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